第7-1話
冬の終わりだった。
東大陸はそろそろ花の香りがする服へと着替えていた。
「少し肌寒いが開講するにはいい天気だ。」
インモラルは校長室の隅の窓から外を眺めた。
外は騒がしかった。
開講日の今日、新入生がかなり殺到していた。
数日前の面接日に来た人はわずか6人だったが、今はその20倍を軽く越えている。
だいたい140人にはなるだろうか。それも皆女子学生だった。
(アランを都市に送ったのが正解だった。)
アランにアカデミージャンパーを着せ、教会に張り紙をするようにという口実で街を歩き回らせた。
一銭も使っていない簡単な宣伝であったのにも関わらず、期待以上にうまくいった。
顔の看板というのはこれだから重要なのだ。サービスを受ける前に一種の期待感を与える。
インモラルはまぬけに笑った。
「性比がこうなると顔が最強の武器だ。」
インモラルの眼目どおり、アランは黄金の卵だった。
アラン1人でアンビションアカデミーに期待感を持った学生が3人から140人に増えたわけだ。
入学願書もなんと140枚だった。
外にいる皆が入学願書を出したのだ。
インモラルは机に戻った。
素早く入学願書を選び、その中でできる限り戦闘経験のある人を選び出した。
物凄い家柄とか、才能抜群とか、目立つNPCはなかった。
カードゲームで言えば全部ノーマルからレアの間だった。
ゲーム序盤では特に人を隠す必要がない。
インモラルはすぐに入学生を決めた。そして校長室の窓へ歩いて行くと、
手を窓の外に出して空を指差した。
「爆竹魔法。」
インモラルの手からは小さな光が空へ昇った。すると澄んだ空には文字が描かれ、そこには合格者名簿全員の名前がはっきりと輝いた。
しばらくして校長室のドアが開いた。
中に入ってきたのはアランだった。アランは嬉しそうに見えた。
「校長先生!同級生がすごく多いです!教会の張り紙を多くの人が見てくれたみたいです!さすが校長先生だ!すごい!」
張り紙を見たのではなく、人を見たんだよ。
正直そう言いたかった。インモラルはアランの肩をたたいた。
「どうだ。君のあのジャンパーがもう自慢になっているんじゃないかな?」
アランは元気そうな声で「はい!」と答えた。
その後明るく笑うが、見た人が皆ストレスが飛んでいくような気持ちの良い笑顔だった。
インモラルは入学願書の束を渡した。
「これをジェニーに渡して、入学生を確認しろと伝えてくれ。そして出来上がったら君が同級生たちを寮の後ろに連れてきてくれ。」
「寮の裏といえば、あの広い平原ですよね?」
インモラルはうなずいた。
アランは丁寧に挨拶した後、外に出た。
「さて、私も準備をしなくては。」
インモラルは本棚に近づき、本を選んだ。
その後、校長室の外へと足を運んだ。
到着したのはアカデミー寮の裏にある平原だった。
ものすごい規模だ。両腕を広げても入らないほどの大きさだった。
平原の真ん中には時々スライムが現れ、夜になるとオオカミが来て休んだりもする。
その遠い向こうは全て森だった。
「今日は平原にスライムすら見えないな。」
インモラルは持ってきた本を開いた。
本の中は絵がいっぱいで、文字は一つもなかった。
インモラルはその状態で何か読み始めた。読んだのは表紙の前のタイトルだった。
「かんばしいメルヘン」
本が宙に浮いたかと思うと、すぐに霧が寮の後ろに立ちこめた。
本が再び下りてくると、40人が座ることができる長いテーブルと椅子が現れていた。
食器や花瓶まで優雅に敷き詰められ、なかなか見ごたえがある。
食べ物は昨日の夜中に手作りしておいた。あとは持ってくるだけで入学式の準備が終わる。
インモラルはもう一度悩んだ。
「今日だけは新入生が主人公でなければならないのだが。」
マナの半分を使って春の花を早めてみるのはどうだろうか。
しばらくして、寮の裏側に美しい花が満開した。
長いテーブルの横に花がずらりと咲き、まるで童話のようだった。
甘い花の匂いを嗅いでいた時だった。
「校長先生。来ました!」
アランは走り、ジェニーは学生を率いて歩いていた。
「あら、きれい···。」
ジェニーの後についてくる学生たちは、広がる花を見て、それぞれ感嘆詞を吐いた。
「まだ春じゃないのに、どうして花が咲いたの?」
「女心を知っている優しい方みたい。」
インモラルはにっこりと笑った。マナを使ったのが惜しくなかった。
新入生全員が一通りテーブルの近くに立った。
インモラルはアランとジェニーに食べ物を持ってこさせた。
食事の準備はすぐに終わった。
「さあ、みんな席に座りなさい」
インモラルはそれを皮切りに歓迎の辞を述べた。
話を聞く人はおらず、みんなアランを見たり、早く食事をしたいという表情だった。
歓迎の辞も厳然たる手続きだったが、辞めることにした。
代わりに注意を与えた。
「手続きより重要なのは配慮です。私たちのアカデミーで最も重要なことの一つは、男子学生を配慮することです。」
アランに迷惑をかけるなという意味だ。
みんな元気はつらつとした声で「はい」と答えた。
言葉とは裏腹に新入生たちの目は全て獲物を狙う猛獣のようにアランにしっかりと釘付けになっていた。
ジェニーが目の色を変えて新入生を見ると、ようやく彼女たちはしつこい視線を引いた。
インモラルはそのくらくらする光景に首を横に振った。
早く食事をしたほうがいい。
「では改めて、新入生の皆さんを歓迎します。この瞬間が皆さんの記憶の中で、最高の入学式として残ることを願います。」
そうして食事が始まった。
同時に、インモラルの頭の中に通知音が鳴った。
-シナリオクエスト完了
[アカデミー開講に大成功]
期限が短い中で新入生を誘致するのに成功しました。アカデミーは正常に開講しており、報酬として特異スキルを得ることになります。
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