第8話 対オーガ
「それで、どうするんだ?」
んー、正直に言うとオーガだと俺の相手にすらならない……
オーガのレベルが70だから、俺みたいにゲーム知識が無い人だと同じレベルの人が4人居て倒せるレベルだ。
だがこの三人は普通の生徒じゃない、主人公に聖女に巫女だ。
レベルは50だが三人でもオーガなら倒せるだろう……
「私はとにかくぶん殴る」
「私はバフとかのサポートをやります」
「んー、とりあえず皆の動きたい様に動けばいい」
「そんな作戦で大丈夫なのか?」
「あぁ、戦闘スタイルは聞いたが最初から作戦を組むより最初は自由に動いてそれから修正する方が簡単だ」
「私は何でもいい」
「トール、ここはキース様に従おう」
「まぁ、メリルがそう言うなら良いけど……」
まぁ、俺は様子を見つつサポートする形でいいよな。
三人にはもっと成長してもらわないと今後俺の負担が大きくなるしな。
◇
――俺達は指定された部屋に来た。
「準備は良いか?」
「あぁ」
「私はいつでも」
「大丈夫です」
「じゃあ行くぞ」
――戦闘開始から暫くして
んー、個々のポテンシャルは悪く無いな。
俺はわざと攻撃はしないでヘイトを貰う形で動いていた。
そこで分かった事がある。
ヒメカは良くも悪くも馬鹿正直に攻撃をしているせいで、最初こそ良かったものの今は魔物相手に攻撃を読まれつつある。
魔物は学習能力が低いのだが、恐らく本能で感じ取ったのだろう。
ヒメカの攻撃力は強いがまともに当たってない。
次にトールだが……魔物との戦い方がまるでなってない。
ある程度対人訓練はして来たのだろうが、魔物を相手にした事はあまりないようだ。
それにトール自身はまるで弱い……フェンリルの子供に頼り切った戦い方だ。
正直に言ったら話にならない……いざとなったら頼れるのは自分自身だというのに……それじゃ成長しないぞ……
最後はメリルだ。
『聖女』だけあって、バフの強さは感じる。
だが、二人がダメージを受けるとヒールをするのだが、その際にバフが不安定になったり、ヒールのタイミングがずれたりとまだまだちぐはぐだ。
てかなんと言っても立ち位置が悪い。
戦闘中は味方も敵も常に動いている……それなのにメリルはほとんど動かないでバフを撒いている。
そんな戦い方だと相手が魔族だったり人みたいに理性がある敵だとまず最初に潰されるだろう……
三人とも明らかに実践不足だな。
俺がタイミングよくオーガのヘイトを貰って無かったら三人はもっとボロボロになってるだろう。
ていうかこのオーガ少し強くないか?
三人が実践不足だとしてもここまで押されるのはおかしい。
初めて見た時から思っていたが、やはりこのオーガは普通じゃないな……
明らかに強さをいじられている……
この塔で出て来る魔物は理屈は分からんが本物ではない。
一種の実態のあるホログラムと言えば良いのか?
