心臓移植手術は、日本ではドナーが足りず、海外で受けるのが一般的だそうだ。


 けれど、私に告げられた余命はもってあと一ヶ月。

 今から準備したんじゃ到底、間に合うわけがない。


 絶望に包まれるリビングをあとにし、自室に戻って一人になって、色々考えたのちに。


 私がまず行動したのは、ラブレターを書くことだった。


 白いレースのウサギの便箋に、綺麗な水色のガラスペン。丁寧な字で綴ったそれは。


『ずっと好きでした。私と付き合ってください 二年一組 宇佐見空』


 まさに、シンプル・イズ・ベスト。

 無駄なことは省いて至極ストレートに。


 長文を書こうとしようものなら、きっと私のことだ。

 いらんこと書いて墓穴を掘ってしまうに違いない。

 こういうのは、きっと、あれこれひねって書くものじゃあないのだ。


『付き合ってください』だなんて、もうすぐ死んじゃう私が、書くべきじゃないのもわかってる。


 けれど。でも。だけど。


 きっとこれが最後の恋になるからと、少しくらいのワガママも通らないなんて酷すぎる、と。


 そう自分に言い聞かせている、幼すぎる私がいる。

 私の想い人──橋坂壮太先輩に、この恋心は伝わるのだろうか。

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