カッターがね、ギュルンと行っているんですわよね。

いや!


開き直ってのストレート勝負だ!


という考え方もあるのだが、まだ開き直るには早いですわよね。


言うてまた2回の2点差ですから、バッテリーとしては当然前の打席結果を踏まえて、しっかり組み立てて配球していきたいですわよね。


ですから、相手ピッチャーの変化球、フォークかスライダーかという話になるんですけど、打てる可能性が高いのはスライダーを右方向にパターンですから、それ待ち。



そんな中で初球はフォークボールだった。ベース板でワンバウンドするボール。キャッチャーが少し横に弾いた瞬間に、1塁ランナーのノッチがスタートを切る。


キャッチャーが拾ったボールを2塁に送ろうとする姿勢を見せたが、フリに留まり、3塁ランナーのブライアンを牽制した。


ノッチ、ナイススタート。やはり、FPSでならしているだけありますわね。事が起きた瞬間の判断が素晴らしい。足は速くない彼だからこそ、2塁を陥れた意味が大きくあるのだ。



その意味を勝利に近付ける為の打席になった。狙う球種は1つ。2球目のインロー。高めに外れた3球目も160キロを越えるボールだった。


2ー1というカウントになり、ピッチャーの投じた真ん中から外に流れるボール。


こすんなよ!バットに乗せて、ヘッドを我慢しろよ!!


歯を食い縛りながら自分に強く言い聞かせ、おピンクバットをふるった。




カキッ!!



「1、2塁間!セカンド石成が飛び付く!……破りましたー!!タイムリーになります!3塁ランナーホームイン!!2塁から北野もホームに突っ込んで来るぞ!!


ライト、萬波からのバックホームだ!!すごいボールが返って……タッチアウト!!2塁から狙った北野は刺されました!!しかし、ビクトリーズ、新井のタイムリーで1点追加で3ー0!!リードを広げています!!」



ノッチ、懸命の走りもすんごいレーザービームが返って来て、結構楽勝のアウト。それでも俺のしぶといライト前ヒットが点になりましたから、オッケー、オッケー!



ハイタッチを交わしたショー君がさらに笑顔になってマウンドへと向かっていく。





3回表。


フライヤーズの攻撃は7番から。この回、ノッチの配球は速いボールが中心。とはいえ、125キロのフォーシームなのだが、それより2、3キロ速いツーシームとカットボールのコンビネーション。


7番小城には、低めを打ち上げさせてライトフライ。8番児山には、インコースのツーシームを詰まらせてサードゴロ。


9番石成には、低めのフォーシームを上手く打ち返されたが、柴ちゃんのスライディングキャッチが炸裂してこの回も3者凡退。僅か7球でベンチに戻ってきたのだった。





「4回表、フライヤーズの攻撃は1番の六旗です。高田さん、勝星はここまで1人のランナーも許さずの28球で来ています」


「理想的なピッチングですよね。直球、変化球共に制球が抜群で、要所要所で動くボールも決まっています。テンポもいいですから、先ほどの柴崎のような好プレーも引き出しますよね」


「3点を追うフライヤーズとしては、まずは1人目のランナー。特に出たらうるさいこの六旗で突破口を開きたいところでしょう。初球。カットボール!振っていってファウルボール、1塁線鋭い打球切れています」


「初回はある程度、パフォーマンスとしての意味合いもあったのでしょうけど、カーブ中心の配球でしたから、2巡目はどうするのかと思いましたけど、左バッターのカットボールでしたね。恐らく左右に広くベース板を使っていきたいという考え方だと思います」



カキッ!!



「3球目!打ちましたがショートの前少し弱いゴロだ!並木が突っ込む!六旗は俊足!競争になる!……アウトになりました、並木さすがの守備。安定しています、1アウト。外のツーシームだったでしょうか。


2番は下畑。こちらも俊足の左バッターです。初球……。インコースのカットボールだ!ハーフスイングですが、ストライク。コーナーギリギリ入っています」





「左バッターからすると、この膝元のカットボールはちょっと厄介なボールになりそうですね。今はストライクの判定になりましたけど、打っても先ほどの六旗選手のように、1塁側へのファウルにしかならないボールですから」


「フライヤーズとしてはどうでしょう。そのカットボールは捨てていくべきなのでしょうか」


「そうですね。浅いカウントから無理に狙っていくボールではないですよね。逆に言えばファウルには出来るボールですから。


1番いけないのは、このインコースを意識し過ぎて外のコースを有効に使われてしまうことですから。


しっかり踏み込んでベース板の真ん中より外のボールを左バッターは打っていきたいですよね」



「その外のボールでしたが、やや差し込まれました。赤月が追っていきますが、打球は3塁側スタンドのファウルボールです」



内、外をしっかり使って追い込むいいカウントの取り方。バッターの意識は空振りしないようにコンパクトというのが強くなりますから、インハイにグッとノビのあるボールは有効だった。



打ち上げた打球はファーストの後方。祭ちゃんが声を出しながら回り込み、ライン際で捕球した。



3番の藤並君は右バッター。そっちにはチェンジアップという入りだった。ややインコースよりの低め。引っ張りにかかっているバッターなら、ほぼ食いついてくるコースだ。



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