第27話 誰が偽者か?
「真、あの時分の俺は、何の力も持っておらぬ、ただの石ころ同然の男であったからのう。そなたとの約束も守れず、多くの犠牲を出してしもうた。……心より詫びよう。許してくれ、黄呂」
帝となった
「それにしても、真、俺のことを好いてくれておったのだな。だのに俺は、そなたに辛くあたってしもうた。何から何まで申し訳なく思うておる……」
いつになく自己嫌悪に陥る
「ああ。そうであったのう。偽者か……。誰も彼も本物と遜色ないでな。いっそう、このままでも良いかと思うのだが」
「良い訳ありませぬ!」
四人の瑞獣が、同時にツッコんだ。
「うむ、偽者、偽者のう……」
「主上、回答権は一度きりにございますれば、間違えれば、本物は一生帰っては来ませぬ。当てれば主上が勝ち。負ければ、約束通り私を瑞獣の一人に加えていただきまする」
「存じておる。もう二度と、そなたとの約束を違えるつもりはないでな」
朱鷺が、目の前に座る四人の瑞獣らに目を向けた。
「三条水影」
「……は」
「春日安孫」
「はっ」
「麒麟」
「はい」
「不動院満仲」
「は」
平伏する四人に、朱鷺が頭を抱える。正直、誰が偽者か分からない。そのままの姿勢で、目を瞑った朱鷺が訊ねていく。
「水影、我らが初めて
「
「安孫、そなたら武家は、何のためにある?」
「我ら武家は、主上と主上が民のためにありまする」
「麒麟、そなたは俺の何ぞ?」
「おれは、主上の影です」
「満仲、そなたは俺の?」
「一等愛らしい瑞獣にございまするううう」
「はあ……」
大きく朱鷺が溜息を吐いた。四人とも本物ならではの回答だ。見かねた満仲が一歩出て、「
「
隣に座る麒麟が、いつになく満仲の真剣な横顔を見つめる。
「わたくしめが、東雲黄呂の名を
「なっ、されど
「安孫、そなたは黙っておれ。本気なのだな、満仲」
満仲を案じる安孫の言葉を阻み、朱鷺がその本気具合を量る。ゆっくりと満仲が頷いたところで、黄呂が「っふ。ふはははは」と大きく笑った。じっと水影がその様子を探る。
「おれを滅するだと? 御前にそれが出来るとな? 大江山の鬼すらも、滅することが出来なんだであろう?」
「
さっと立ち上がった満仲が、庭へと足を進めていく。陽の光の下、天地陰陽の構えを見せる満仲に、黄呂もまた庭に出て、対峙した。
「それで、おれが勝てば、御前は黙って霊亀を譲るとな?」
「主上の瑞獣になりたくば、わしを倒して霊亀を奪ってみせよ。偽者捜しなどという小賢しいマネをするでない」
「ならば、御前を滅して、おれが主上の霊亀となるっ……!」
突如として始まった陰陽師対決。その勝敗が何を意味しているのか、御簾から出た朱鷺が、三人の瑞獣らと共に、じっと二人の対決の行く末を見守った。
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