第12-1話
インモラルとアデルが決闘の約束をした日は、その週の日曜日だった。
アカデミーの生徒全員が平原に集まっていた。
みんな二人の決闘を見るために早い時間から待っていた。
「そろそろお二人共いらっしゃるかな?」
日差しがとても強く照りつける時だった。
最初に平原の中央に着いたのはアデルだった。
アデルが着ているシスター服はいつもより短かった。腰には長い剣がぴったりとついている。
すぐにでも決闘が可能な格好だった。
「下がれ。」
アデルは遠くの生徒たちに大声でそう言った。
見物に来た生徒たちは、不思議な表情で平原の中央からもう少し離れた。
すると一瞬で巨大な剣が空から落ちてきた。
平原の中央に落ちた剣は大きな円形競技場を作った。
「わあ、全部透明な剣だなんて、すごくきれいね。」
誰かがそう言った。すると近くにいた眼鏡をかけた女子学生、ラベンダーが答えた。
「だまされないで。あそこに近づくだけで私たちは失神するのよ。」
「そんなわけないでしょ?あれにそんな威力が?」
「レベル200以上の人だけが使えるスキルよ。気になるなら近くに行ってみたらいいわ。おもらしすることになると思うけど。」
その言葉を聞いても、近くに行く生徒が3人もいた。
円形競技場に向かっていた3人は、本当に途中でばったりと倒れてしまった。
さらに、そのうちの2人はズボンが湿ってしまっていた。
「やめろって言っても必ず聞かないがいるんだから。」
見物に来た生徒全員はその光景を見るとぞっとするような表情でさらに一歩退いた。
たった一人、ジェニーだけはそのまま立っていた。
ジェニーは真剣な表情でつぶやいた。
「どうするの。あんなスキルを平気で使う人と戦うなんて。」
他の生徒も同じことを考えていた。
知られている情報によるとアデルのレベルは260だった。
それでも東大陸の最高剣士の中ではレベルが最も低かった。
一方インモラルのレベルは100にも及ばない。平原で待っている生徒たちはこれを全て知っていた。
「校長のレベルは90、この戦いってどうなの?」
インモラルの正確なレベルを知っていたジェニーは、爪を噛んだ。
相変わらず平原には強い日差しが照りつけていた。
急に天気が変わった。
くすんだ雲が押し寄せて太陽を遮ったのだ。
アデルを除いた平原にいる皆が空を見上げた時だった。
インモラルは小さな閃光とともに平原に現れた。
インモラルは倒れている生徒3人を魔法で持ち上げると、ジェニーのところに歩いて行った。
「この子たちを頼むよ。」
ジェニーは一歩遅れてインモラルが自分のそばに来たことに気づいた。
「何だ?いつ来たんだ!」
インモラルはそれに答えずに平原をさっと見回した。
アランを除いた残りの生徒たちが全員見えた。
インモラルが尋ねた。
「アランは?今日の戦闘はかなり勉強になると思うんだが。」
「知らないわ。ルイビトンが来て連れて行ったからね。」
「そうか。見るのも経験だが、まあいい。」
インモラルは残念そうに小さな閃光を放ちながら消えた。
透明な剣で作った円形競技場の中。
インモラルが再び現れたのはそこだった。
「よく来たな。」
アデルは競技場の中で意外な表情でそう言った。
「私がすっぽかすとでも思いましたか?」
「レベルの違いが怖くて震えていると思ったよ。」
インモラルはアデルのタメ口にうんざりしていた。そのため同じように扱った。
「あなたが見てきた人たちはそうだったようだが、私はちょっと違うだろう。」
「はっ。男のあなたなんかが持ちこたえたとして、どれだけ耐えられるかしら?」
二人は少し距離を置いたまま、お互いをにらみ合った。
円形競技場の中に風が吹くと、三日月形の剣気がインモラルに向かって飛んだ。
インモラルは半球形の魔法防御膜を作った。
円形競技場の外でその場面を見た生徒たちは目をぎゅっと閉じた。
防御膜の効果はほとんどレベル差によって決まる。
レベルの低いインモラルの防御幕はアデルの攻撃には紙一枚も同然だった。
防御膜を作ったことからが間違いだった。
皆がそう思った。
(ドンッ)
アデルが作った剣気は跳ね返った。逆にインモラルの防御膜は健在だった。
アデルはもう一度剣気を撃った。
結果は同じだった。
その時やっと気づいたアデルが尋ねた。
「お前、この短い時間でどうやってレベルを上げた?」
インモラルは答えずに笑った。相手が無駄足を踏んでいたからだ。
レベルを上げたのではなく、変えたのだ。
それも命と変えた。
インモラルの体は今熱く燃え上がっていた。
キングスライムエッセンスで作った飛躍の副作用だった。
[キングスライム飛躍]
等級: 希少
アイテムタイプ : 消耗
キングスライムエッセンスで作られた秘薬。一定時間レベルが200 に上昇する効果が得られます。ただ、飲む回数が3回を超えた場合飲むと激痛を感じて必ず死に至ります。
*現在の使用回数は1回。残り2回。
実は初級ダンジョンに入る時に使おうと思っていた秘薬だった。
しかし状況が変わった。秘薬を使わなければ勝つのは難しい。
(これで残りは2回。)
今すぐ死ぬのではなくても命を使ったも同然だ。
インモラルは肉体に感じる苦痛をこらえながら反撃を掲示した。
氷でできた鷹が空中にできた。
人の目玉ぐらい簡単に食べられるほどの鋭いくちばしを持った鷹だった。
インモラルが指示すると、鷹が円形競技場を横切った。
アデルはばかげているといった表情で鞘に手を上げた。
単にそれだけで疾走していた鷹が半分に割れて死んだ。
「まあ、どうやってレベルを上げてきたかは関係ない。お前のような部類は一生私の下だ。」
修行のやり方からして違うというような口調だった。
やり方はともかく、まだレベルの差があった。
インモラルは体感しているレベル差を計算した。
(アデルのレベルは270くらいだ。)
今飛ばした鷹を半分に切るにはそのくらいは必要になる。
インモラルの推測は正確だった。アデルのレベルは272。
インモラルは一瞬にしてその格差を埋める方法を思いついた。
インモラルは攻撃する前に尋ねた。
「私のような部類とは何だ?」
「自分の身の程を知らないやつだ。」
インモラルは歯茎が見えるように大きく笑った。
その言葉を待っていたのだ。
インモラルの頭の中で通知音が鳴った。
-特典スキルが発動されました。
[グラデーションフィリング]
感情が高まるほど全体のスタット、スキル威力も一緒に上がります。
*時間に比例して最大30%まで上昇。
インモラルは憤怒していた。
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