第9話 生徒会長とナナ先生

 生徒たちがオーガと戦った後、二人の女性が話していた。


「それでどうだったんだ?ハナ」

「んー想像以上でしたよナナ姉さん」

「いつも言ってるけど学園ではその呼び方しない様に気を付けろよ?」

「分かってますよ、でも今は二人なんだから良じゃないですか、昔から私は本当の姉さんだと思っているんですから」


 ナナ・レイヘルトは軽くため息をついた。


「まぁ、それはそうとして何で今年は生徒たちが戦ってる所をカメラを通して見たいって言ってたんだ?いつもは全く気にしない癖にさ」

「それはただ単に興味があったからですよ、戦闘の様子は記録に残されるから問題ないですよね」

「それを見るのは別に問題は無いが……それはやっぱり第八班の事か?」

「そうですよ……まぁ、その他の班にも面白い子が居ましたけどね♪」


 笑顔でそう言うハナ・ジェルトを見て再びナナ・レイヘルトはため息をついた。


「全く……大体狂暴化なんて本人たちの同意なしにやっちゃいけない事位分かってるよな……」

「勿論分かってますよ……まぁ今回の件は学園長にも許可を取ってますから」

「え?どうやってだ?」

「んー、普通に正直に思ってる事言っただけですよ?」

「はぁー、まぁ、あの人はいつもハナに甘いものね……」

「そうなんですか?」


「そうだよ……ていうかいつの間にいじってたんだ……私も戦いが始まるまで気付かたかったぞ……」

「それは内緒です♪でもキース君なら大丈夫って分かってましたから……それに負けたとしてもそれをバネに出来ないようならそこまでですよ……」

「まぁ、別にこの事がバレても大きな問題になる程の事じゃ無いが……やっぱりキースが狙いなのか?」

「狙いってそんな変な感じじゃないですよ、ただ単にどの位強いのか気になったんです……あのミリアが気に入っている子なんですから」


 ミリアの名前を聞いたナナ・レイヘルトは少し怪訝そうな表情になった。


「ミリア様が?ナナとミリア様の関係は知ってるが……なんでキースが?」

「例の事件がありましたよね、詳しい事は言えませんがそこで気に入ったらしいですよ♪思ったよりキース君はずっと強かったですけどね」

「なるほど……確かにミリア様もあの事件に関係してたな……」

「そんな事よりこれを見て下さいよ」


 ハナ・ジェルトはキース達がオーガと戦ってる様子を見せた。


「これどう思います?」

「顔色一つ変えずにこの動きは……凄まじいな……」

「そうですよね。全然本気出して無いのに飢餓状態のオーガ相手を手玉に取ってる上に仲間に凄く気を配ってますよね」

「そうだな……」

「オーガではキース君の実力すら測れませんでしたね♪」


 少し間を開けてナナ・レイヘルトは言った。


「キースの強さを知って何をするつもりだ?」

「だから何もしませんって!ただ興味があるだけですよ……それより今年は『唯一属性』の人たちを楽しみにしてましたけど……微妙ですね……」

「そんな事ないと思うぞ?ただキースが飛びぬけているなだけで『唯一属性』の子達も例年と比べたらかなりハイレベルだぞ?」

「まぁ、確かにそうかも知れませんね……」

「それで他に気になった人とか居ないのか?」

「『唯一属性』を抜いて伸びしろの面で言ったら……第一班のサーラさん、ミーヤさん、セリアス様、第二班の、ロウさん、第八班のトールさんって所かな?」

「私も大体同じ事を思っていたが理由を聞かせてくれ」


「んー説明する事もありませんが……強いて言うなら、サーラ・グリッドに関しては私が『唯一属性』の人達を微妙って言う理由ですね……彼女の方がどう考えても強いですよ」

「それはどういう事だ?」

「ナナ姉さんはまだ第一班の戦闘を見てませんでしたね……見れば一発で分かりますよ」


 そう言って第一班の戦闘シーンを見せた。


「なるほど……ただのオーガだと全く話しになってないな。優秀な生徒が集まってる班だから当然だが」

「そうですね、それにサーラさんを見れば分かりますがまるで本気を出していない上にわざと周りに合わせた強さで戦ってるんですよね」

「確かにそうだな……」

「んー、この班も狂暴化にしても大丈夫そうでしたね」

「大丈夫だと思うが……もう勝手にするなよ」

「分かってますよ。今回だけです♪」


「たのしそうだな……」

「はい♪ミリアが居なくなった去年は私と戦える人がいなくて凄く退屈でしたからね♪」

「それはハナが強すぎるだけだよ……大体今ミリア様と戦ったら圧勝するでしょ……一年で更に強くなったし」

「そうかも知れませんね♪」

「教師より強いんだから参っちゃうよほんとに……」


「大丈夫ですよ、別に悪い事をしようとしてる訳でもないんですし……それにナナ姉さんも私に負けない位強いじゃないですか」

「一年前の話だろうがそれは……まぁ、良いけど、一年を余り刺激し過ぎない様にしてくれよ?」

「今はそうしますよ……接触するにはまだ時期が早いですから……もう少し強くなって貰わないと戦えませんから」

「戦う気満々だな……」

「その為に観察しているんですから当然です♪」


「じゃぁ、私はそろそろ行くからな」

「はい♪私も見ていますが、面白い事があったら教えてくださいね♪なんだかんだいって『唯一属性』の方々の成長も期待してますしね♪」



 本来ならこの辺りでハナ・ジェルトがトールに目を付け始めるのだが、キース・グリッドの存在によってハナ・ジェルトの視界にはほとんどトールは入っていなかった。

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