第10話 今後のイベント

 俺は夜に考えていた。


 帰りの途中、兄達が仲間を連れて来て絡んできたが今はそんな事はどうでもいい……


 だって後二週間後くらいに超大きなイベントがあるからだ。

 そう……このゲームで何回かある負けイベントが……

 それも今後に繋がるかなり重大の負けイベントだ。


 奴らの狙いはソルデン学園の地下にある、【防魔石】だ。

 【防魔石】とはソルデン学園の地下と王城の地下にあるこの王都から魔物を寄せ付けない様にするアイテムだ。

 王都は元々魔力が多い土地なので【防魔石】が無いと多くの被害が出る事になる。

 片方でも欠けてしまうと効果が発動しなくなる。


 そこに目を付けるのが魔王崇拝組織(血濡れの黒衣)なのだ。

 何が厄介かと言うと学園長達が居ない時に襲撃が起こる事だ……

 学園の戦闘力の高い教師たちが軒並み王城に用事を済ませに行ってる時に襲撃される……つまりソルデン学園に侵入しているスパイに情報を渡されていたのだ。

 生徒会長が頑張ったおかげで何とか【防魔石】を守る事が出来たのだが……生徒数十名と教師数名が命を落とす事になる。

 

 トール達一年Sクラスの生徒達はなんと12支、第5席のパールと接敵する事になる。

 ゲームではまるで歯が立たなかった……トールも『唯一属性』の彼女達も……

 そして結果的にナナ先生が生徒達を庇って命を失う……そんなイベントだ。

 それもそのはず……パールは俺が前に倒したライ・ドワンスとは比べ物にならない位強かったはずだ。

 ナナ先生がどの位強いのか分からないけど確かナナ先生は生徒……それもメリルを庇って戦わずして死んでしまったはずだ。


「絶対に阻止する必要があるよな……」


 とはいえ事前に教師陣に伝える事も出来ない……そんな事したらスパイに情報が洩れて逆に理由されかねない……ていうか知ってる事もおかしいし……

 そんな事になれば間違いなく俺が疑われる事になる。


 事前にスパイにを捉えればいいじゃんと思うかも知れないがそれは出来ない。

 ゲームでは教師Aと生徒Aとされていて、貴族の二人という事実しか出てこなかったからスパイの正体が分からないのだ。


 その上敵の侵入経路なども明かされていないから、そこを抑える事も出来ない……

 今回のイベントは正直かなり不利な戦いになる。


「申し訳ないが……被害をゼロにする事は無理そうだな……」


 確か生徒会長は血濡れの黒衣第3席のアデルと接敵する事になっていたはずだがそっちは任せるしかない……ゲームでは戦闘シーンこそ無かったものの生徒会長が撃退はしてたはずだ。


 俺のクラスはナナ先生以外の被害は無かったはず。

 なら俺はパールを相手にしよう……と言っても油断するつもりは無いが、今の俺だったら負ける気はしない……アデルが相手なら分からないけど、パールだったら大丈夫なはずだ。

 血濡れの黒衣は第5席から一つ上がるにつれて強さが一気に変わってくるのだ。

 それにまだゲームの序盤だし相手もそこまで強くないはずだしな……


 本当ならナナ先生が死ぬ事によって主人公トールの成長イベントに繋がるのだが……

 

「悪いが潰させてもらうぞ……」


 わざわざナナ先生を見殺しになんてしたくないし……

 何よりクラスメイトにはサーラやセリアス達も居るんだ……守る為にはそんな事を気にしてられない。



 ――次の日の朝、サーラはチームの皆と話し合いがあるらしく先に学園に行ったので俺が一人で向かっていた時の事だった。


 学園の廊下の角で誰かとぶつかった。


「あっ……すみません……」


 俺がその子を見ると凄くびくびくして俯いていた……てかメリルじゃん。

 多少は怖がらなくなってくれたと思ってたんだけどな……


「大丈夫だ……今日はトールと一緒じゃないんだな……」

「え……あ、はい……常に一緒にいる訳では無いので……」


 んー、どうしたものかな……本能から貴族への恐怖が染みついてるんだろうな。

 教室でもトールかヒメカ意外と話してる所を見た事無いしな……


「ちょっとびくびくし過ぎじゃないか?」

「す……すいません……治したいんですけど……」


 まぁ、変にクソ貴族を信じて利用されるよりかはよっぽどマシなのかもな……

 庶民『聖女』って事で苦しんでる所を甘い言葉でそそのかされそうになる……そんな展開もあったしな。


「まぁ、いい……貴族には良い奴もいればクソみたいな奴もいる……下手に信じるより疑い深い方が良い時もある……」

「え……」


 メリルは驚いた表情はしている……それはそうだよな、俺自身クソ貴族に部類する人間だからな……


「メリルは『聖女』なんだ……クソみたいな奴らに利用されたくないなら自分で信じられる人を見つけろ……貴族にも味方になってくれる人はいるはずだぞ……」

「……」


 俺はそれだけ言ってその場を去った。

 

 俺が言うには変なセリフだったけど、これで少しは利用される確率も下がるだろう……



 「――よし!今日は座学だ、覚える事も多いからしっかりと聞けよ!」


 そう言って座学の授業が始まったのだが、知ってる事ばっかりだった。


 でも少し興味深い話もあった。


 魔王や魔族に関しての事だ。

 分かってはいたがこの世界では魔族=悪、これが常識らしい。

 そして面白い事に過去にヒューマンに味方をした魔族はいないとの事だった……


 いや、そんなはずはない……ゲームではこんな歴史聞いた事は無かったが、トールが『使役』で仲間にした魔族の回想シーンでヒューマンに味方をしていたはずだ。

 まぁ、結果的にヒューマンに裏切られていたんだがな。


 つまり歴史的には利用して裏切り協力してくれた事実を抹消したのだろう……

 100年以上前の話だから今生きているヒューマンの話では無いけどクソみたいな話だな……

 俺は勿論良い魔族も居るって事は知ってる……戦いが嫌いな魔族も居る……

 幸いなのは今の国王が魔族=敵って認識じゃないことだよな……国王は……だけどね。


 それにしても俺はそいつらに会ったらどうするべきなのか……

 トールみたいに『使役』がない以上保護しても絶対に安全って周りには信じて貰えないだろう……

 『使役』を使ってでもあれほど反対意見があったのだから……


 まぁ、その事は今後考えて行けばいいか。

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