第6-3話
インモラルは腕が痛いというふりをした。
「アカデミーを卒業すれば、弟が病気になった時何もできないなんてことはないだろう。」
その言葉を静かに添えると、
金髪の女性はぐずぐずしながらも結局願書を受けとった。
日の照りつける午後。
校長室にはペンの音が響きわたり、2人はそうしてアンビションアカデミーの学生になった。
1時間が過ぎた。
男の子の名前はアラン。姉の名前はジェニー。
その二人から入学願書を受け取ると同時に仕事を与えた。
まずジェニーにはアカデミー建物の入口に立って面接者を校長室まで案内してほしいと頼んだ。
一方、アランには校長室の隣の席に座らせた。
書記のように、会話の内容を書くよう指示したが、正直にいうと人寄せパンダの役割だった。
インモラルの予想は的中した。
アランとジェニーを入学させ、午後に計3人の面接者が来た。
彼女たちは皆、書記として座っているアランをちらりと見て積極的に面接に臨んだ。
午前に面接を受けた3人とは態度がまったく違っていた。
午後の面接者3人は最後に同じ質問をした。
「隣にいる書記の方は学校で働いている方ですか?」
「そうではありません。あなたと一緒に入学する学生です。」
その言葉を投げた時、面接者はうれしくてたまらないという表情だった。
嬉しくてたまらないのはインモラルも同じだった。まるで自分の手のひらで市場の流れが転がっているようだった。
いつの間にか日が暮れた。
インモラルは悩んだ末、アランとジェニーをアカデミーの裏に設けられた寮へと送った。
寮は片付けがまだ不十分だった。
一旦二人を休ませ、朝起きたらジェニーにだけ寮を掃除するよう命令しておいた。
ジェニーは意外にも不満を言うことはなかった。
アランにこっそり理由を聞いてみると、朝食、昼食、夕食を適時に食べられるからだという。
インモラルはなんだか苦しかった。もちろん、だからといって仕事を減らしてはあげることはなかった。
すべて面倒をみていれば事業にはならない。
それより気を使わなければならないのは開講日だった。
インモラルは校長室にアランを呼び寄せた。
「昨日徹夜で作ったアカデミーの学科の上着だ。今年度は学科別にクラス分けをしないから、学科上着と呼ぶにはちょっとあれだが…。それでも結束を示すのにこれほどのものはないだろう。」
「変わった見た目の上着ですね。」
それもそのはず。
現代の服を参考にして作ったのだから。
「自主制作だからだよ。正確な名称はジャンパーだ。学科ジャンパー。略して科ジャンとも言う。」
「科ジャン…。」
アランは家宝を受け継ぐような表情で注意深くジャンパーを受け取った。
インモラルはアランのにこにこした目を見て命令した。
「ジャンパーを着てアダマント都市に行ってきなさい。訪問しなければならない教会は計5つだ。到着したら司祭にこの張り紙を渡しなさい。連絡は既にしてあるから、教会内の掲示板に張り紙を貼ってくれるそうだ。」
アランは張り紙を受け取って読んだ。
「開講日が3日しか残っていないなんて、初めて知りました! 当日に面接に来ても入学を許可するという内容のようですが、私がこのような貴重な任務を受けてもいいのでしょうか?」
「恐れる理由は何だ?」
「貧民街出身の私がこの服を着て歩き回ったとして、学生たちがこれ以上来なくなるのではと心配です…。」
インモラルは目を見開いて言った。
「笑いが出るね。胸に刻みなさい。君は今やアンビションアカデミーの学生だ。いつかすべての大陸人が最高だと認めるようになるアカデミー、まさにこのアンビションアカデミーが君の出生であり、身分となるのだ。」
アランは背を向けた。
インモラルはアランが涙を隠すために急いで背を向けたことにすぐに気づいた。
インモラルはアランの背中を強くたたいた。
「行ってこい、アラン。3日後、その服は私たちの自慢の物となっているはずだ。」
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