『醜い人』
1-1 『旅路』
長く続く一本の街道――
広大な草原の中に茶色の線が続く。
その景色の中に紅一点、美しい少女の姿があった。
膝丈ほどにまで伸びる美しい白髪、ドレスのような白と黒の装束。
腰に据えられた二つの剣鞘からはそれぞれ黒色と赤色の輪っかのような大きい取っ手が出ている。
見た目は年頃の少女だったが、その装いと醸し出す重厚な雰囲気は普通の少女ではあり得なかった。
「……腹が減ったな」
「え、さっき食べたのに」
少女の周囲に浮かぶ光球は言った。
「フン、歩けば腹も減る。浮いているお前と一緒にするなよ、メモリア」
「ふふ、リメンバは食いしん坊さんだね」
白髪の少女――リメンバは光球を薄目で睨みつけると辺りを見渡す。
「……む」
リメンバは遠くに何かを見つけ、歩き出す――そこにはリンゴの生る木があった。
「いくらか頂いて行くか」
リメンバは右手で左腰の剣鞘にある黒い輪っかを手に取り、引き抜いた。
現れたのは彼女の胸の高さほどもある黒い剣――リメンバはそれを目にも止まらぬ速さで振るい、剣を鞘にしまう。同時にリンゴがいっぺんに落ち始めた。
リメンバは麻袋を取り出すと踊るかのように舞う――中にドサドサとリンゴが入ってゆき、一つも地面に落ちる事なく収まった。
「おー、きょくげい」
「フン、造作もない」
リメンバはその内の一つを麻袋から取り出すと、その高そうなドレスへの遠慮などないように裾で拭いてから口に運んだ。
「おいしい?」
「ああ」
「…………ふーん。私、食べられないのになー」
メモリアは恨めしそうな声を出す。
だがリメンバは気にしていないようだった。いや、気付いていないだけかもしれない。
リメンバはご機嫌そうにリンゴを食べながら歩いていると、
「む」
「……誰か倒れてる?」
二人の視線の先には見すぼらしい姿の男が倒れていた。
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