第11-2話
少しぼーっとしそうになっていたとき、誰かが背中に触れた。
インモラルは後ろを振り返った。そこには体格のいい女子学生、ダリアがいた。
「校長先生…」
ダリアはそう言うと、剣術教育場の真ん中をそっと指を差した。
その先にはアデルがいた。
アデルは椅子に座り、刀を磨くことに集中していた。
「ルイビトン教主は?」
インモラルが静かに尋ねると、ダリアは首を横に振った。
目配せで状況説明を要求すると、ダリアは罪を犯す人かのように話し始めた。
「教主様はいつもアランを連れてどこかに行きます。それではアデル様だけ残って、ああやって真ん中で黙って刀を磨いているんです…。」
インモラルは目をぎゅっと閉じた。
いろいろな考えが浮かんだ。
バカみたいに管理をしていなかったせいでもあったが、まさかここまで適当だとは。
ルイビトン教主は飢えた女だ。
アランにのみ関心を向けるのが当然だった。いや、そもそもルイビトンを釣る時も、それでもいいというふうに言っていた。
当然の報いか。
(そうだ、どうせあの時そうでも言わなければルイビトンは引き受けなかっただろう。問題は今だ。)
インモラルは静かに目を開けた。
はっきりとした視線でアデルを眺めると、アデルが視線を感じたのか顔を上げた。
「何か用か?」
アデルは厚い唇で冷たく言い放った。
生徒たちが見ている前でタメ口をきくアデルが気に入らない。
インモラルは冷静に答えた。
「生徒たちのレベルがなかなか上がらないので、ちょっと様子を見に来てみました。」
「監督でもするつもり?」
「それよりは点検に近いですね。」
会話が交わされるにつれてアデルの表情がヤマネコのように変わった。
「なんだかイライラしているような話し方ね?」
「そうですか?誤解されているようです。」
2人の声が大きくなると、剣術教育場にいた生徒全員がやっていた運動を止めた。
みんなの視線が二人に釘付けになっていた。
殺伐とした空気が流れる中、インモラルが話を切り出した。
「かなり高価な運動器具を用意します。体系のある基礎訓練をさせてくれないでしょうか?」
アデルは無表情で言った。
「生徒たちはまだそんな段階ではない。剣には常に順番というものがある。」
「それなら授業の進度を少し早めてください。私たちには目標があり、今の成長速度は遅すぎます。」
アデルは誇らしげに笑った。
「あなたは私より実力が低い。それに私たちは専攻さえ違う。したがって、あなたが剣について語る資格はない。」
「私は剣について話しているのではありません。教育について話しているのです。」
「それも同じ線上にある。あなたのレベルで誰かを教えるなんて、まったく笑えてくるよ。」
インモラルは冷静に答えた。
「もちろんアデル様より私の方が100ぐらいは低いです。ですが私が教えた生徒たちは、アデルさんが教えた生徒よりもレベルが高いんですよ。」
アデルは苛立っているような表情をした。しかし、それきり対話は続かなかった。
インモラルが再び口を開いた。
「とにかく必要なものは提供しておきます。是非ご本分を···。」
インモラルが背を向けて席を離れる直前だった。
「動くな。まだ私の話は終わってない。さっきからあなたのほうが私よりもマシだという言い方が気になる。」
結局インモラルは再び振り向き、そしてアデルをまっすぐに見た。
剣術教育場に二人の冷たい視線が行き交った。
生徒たちは皆息を殺した。
今にも喧嘩が起きそうだった。
先に声を出したのはアデルだった。
「インモラル、私が特別にあなたに先に教えてあげるわ。剣術とは何か。」
インモラルは目をしかめた。
「喧嘩でもしようということですか?」
「なぜ戸惑う?ただ単純な力比べでしょ。」
冷静さを保っていたインモラルは初めて顔に感情を込めた。
「戸惑うわけがありません。ですがただの単純な力比べではないですよね?」
インモラルは切望していた。
魚が自らえさに食らいつく寸前だった。
まさかこんなにうまくいくとは。
運がついているとしか言いようがなかった。
すぐにアデルの厚い唇からこのような言葉が出てきた。
「よし、賭けをしよう。勝った者は負けた者にどんな命令でもできる。 どうだ?」
インモラルは最後まで我慢できず、狂ったように笑った。
剣術訓練場にいる皆がインモラルを変な目で見つめた。
一瞬笑いがぷつんと絶えた。
インモラルが目を見開いて言った。
「その言葉、しっかりと守っていただきますよ。」
-イベントクエスト
[月光抜刀アデルとの戦い]
賭けがかかった力比べが行われます。負けた場合はどんな命令でも従わなければなりません。逆に勝った場合、アデルに何でも一つ命令することができます。
インモラルの頭の中に通知が響いた。
だが、インモラルは通知すらも聞こえないほど興奮していた。
100レベルを超える相手をどうやってめちゃくちゃにするか、楽しい想像だけが飛び交った。
しばらくしてインモラルが剣術訓練場を出た後だった。
生徒全員がインモラルを心配してひそひそと話し始めた。一方で初めて見るインモラルの性格に、彼を少し恐れる生徒もいた。
時間はあっという間に流れ、決闘当日になった。
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