ともかくこいつは明らかに飢餓状態で暴走してるオーガだ。
最初に見た時から少し違和感があったがその為だな……
一体何のために……
悪意があるのならこんな塔じゃ無くて実際に害した方が良いだろう。
だってこの塔でのケガは意味をなさないのだから。
まぁ、いい……考えても今は何も分からない。
「くそ!オーガってこんなに強いのか?」
「攻撃が……」
「私も少しきつくなってきました……」
そろそろ潮時だな……
「三人共俺の指示に従ってくれ」
「は?今はそれどころじゃ……」
「いいから従え」
「ん、どうせこのままじゃ駄目だし、分かった」
「トール今は意地を張ってる場合じゃないよ」
「チッ!分かったよ……」
「んじゃ、メリルは今からヒールは使うな、そしてヒメカとトールの二人だけにバフを全力で使ってくれ」
「え?でもそれじゃあ、キース様は?それにダメージを受けたら回復しないと……」
「今のメリルはバフとヒールを同時に使う事に慣れてないだろ?それだとバフが不安定で逆に戦いづらくなるんだ、それに俺はバフ無しでも大丈夫だ」
「わ……分かりました」
メリルは少ししゅんとしたけど現実はちゃんと見て貰わないとな。
「ヒメカは取り敢えず攻撃するのを止めろ。相手の動きを見てどんな時にどんな動きをすると有効なのかを考えろ」
「相手の動きを……」
「それじゃあ、トールとヒメカは俺が指示したタイミングで攻撃してくれ」
そうして俺はオーガの攻撃を一人で受け続けた。
「ヒメカ!オーガが腕を振り上げたこの瞬間に足に思いっきり攻撃をしてくれ!」
「ん、分かった」
ヒメカの攻撃をもろに受けたオーガはバランスを崩した。
「トール!この隙に右腕を思いっきり攻撃してくれ!」
「……」
トールは無言でリルと一緒に腕を攻撃した。
その攻撃を喰らったオーガは腕を使いづらそうにしていた。
理想では腕を完全に使えなくしてもらう事だったが、まぁ、これなら悪くないだろ。
「これを繰り返すぞ!」
――それから五分後、オーガは完全に倒れた。
俺が倒すのは簡単だが、今はこれがベストだ。
三人を見ると何かを言いたげだった。
「ねぇ、キース、手加減してた?やっぱり強んだね」
ヒメカがそんな事を聞いて来た。
「何の事だ?」
「何で一回も攻撃しなかったのかって事だよ」
トールも続けてそう言って来た。
「別に意味はない。ただ一つ言える事は三人共経験が足りなすぎる……いつまでもここにいる訳にも行かないだろ、早く戻るぞ」
俺がそう言うと三人は無言で後を付いて来た。
――俺達が外に出るとどうやら一番最後だったらしい。
まぁ、様子見してて結構時間が掛かったしな。
「よし!皆お疲れ、今回はそれぞれ新しい課題が見つかったと思う。相手もオーガだ、勝てなくても恥ずかしがる必要は無いぞ!次につなげろ!」
流石に負けた人もいるのか。
ていうかどのグループも飢餓状態だったのか?
「今回見事勝利したグループは第一班、第二班、そして第八班だ」
てことはサーラとセリアスの班とロウ・セブリスとマロト・ララースが居る班だな……
「それじゃあ、今日はここで解散する!ゆっくり休め!」
「――お疲れ様ですキース兄さま」
「お疲れ様ですキース君」
「あぁ、お疲れサーラにセリアス」
サーラとセリアスが挨拶をして来た。
「二人ともどうだった?」
「そうですね、グループの皆が強いのもあって割と簡単に倒しましたから正直分かりませんね」
まぁ、そうか……サーラとアルスが居るしな……それにセリアスとミーヤも主要キャラだけあってそこそこ強いしな。
てかサーラが本気でやったら飢餓状態だとしても勝てるだろうしな。
「そうか、まぁ、二人のグループは優秀な人が集まってるからな」
「キース兄さまには四対一でも勝てませんけどね」
「因みにサーラは本気で戦ったのか?」
「いえ、グループなので皆に合わせましたよ」
「え?サーラちゃん!アレが本気じゃ無いの?」
そう言えばセリアスはサーラの強さを知らなかったな。
「はい……」
「サーラは多分一年の中では俺の次に強いぞ……」
「えぇぇー!!だって今年は『唯一属性』の方が三人も居るんですよ!それなのに!」
「キース兄さまのおかげです……私は別に何も凄くありませんよ……」
「キース君が凄く強い事は分かって居ましたが、まさかサーラちゃんまで強い何て……」
「まぁ、帰ろうか」
結局何故飢餓状態だったのか分からないが少しだけ警戒しておく必要がありそうだな。
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