3-3 『何もしない人々』
夕方――
「さて」
リメンバの目の前には寂れた裏路地があった。
景観の美しかった表通りと違い、辺りには壊れた
「……ここに来る時、すっごく見られてたね」
「ああ。
リメンバは周囲を見やる。
ちらちら見ている人々が一斉に目を逸らし、物陰に隠れた。
「……やっぱり行かない方がいいんじゃ……バレたら退去……されちゃうよ?」
「別に構わん。どうせ用がなければ明日には出る。そして――一番用がありそうなのはここだ」
リメンバは不敵に笑みを浮かべると、堂々と歩を進めた。
ガラスをパキンパキンと踏みつけながら進むと――寂れたスラム街のような場所へ出た。今にも壊れそうな建物がいくつも建っている。
「フン、陰気臭い場所だな」
「……みんな、元気ないね」
何人か見かける事が出来たが、全員無気力に壁に寄りかかって座っていた。
リメンバはその内の一人――中年程度の男性の前に行き、話しかける。
「おい、ここはどういう場所だ? お前はなぜここにいる?」
「…………」
無視――しているわけではないようだった。
男はリメンバの姿にも言葉にも全く反応を示さず、ただ虚ろな目で地面を見ていた。
まるで心をどこかに置き忘れてしまったかのように。
「フン、廃人か」
「どうしたんだろ……?」
リメンバは他の人達を見る――同じように目に生気がなかった。
「……"客人に見せられるような場所じゃない"と言っていたな。つまり、これが通常の状態なのだろう」
「これが……」
「まあいい、進むぞ。話の出来る奴を探す」
「……うん」
リメンバは全く興味なさそうにその場を後にし、
メモリアは不安そうにしつつ、後ろ髪をひかれながらも付いて行った。
♢
しばらく進むと――
今にも壊れそうな木造の建物が並ぶ中、丈夫そうに造られた金属製の建物があった。
道の突き当りに構えるように立つこの建物は明らかに他とは異なる雰囲気を出している。
「……ここ、なにかありそうだね」
「そうだな」
リメンバは扉に手を掛ける――鍵が掛かっていた。
「フン、これしき……」
リメンバは左腰の輪っかを手にして黒剣を取り出すと、扉の施錠箇所に向けて振るう。
一瞬の後――カシャン、と音が鳴る。錠が真っ二つになっていた。
扉ごと切断したように見えたが扉自体は全くの無傷だった。
「おー、きょくげい」
「入るぞ」
リメンバは扉に手を掛ける――
ゴゴゴ、という重い音と共に中の空間がリメンバ達を迎え入れた。
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