まあ、彼には負けられませんわね。
これも時代なんですかねえ。何処の野球部も野球経験者の先生がいるわけではないみたいですから、コネがないと思うように練習試合を組めなかったり、そのノウハウがなかったりしますから。
栃木県の野球連盟にも協力してもらって、各カテゴリーの野球部がいつ何処の野球場でどことどこが試合をするのか1発で把握出来るアプリを作りまして。
少しでも円滑に試合が組めるようにして、監督さんや先生、保護者の方の負担が減るような仕組みにしたんですよ。
これが結構好評で、試合したいのに相手が見つからなくてチームで練習とか紅白戦ではちょっともったいないですからね。
そんなわけで根底にあるのはこれ以上野球人口を減らさないということ。
どうしても日本の人口自体が減少気味ですから、こうなったら1人の少年に2、3つの競技をやってもらうしかありませんわよね。
別に1個しかやっちゃいけないなんて決まりはないですから。アメリカではクラブの掛け持ちなんて普通にありますし。
有望な選手は競技の垣根を超えて引っ張りだこよ。
ですから、このプロジェクトが上手くいって、夏は甲子園でホームランを打ちまくり、冬は国立で得点王になりました。なんて、ニュータイプの二刀流選手が出てくることを俺は臨んでいるわけですよ。
ということを3000打席立っていまだに1本もホームランがない選手が申しているわけですから。
交流戦の初戦は神戸での試合。
西日本リーグでは貯金2つを持って3位にいるアイアンズとの試合。
友寺君との再会である。
「どうですか、新井さん。銃で撃たれた傷は」
「おっ、いいね~!やっとそれを開口一番聞いてくる人間に出会えたよ、さすが3度の首位打者」
「ども、ども!まだまだ若いのには負けませんよ」
「その言い方が既におじさんなんだよ」
「あれ?でも新井さんも首位打者は3回じゃ。2年目とビクトリーズが優勝した時とメジャー1年目と……」
「まあ、今年も獲るつもりだから、4回目になるかな」
「まあ、俺もっすけど」
「「ギャハハハハ!!」」
彼も35歳。ベテランと言われる年代に差しかかっていた。
俺と同じくアルバイターとしての下積み時代があり、独立リーグのテストを片っ端から挑戦していた時期もあった彼。
左右に広く打ち分けられ、速球にも強い左の俊足アベレージヒッター。
3度の首位打者、4度の最多安打。5度のベストナインを獲得する選手になっていた。
1度メジャーにも挑戦しましたけど、故障もあり、これはアカンとわりとすぐに日本へ戻ってきた判断と勇気を俺は素晴らしいと思いますわ。
当時はすぐに尻尾を巻いて逃げやがってとか、新井があんなことになっているのに恥ずかしくないのかとか、言われて辛かったみたいでしたけど。
それを「子作り」エネルギーに変換して気づけば4人目のお子様が無事生まれたみたいでして。
ですから、第1打席目は彼の守るレフトを狙い打ちですわよ。
カキッ!
「変化球を拾うように打ちました!打球はレフト線に上がっている!友寺が突っ込んでいきますが、落ちました!フェアです!新井が1打席目、いきなりヒットを記録しました!12球団最多、今シーズン75本目のヒットになります!!」
「レフトの友寺がやや左中間寄りに守備位置を取っていましたので、その分落ちましたね。新井はやはり低めの変化球をミートするのが上手いですね」
「1アウト1塁となりまして3番祭です。カウントはこれで3ー2。……新井はスタートを切る。祭が打って打球は右中間だ!深く破っていきます!
スタートを切っていた新井は3塁を回る!ボールは外野から中継に戻ってきますが、バックホーム出来ません、ホームイン!!3番、祭のタイムリーツーベースになりました!1回表、ビクトリーズが先制です!」
ナイス、ナイス。交流戦のハジマリからいきなり得点は幸先いいですわね。
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