第9-1話
風がほのかに吹く夜だった。
インモラルは少し緊張しながらアカデミーの校門へと向かった。
歓迎会のあった平原で寮を通り過ぎ、アカデミーの側面にまっすぐ進んだ。
すると遠くに校門が見えた。
インモラルはしばらく立ち止まると服をきちんと整えた。そして、再び校門へ歩いて行った。
「本当に早いですね。」
女教主が校門に立っていた。
その横に世話役の女司祭がずらりと立っていたが、そのせいで女教主がいる空間だけが格のある雰囲気になっていた。
意外だったのは女教主の服装だった。
女教主の身なりはかえって格がなかった。
ティータイムには軽い服装が合う。だがこれは軽すぎる。
着ているセミドレスは黒いシルク素材で、肌がほとんど見えていた。昼だったらいやらしく見えたかもしれない。
夜だからこそ優雅だった。
「行きましょう。」
インモラルは道を案内した。女教主は秘書全員に待てという言葉を残し、インモラルに従った。
女教主が歩くたびにドレスの横のスリットの間に長くてセクシーな足が姿を現した。
またしなやかに盛り上がった胸は、シルク素材が窮屈なのか服にくっついたままきれいに揺れた。
女教主は今日とても美しかった。
キツネ顔の小さな顔は化粧なしでも魅惑的だった。
(この人、本当に30代か?)
長い黒髪に流れるつやは20代前半のようだった。
「夜でも髪がさすがですね。」
「待たせたなら、謝罪が先でしょう?」
インモラルは「申し訳ございません」と答えた。その後、校庭を通り過ぎるまで二人は何の対話も交わさなかった。
アカデミービルの入り口に到着した時だった。
女教主が言った。
「大きさが思ったより小さいです。いいところと言えば…さっぱりしているということくらいしかありませんね?」
女教主は、すべてが気に入らないようだった。
インモラルはあえて黙っていた。
アカデミーに入った時点で終わった。女教主はすぐに自ら陥落する女性だった。
ティータイムを夜に決めたのもそのような理由からだったからだ。
昼に楽しむティータイム、夜に楽しむティータイムはその意味が違う。
どちらも目的は休息だが、その方式に違いがある。
インモラルは女教主を連れて建物の中に入った。
1階の階段を上る時だった。
「インモラル校長。今どこへ向かっているのですか?」
「はい、教主様。それは4階の校長室です。」
「夜のティータイムを楽しむには多少きれいなところのようですね?」
インモラルはその言葉を汲み取った。
「むしろ特別なことを楽しむことができるでしょう。」
「はあ…前もって言っておきますが、あなたは私の好みではありません。」
インモラルは内心笑った。
夜のティータイムは実は乱れた遊興文化だ。高位職が隠しておいた欲望をそれでもきれいな方式で充足する場だった。
インモラルは軽く言った。
「私のように汚れている者の何が特別なのでしょうか?校長室でしか見られないきれいなものは他にあります。」
「うーん···。想像がつきませんね。」
「これからルイビトン教主が私たちのアカデミーを好きになるかも知れません。」
「プッ。またとんでもないことを。」
話が終わる頃、二人はすでに4階にいた。
廊下を横切ると校長室だった。
インモラルは校長室の前で誰かがうろついているのを見て、早足で廊下を歩いた。
校長室の前でうろうろする人は、よく知っている人だった。
「アラン、ここで何をしているんだい?」
「先ほどは無礼を犯しました。お詫びをしたくて待っていました···。」
アランは深いため息をついてうつむいた。
インモラルはそれに感心した。
「男なら言いたいことぐらいは堂々と言えるだろう。懸念するな。」
「校長先生······深く感謝します。」
その間、インモラルを追ってきたルイビトンがアランをちらりと見た。
「この子は?」
「今回の新入生です。見た目と同じくらい心がやさしい子で、大事にしている弟子です。」
ルイビトンはアランをゆっくりと見た。
「うーん。この子もティータイムに来てほしいんですが?」
インモラルはそっと目を閉じた。自分の予感が的中したため、心の中で喜悦を噛みしめながら目を開けた。
「アラン、私も君を呼ぶつもりだった。付き添うのも経験だ。どうだ、一度やってみるか。」
アランはすぐにインモラルの質問にたくましく答えた。
「はい!!」
インモラルはその一言で、今までの苦労が洗い流されるようだった。
3人は校長室の中に入った。
室内のテーブルにあった書類が全部片付いていた。
その代わり、その場にはお茶があった。
香ばしいにおいが室内に漂った。
「いらっしゃったらすぐに始められるように一通り用意しておきました。 どうぞ、お座りください。」
インモラルはわざと校長の席にルイビトンを座らせた。
ルイビトンと向き合った席にインモラルが座り、アランはインモラルのそばに立っていた。
インモラルの室内の隅を指した。
「アラン、室内の端に茶菓の包みがある。持って来なさい。」
アランが隅に行った時だった。
ルイビトンは虫のような声で聞いた。
「若く見えますが、協会の規律に反するのではないですか?」
「ああ見えても19歳からちょうど抜け出したばかりです。入学するのに問題はありません。体が弱いのは罪ではありませんから。」
ルイビトンはうなずいた。
その後、魔法で果実を一つ作り出し、人差し指で壊して自分の口に塗った。
一連のプロセスはあっという間だった。
アランが茶菓を持ってきたときにはもうルイビトンの唇が赤く染まった後だった。
ルイビトンは誰が見てもさっきよりもきれいになっていた。
(すぐに女性モードに入ったな)
インモラルは目を細めた。呆れたが、ティータイムは始まったばかりだった。
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