第22話 満仲の証明
翌朝——。
最後は、
「——という訳で、三人が本物であることからして、そなたが偽者であると確定した。何か申し開きがあるならば、十を数えておる内に申すが良い。十、九——」
「あんまりにございまするううう!」
あまりの理不尽に、満仲が
「……ならば満仲、そなたは
「わたくしめの
「却下。そなたが偽者で確定ぞ」
さっと立ち上がった朱鷺に、満仲が焦りを見せる。
「お、お待ちあれ、主上! 今すぐ証明してみせまするっ……」
あたふたと懐から札を取り出すも、これでもない、あれでもないと、次から次に札を捨てていく。
「あ、ありましたぞ、主上!
そう言って、一枚の札を手に取り、陰陽の構えでポンっと白煙を上げた。煙が晴れ、その場に絶世の美女——羽衣装束を着た、うら若き天女が座っていた。
「なっ、満仲、この女人はっ……!」
「左様。この天女こそ、主上が恋して止まぬ、羽衣伝説の天女にございまする」
「おおっ! 流石は満仲。我が理想の天女に化けるとは、それでこそ我が瑞獣ぞ」
「なに。主上の好みの女人は、
天女に化けていても、真面目な顔つきで言葉を発する満仲に、朱鷺は、その瞳の中に真を見た。
「ああ。その瞳、俺の知るそなたの真よ。ゆえに、そなたは真の不動院満仲ぞ」
術式を解いた満仲が、満足気に笑う。朱鷺の好みの女人にドンピシャに化け、満仲は、自らが本物であると証明してみせた。
こうして、四人の瑞獣がそれぞれ本物であると証明してみせたことから、朱鷺が「うーん」と頭を抱えた。
「主上、まさか分からぬと?」
「分からぬ! 分かるはずがない!」
いっそう潔く、朱鷺が言い放った。
「な、ならば
「それはっ……。負けを認めるは、我が性分に合わぬっ……」
「
「それが分からぬゆえ、困っておるのであろう」
朱鷺が深く鼻息を漏らした。
「
黄呂の言葉を、この場で朱鷺が復唱した。
「彼の世と此の世の狭間、のう……」
「左様な場所が、真にあるのでありましょうや?」
「さてな。されど、本物は今、
紫宸殿から庭に出た朱鷺の後を、安孫が続く。
「
「ふむ。東雲……。
朱鷺が黄呂の言葉を思い返した。
『——またしても、主上は、私を見ては下さらぬのかっ……』
「……またしても、と彼奴は言うた。またしても……。俺は彼奴と、
「されど、二大陰陽大家が一つ、東雲家は、かつて不動院家と陰陽頭の地位を争い、敗北したことで衰退した御家。満仲も存ぜぬとあらば、主上が幼い時分に御会いされておいでかと」
「幼い時分のう。あまり、良い思い出がないが……。陰陽師がことは、陰陽師に訊く他あるまい。安孫、今すぐ満仲を連れて参れ。彼奴もまた、何かを隠しておるように思えてならぬ」
「御意」
満仲を呼びに行く安孫の背中を、朱鷺がじっと見つめた。
「……満仲、のう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます