第10話 耳元の囁き、心の暴走2

「次はキャミソール。肌色だからババくさいって思ったかもしれないけど、肌色ってどんなブラウスでも透けない万能な色なんだよ。素材はシルク。暑くなってくると汗ばむからね。さらっと着られるシルクのキャミソールは手放せないよ。あとね、このキャミソール、背中が大きく開いているのも気に入っているポイントなんだ」


 キャミソールの裾に手をかけ、軽く引っ張って見せる。そのまま、慧くんの前で半回転。背中が大きく開いているので、ブラジャーが見えていることだろう。慧くんの視線が背中に刺さる。


 私は深呼吸をすると、慧くんに背中を向けたままキャミソールをゆっくりと上に持ち上げていく。滑らかなシルクの感触が腹部を撫でていき、顔に触れる。一瞬視界が遮られる間、さらに鼓動が早くなるのを感じる。キャミソールを完全にぬぎおえると、涼しい空気が素肌に触れ、わずかに身震いする。


「し、志穂さん……後ろ……」


 慧くんのかすれた声に、自分がはいてきたショーツの形状を思い出す。気合いをいれすぎて T バックにしたのだった。ストッキングは薄手だからはいていないのと変わらないと言っても言い過ぎではない。


「つ、次はストッキングね」


 これ以上ないほど赤くなった私は、俯いたまま慧くんのほうを向く。慧くんに見られたい。


「このストッキングは薄手なのに丈夫なの。脚のラインを綺麗に見せてくれる効果があるし、長時間はいても蒸れにくいのが重宝しているわ」


 ストッキングに手をかける。そのまま、ウエストから足首へと丁寧に降ろしていくと、ストッキングが肌から離れる微かな音が耳を打つ。この音、慧くんにも聞こえているのかもしれない。降ろしたストッキングを、つま先からそっと脱ぎ去ると、私が身につけているのはブラジャーとショーツだけになる。


「次はお待ちかねのブラジャーだよ。ショーツとセットのブラジャーで、生地もレースも白なのが好きなんだ。おっぱいを覆うカップ部分のレースは透け感のある繊細なレースだからね、よく見るとちょっと透けてるのよ。透けてるところはまた今度見せてあげるから、慧くん動いちゃダメよ」


 慧くんが近づいてきそうな雰囲気を感じたので、先の言葉で制止する。すると、慧くんは明らかに残念そうな顔をしながら、カップ部分に視線を集中させていた。


 慧くんを翻弄できていることに優越感を感じながら、背中に手を回し、ホックに指をかける。ためらいそうになる自分に言い聞かせて、決意を持ってホックを外す。パチンという音が鳴る。ブラジャーが落ちないよう片腕で押さえながら、肩紐をゆっくりと肩から滑らせる。


「慧、くん……見て」


 私は深い吐息を漏らし、胸からブラジャーを外す。恥ずかしすぎて慧くんのほうを見ることができない。でも、私のおっぱいに慧くんの視線が注がれていることは感じる。38歳という年齢のわりには、きれいな形をしていると思いたいし、慧くんにそう思ってほしい。


「最後はショーツ。さっきも言ったけど、ブラジャーとセットなの。フロントはこうやってレースに覆われているんだけど、後ろは T バック。普段はこんな大胆なの選ばないわ。けど、今日は特別。さっき見せちゃったけど、もう一回見て。お尻、垂れてないかな?」


 再び慧くんに背中を向ける。ストッキングもはいていない生のお尻に慧くんの視線が突き刺さっている。


「志穂さん、めっちゃきれい」


「もう、それじゃ答えになってないよ。ああ、ダメ……慧くんに見られてドキドキしてるの」


 慧くんの言葉につい笑ってしまう。再び慧くんのほうを向くと、ショーツに手をかける。ショーツのウエストは細いレースのバンドになっており、食い込みにくい工夫がされている。これを脱いだら、本当に後戻りできなくなるということに、一瞬躊躇する。しかし、改めて決意を固めると、ゆっくりとお尻から太ももへとショーツを滑らせていく。レースの生地が肌を撫でていく感覚に、小さく身震いする。そのまま足首までショーツをおろし、両足を抜いて裸になる。


 両手を後ろで組み、慧くんに裸になった私を見てもらう。自分の心臓の鼓動がうるさいくらい鳴り響いている。慧くんの顔を見たい気持ちと、恥ずかしい気持ちがぶつかり合った結果、私は顔を上げられない。


「じゃ、じゃあ、先にお風呂入るね。慧くんも早く来て」


 私はなんとかそれだけ言うと、浴室のほうへ向かった。先に慧くんが行っていたので、トイレと間違わずに済んだのはよかった。


 心臓は高鳴り、期待と緊張が入り混じる中、慧くんが用意してくれたお湯に身を沈める。これから起こることへの期待に、胸が躍っている。

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