開幕戦からそれをやれやですわね。

カキッ!!


高めのストレート。161キロのボールだったが、芳川君はムリグリ打ち返した。とにかく外野に飛んでくれと、願いが込もった打球は、ちょうどスタジアムの風に乗るところ。



右中間からライトの定位置の方向へスライスしながらの打球は、ちょうど犠牲フライになる当たりとなった。



並木君が3塁から生還に2点目。キャッチボールの為にグラウンドに出ようとするショーに、並木、芳川の2人が順番にタッチを交わした。




そして2回のピッチング。


フライヤーズは4番の竹本から。3年連続3割をマークしている好打者から、インコースの動くボールですぐに追い込み、最後は外に逃げるスライダー。


ストライクからボールになる絶妙のコースを打たせた。平凡なライトフライ。桃ちゃんがラインの方へとゆっくり移動しながら落下点に入った。



5番はメジャー移籍も噂される、ホームランキング銭方。昨年45発放ったバッターに対しては、初球に110キロのチェンジアップ。


ヘルメットが吹き飛ぶ程の空振りを引き出し、2球目はしっかり高めに狙って投げた125キロのフォーシームでファウルを打たせた。


3球目に外のスライダーを1球見せて、今度はそのアウトローにきっちりカットボールをコントロール。127キロのボールをひっかけさせてショートゴロ。


2アウトとした。




6番は2年目助っ人のハーティー。俺としては、ブラッドリーを思い出す、スキンヘッドのアメリカ人なのだが、このバッターはインコース寄りの低めにツボを持っている。


とにかく簡単に低めに行くなと。そこの打率は3割7分くらいあるらしくて。


低めでタイミングを合わせられたら、160キロだろうがなんだろうが、思い切りよくスイングされてしまうから、外、外で組み立てて、インハイに速いボールで勝負していけ!


というのをおかえり外野手である俺でも知っているくらいミーティングでずっと言っていましたから、外で4球出し入れして、2ー2というカウントにした。




ビシュッ!



カンッ!



「詰まりました!サード後方へ力のない打球です。赤月が下がりながら掴みまして3アウト。勝星ショー!この2回フライヤーズ打線を3人で抑えています!」




2回ウラ、我々のターン。


打順は6番の弟子2号。


彼も高卒11年目になりますか。いまだにリリーバー兼外野手としての2足のわらじを履く結婚2年目の彼は今年外野手のレギュラー格としてのシーズンスタートとなっていた。



通算で投手として200試合に登板して、11勝20敗、防御率3、88。野手としては通算打率2割5分1厘、65本塁打ですか。



どっちかに絞ろうとするのも、いい意味で悩むところ。




オープナー的な先発もいけるし、敗戦処理としては十分過ぎる数字。とはいえ勝ちパターンでは心もとないが、延長を考えた時には間違いなく投げて欲しい1人。


バッターとしては、俊足強肩を生かした守備力は魅力的だが、柴、桃と外野2枚は計算出来る中でずっとレギュラーにはもう1枚殻を破って欲しいところである。





カキッ!!



そう考えていたら、打ちました。高めに浮いた変化球を右方向へナイスバッティング。右中間に打球を落とし、今シーズン初安打をマークした。



7番の柴ちゃんは3塁側へセーフティ気味のバントを決めてランナーを得点圏へ。



8番の桃ちゃんは2ー2のカウントから高めの163キロに空振り三振に倒れた。



9番はノッチ。



ストレートを1球見た後の変化球。ボールの上っ面をこすったような打球は3塁線へのボテボテ。ピッチャーが捕りにいき、1塁へものすごいボールを送るも間一髪セーフ。


副部長もラッキーなヒットを記録した。



「1番指名打者、あっらい~!!」



「「ドワアアアァァァッー!!」」



ウグイス嬢のお姉さまに、あっらい~!なんて言われちゃったら打つしかないですわよね。



1打席目は、スリーボールからストレートをスコーンといってますから、まあ変化球での入りでしょう。


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