第12話 耳元の囁き、心の暴走4

「……次は俺の番だから」


 慧くんに体を回され、再び背中を向けさせられる。そして、後ろから抱きしめられる。そっと胸に触れる手に優しさを感じた。


「あ……」


 ゆっくりと優しく胸を揉まれ、じわじわと幸せな気持ちになってくる。湯船で温まったせいか、お酒を飲みすぎたのかわからないが、幸せな気持ちも相まって頭がぼんやりしてきたような気がする。


「ふふっ、お腹くすぐったいよ」


 そっとお腹に手を当てられ、小さく撫でられるとくすぐったい気がする。慧くんの手が少しずつ下に近づいているような気がして、急に気恥ずかしくなり、足を閉じて膝をすり合わせてしまう。


 このままじゃいけない。そう思って腕の中から逃れようと身を捩ったけど、思った以上に慧くんの腕の力が強く、まったく逃れられそうな気配がない。


「あっ、ちょっと……耳は、ダメ」


 不意に耳を唇で咥えられる。それだけで体がビクリと震えてしまう。


「耳、弱いんです?」


 吐息混じりの囁き声に、背筋がぞわぞわする。確かに前から耳は弱かった。でも、こんなに弱かっただろうか。


「あ……ねぇ、ダメってば」


 耳に舌が這うのを感じる。舌先でチロチロと舐められるたびに、声が漏れる。慧くんに抱きしめられている安心感と暖かさに、力が抜けていく。


「あっ……ね、ぇっ……」


 優しく揉まれ緩やかな快感を感じていた胸から、急に甘く痺れるような快感を感じる。視線を向けると、いつの間にか胸の中心が主張するように立ち上がっていた。その胸の中心を慧くんが指先でつまんでいる。それだけでピリピリとした快感が上ってくる。


 慧くんはそのまま指先をこするように小さくこねる。快感が少しずつ強くなっていくにつれ、頭の中に霞がかかっていくような感じがする。感じるのは慧くんの息遣いと、私の体を優しくまさぐっていく手。そして、後ろから抱きしめてくれる慧くんの体温。


「……っ、ああっ」


 全身を包まれているような心地よさ。与えられる快感を享受していると、急に耳を甘噛みされた。その衝撃で、私は軽く達してしまう。


 頭の中が白くなり、何も考えられない。閉じていた足からも力が抜け、お湯に揺られて開き気味になっていた。


 そんな私の下腹部に慧くんの手が下がってきた。お腹をさするように少しずつ下がってきた手は、10年以上も異性に触れられたことも見せたこともない私の大事な場所に近づいてくる。まるで、すぐに壊れてしまうようなものに触れるかのように、慧くんの指先が優しく触れた。その瞬間、私の身体の中を電気が走ったかのように快感が駆け巡った。


「ああ……」


 ため息とも吐息ともつかない声が漏れる。


 きっと慧くんが相手をしてくれることなんて、これっきりなんだろう。酔っている上に、快感で頭に霞がかかっている中、どこからか冷静な私が顔を出す。だが、慧くんの指先が固く閉した私の割れ目にそってゆっくりと動き始めた途端、冷静な私は消えてしまった。


「あっ、け、慧く、ん……っ、ダメ、ダメだから」


 じっくりと解きほぐすように、慧くんの指が割れ目をなぞっていく。下腹部から感じるじんわりとした快感に、幸せを感じる。時折、胸の頂を軽くつぶされて、強い快感にビクリと身体が震える。


 刺激を繰り返されると、幸福感よりも物足りなさを感じるようになってきてしまった。力がうまく入らない手を慧くんの手に重ねる。


「どうしました?」


「っ……け、慧く、ん……もっと、して」


「志穂さん、かわいい。お任せください」


 楽しそうな声で囁かれ、私の身体が跳ねる。そして、次の瞬間には慧くんの指先が私の割れ目を押し開き、小さくも敏感な突起に触れる。今までにないほど強い快感が脳まで届く。


「んっ……あぁ……うれしい」


 知らず知らずのうちに涙が溢れていた。悲しいからではない。嬉しさのあまり、涙が出てしまったのだ。


 そこからはあまり覚えていない。慧くんの手と口、声に翻弄されるがまま、私の意識は快楽の波に飲まれていった。そして、気づいた時には、ベッドの上にいたのだから。

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