第3-1話

「ペケ。貴様に私のために一つ仕事をしてもらう。」


 まず最も急ぐべき問題があった。


 ペケが持ってきた書信がその原因だ。


 時間が経てば、受講生全員が手紙の内容を知ることになるだろう。


「本校の順位が16位まで下がった」


 この事実を知れば、受講生は大抵二つの決断を下す。


 退学するか、あるいは編入するか。


 いなくなった受講生は新学期の入学式で新たに手に入れればいい。


 残念なのはお金だ。


 インモラルが犯したことを考えると、受講生は退学する際要求してくることが一つあるのは確実だった。


「授業料返還」


 現実であれゲームであれ、学生の当然の権利だった。


 インモラルが低く言った。


「ペケ、仕事を与える前に聞こう。現在、我々のアンビションアカデミーに残っている資産はどれくらいだ?」


「30ゴールドだ…」


「ため口をきくな。」


「…30ゴールドです。」


 アカデミーを卒業してダンジョン1年生になったNPCの場合、1年に10ゴールド以下で集める。


 現実の中の新社会人が1年に1000万ウォン以下集めるのと似ている。


 そのため、アカデミーの残りの資産は3000万ウォンと見ることができた。


 保有資産が深刻なくらい少ない。直ちに内規を変える必要があった。


 ひょっとすると、開講前に閉校する可能性が高かった。


「すぐにアカデミーの内規集を持って来い。」


「内規集をですか?」


「ああ、今すぐにだ。」


 ペケは命令に従い、すぐに内規集を持ってきた。


「地下の方にもっとあるみたいです。それも持ってきましょうか?」


 当たり前のことを言っていたので、一発殴りたかった。しかし、そんな余裕はない。


「全部持って来るんだ。」


 ペケが持ってきた内規集の総数は3冊。


 内規集の大きさは一冊当たりが人の頭分くらいあった。


 インモラルは席に座り、内規集を広げた。そして口を開いた。


「ペケ、1日後お前にやってもらいたいことがある。それさえやってくれれば、お前があれほど嫌がっていたこのアカデミーから出ることができる。」


「私が嫌いなのはアカデミーではなく、あなたであ…」


 インモラルはその後の言葉を聞く前に顔をしかめた。ペケに何も言わずに魔法を撃ったのもそのためだった。


 1つの青い光がペケの額に当たった。


 ポンという音がしてペケの顔は完全に蛙になった。


 顔が蛙に変わる呪いの魔法だった。


「一度しか言わない。1日後お前にやってもらいたいことがある。その時来なさい。呪いも一緒に解いてやる。分かったらさっさと失せろ。」


 そう強く言い放つと、ペケはやっと逃げるように外へ出た。


 インモラルはすぐに内規集に埋もれた。


 本を開いたばかりなのに、ものすごい量に目がくらんだ。


 コントロールエフでもあればいいのにな。


 希望する単語だけを選んで探すのは簡単なことではなかった。


「このままじゃダメだ。」


 そしてまず目次に戻って項目から見てみた。


「授業料返還」という単語がありそうな項目がいくつか見えた。


 やっと少し手掛かりができた。


 6時間くらい経っただろうか。窓の外は真っ暗になっていた。


 目が乾いた雑巾のように乾燥している。


 夜になるまでの間ずっと内規集を見ていたなんて。


 仕方がなかった。いろいろと疲れたが、我慢しながら集中し続けた。


 もう少し時間が経って、フクロウの声が聞こえた。午前0時を過ぎたようだった。


 いよいよ内規集にある授業料返還の内容を、全てアカデミーに有利な方へと変える作業が終わった。


 体がひどく疲れている。


 50代を超えた体がこんなに疲れやすいとは。


 椅子で少し横になり、起きたらもう朝だった。


 あっという間に一日が過ぎたのだ。


 目を開けたのはペケがドアを蹴って入ってきたからだった。


「いま居眠りしていらっしゃるときですか?生徒全員が自主退学書や編入申請書を提出しました!しかも、授業料まで返してくれと叫んでいるんですよ!」


「それは大変だな。」


「そんな呑気に答えられるような問題ではありません!この学校に残った資産は30ゴールドしかないんですよ!」


 内規集を見ると、一学期で学生が払わなければならない金額は3ゴールドだった。


 本校は東大陸の人気のない学校らしく、生徒は40名だった。


 そのため、払い戻し金額は計120ゴールド。払い戻す場合、90 ゴールドが足りない。


 言い換えれば破産だった。


(私が校長なのに、そうなると思うか?)


 インモラルは歯を食いしばった。


 しっかりとした校長なら、授業料から出席した分%で金を払い戻してやるはずだ。


 不可能だ。一銭も払えない。


 だから内規集に触れたのだ。


「どうするつもりですか!インモラル校長!」


 ペケは大声で叫んだ。インモラルはそれに比べて平穏だった。


「内規集を見ろ。アカデミーは返す義務がない。」


 ペケは不思議そうな顔をした。すぐこちらに向かってきて、内規集を見た。


 ペケは固い顔で後ずさりしながら言った。


「実習成績40%未満の場合、授業料は全額払い戻ししない。 これは…」


「どうした?」


 実習成績とは、ダンジョン実査のことだ。


 つまり、ダンジョンに入って良い成績を収めることができなければ、一銭も返さないという意味だ。


「どうしたって。私が分からないと思いますか?この条項、変わっているじゃないですか!」


「何がだ?実習成績が適正水準未満の場合、ペナルティーが入るのはかなり前からあった条項だ。」


 ダンジョンを利用するためには、該当ダンジョンを所有している国に税金を払わなければならない。


 この事実を知らない学生はいない。


 ダンジョンに入る権限は、アカデミーの卒業証書がある冒険家。あるいはアカデミー在学生だけだ。


 勝手に入ればこのゲームでは違法となる。


 そのため、生徒にはそれだけダンジョン実習は重要な過程であり、税金を払う校長にとっては名分だ。


 他のアカデミーも同じだった。


 ペケは内規を指摘して叫んだ。


「本来なら実習成績が未満であれば授業料の半額を払い戻さない。正確な内規はこれではありませんでしたか?」


「そうだったかな?よく分からないな。そもそもこの内規は自主退学しなければ済む問題だ。」


「……あなた完全にクズだな。」


「この野郎またタメ口をきくのか。」


 インモラルが声を低くして話すと、ペケはぎくりとした。


 ペケは地面に向かって怒りをぶつけた。


「校長の決断のせいで生徒が大変な目にあったというのに…このように内規を変えてしまえばきっと恨みを買うでしょう。まあ、私とは関係のないことですが。私も辞めるつもりですので。」


 ペケが仕事を辞めるということは今に聞いたことでもない。


 それだけではない。生徒たちの不満も当然予想内のことだった。


 インモラルが淡々と語った。


「お前とは関係ないことだなんて。分かるようで分からないな。」


「どういう意味ですか?」


「知らないふりか。」


 インモラルは内心笑った。その後、答える代わりに手振りでペケを呼んだ。


 ペケは机に近づいた。


 インモラルが指を差したところには署名欄があった。


 もともとそこにはインモラルのサインがなければならなかった。


 責任者の氏名が記入される場所である。


 ところが、今は空白だった。


 インモラルはペンを渡しながら言った。


「君とは関係ないだなんて。これ、担当者は君じゃなかったかな?」

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