第7話 満月のペンダントと実践訓練開始
★サーラ・グリッド(side)
私はグループで話す事になったので、セリアス様とアルスさんとミーヤさんで集まった。
ミーヤさんは前に会った時と違って、全然敵意を向けて来ない……
これはキース兄さまが居ないからなのかな。
ミーヤさんがキース兄さまを嫌う理由が分からない訳じゃ無い。
私もミーヤさんほどじゃ無いけど、昔に暴言をキース兄さまから受けてとてもショックだったし……
小さい頃の私はその事に耐えられないでキース兄さまの傍から離れてしまった……
それにミーヤさんはその上セクハラまでされていたらしいし……
でもキース兄さまはミーヤさんとの和解を望んでいる。
勿論凄く難しい話だと思うけど、私は可能性が少しでもあるのなら頑張ろう……
私は私に出来る事……ミーヤさんと仲良くなれるようにしよう……
今は冷たい性格ですが小さい頃は優しくて可愛らしい子だったと聞いてますしね……
「それじゃあ、自己紹介から始めましょうか、私はセリアス・パラドレットです、三人共よろしくお願いします」
「私はサーラ・グリッドです、よろしくお願いします」
「私はアルス・ソーサラと言います。よろしくお願いします」
「私はミーヤ・マガレッドです。よろしくお願いします」
「話す前に一つお聞きしてもよろしいでしょうか。セリアス様」
ミーヤさんが真剣な表情でそう言った。
「いいですよ、何ですかミーヤさん」
「セリアス様がキース・グリッドさんの婚約者候補とお聞きしたのですが、本当でしょうか?」
まぁ、気になりますよね。
「本当ですよ?そう言えばミーヤさんは元婚約者でしたね」
「はい……それでセリアス様はそれで大丈夫なのですか?」
「どういう意味ですか?」
「私はキース・グリッドさんが婚約者候補となって凄く苦しめられました。セリアス様もそうなるのではないでしょうか……」
「そうですか……ですが私はキース君に救われたんです。それに過去の彼がどうだったのかは分かりません……しかし今のキース君は悪い人ではありませんよ」
「そんな簡単に人は変われませんよ……」
「ミーヤさん……ミーヤさんがキース兄さまにされた事は聞き及んでいます……私もミーヤさん程ではありませんが同じ事をされたりしていました」
「それだったら何故今のサーラさんはキースさんにベタベタしているんですか……」
「私もキース兄さまに暴言を吐かれ出してから距離を置くようになりました。正直私も詳しい事は分かりません……ですが一年前くらいからキース兄さまは明らかに変わりました。過去の事を背負って生きていくと言い、努力もして現にセリアス様や私の事を救ってくれました……ですがミーヤさんが信じられない気持ちも分かります……評価を変えてくれとは言いません、ですがこれからのキース兄さまを見ていて欲しいんです……」
ミーヤさんからしたら難しい話だって事は分かっている……
でも私に出来る事はこのくらいしかない……
「そうですか……キースさんを見る事くらいはしましょう、だけどキースさんに対する評価は変わらないと思いますよ」
「はい……それで大丈夫です、ありがとうございます」
「すいません、アルスさん……関係ない話をしてしまって……」
「大丈夫ですよ」
「それじゃあ、これからは実践訓練のお話をしましょうか」
「そうですね」
そうして私達は実践訓練についての話し合いをした。
◇
――俺は夜になり塔の前まで来ていた。
「うーん、それにしても滅茶苦茶高いな」
1000メートルくらいあるんじゃないか?
まぁ、いいや手っ取り早く済ませちゃおうか。
そうして俺は塔のてっぺんまで『浮遊』を使って上がって行った。
「これだな」
塔のてっぺんに対に飾ってある二つのペンダントがあった。
これに俺とサーラの血を垂らせば良いんだよな。
そう思いながら俺は【満月のペンダント】を手に取った。
「よし、あっけなかったけど用事も終わったし帰るか……」
「空間転移――」
サーラが寝てから家を出たから、渡すのは明日の朝だな。
俺も寝るか……
◇
――次の日の朝、俺はペンダントをサーラに渡す事にした。
「サーラ、ちょっといいか?」
「はい、どうしましたか?キース兄さま」
「これをあげようと思ってな」
そう言って俺は【満月のペンダント】を見せた。
「ペンダントですか?」
「あぁ、まずはこれに血を一滴垂らして欲しいんだ」
俺がそう言うと首を傾げながらも血を一滴垂らしてくれた。
それを見て俺も血を一滴垂らした。
「これは【満月のペンダント】っていうアイテムで男女ペアで使用出来て全ステータスを1.5倍にしてくれるアイテムだ」
俺がそう言うとサーラは驚愕した表情になった。
「そんな大事なアイテム……私で良いんですか?」
婚約者候補で王女のセリアスの事を気にしてるのかな?
「あぁ、ていうか元々サーラ以外に渡す気は無かったぞ」
「そうですか……ありがとうございます……キース兄さま」
サーラはそう言って【満月のペンダント】をぎゅっと握りしめた。
「出来れば常に着けて置いてくれ」
「勿論、です……絶対に着けますよ」
「あぁ」
これでサーラの安全はかなり期待できるな。
◇
「――それじゃあ、今日から実践訓練を開始するぞ……皆も知ってると思うけど学園には訓練に使う塔があるから今日はそこに行くぞ」
そうしてクラス全員で塔まで移動した。
改めて見てもやっぱり高いな……ちなみにこの塔は1~300階まである。
かと言って階層が高くなれば敵が強いとかは無くて、ただ同じ部屋が300部屋あると思ってくれた方が正しい。
指定した階に、魔物を指定するとその魔物が現れて戦えるって仕組みだ。
「毎年Sクラスの人達は最初にトロールと戦っているが、今年はもう少しレベルを上げてオーガと戦って貰う」
オーガか……確かレベルは70位だったよな……トロールと比べて20もレベルが違うぞ。
「勿論、塔には安全装置が作用しているから、死ぬ事は無い、ダメージを受けると痛みはあるが塔から出ると入る前と同じ状態になるから安心してくれ」
軽く言っているがこれ本当に死ぬほどダメージを受けると、その痛みをそのまま感じるんだよな……
まぁ、この学園に入った時点でその位の覚悟は必要か……
「よし!早速それぞれチームに分かれて話し合ってから塔に入ってくれ」
先生の指示を聞いてそれぞれ話し合い始めた。
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