第6話 四人グループ
「おい!昨日の戦い方はなんだ!!魔物を使うとか反則だろ!!!」
俺とサーラが学園に来て教室に入ると、マロト・ララースの叫ぶ声が聞こえた。
昨日の今日で良くそんな事が言えるよな……
「はぁ?あれも俺の魔法で召喚したんだから全く問題無いだろ!それにリルは俺の相棒だ!」
「あれじゃあ、一対一じゃ無くて二対一だろうが!!!そうだろ皆!!!」
マロトがそう言うとマロトの顔色を伺う様に頷く人もいれば、そうだそうだと乗り気な貴族達もいる。
勿論何も言わない人も居るが、アルスとヒメカに至っては反応すらしていない。
俺はうるさいなと思いながらもサーラとセリアスの所に行った。
「おはようございます、セリアス様」
「おはようございます」
「おはようございます、キース君!サーラちゃん!それとキース君はセリアス様じゃなくてセリアスね!」
セリアスは笑顔でそう言って来た。
「そうですね……じゃあセリアスって呼びますね」
「敬語もいりませんよ」
「……王族にそれはマズいのでは……」
「婚約者候補なので大丈夫ですよ、それに私が許可してるんだしね♪あと、セリアスって呼び捨てしてくれてるのに敬語って違和感しかありませんよ」
まぁ、正直敬語は余り好きじゃ無いし、セリアスがそう言うなら大丈夫か。
「そうか、分かった……ならこれからは敬語は止めるぞ」
「はい♪ありがとうございます」
「セリアスは敬語なのか?」
「私は誰に対してもこんな感じの話し方ですので」
「そうなんだな……」
「はい!それとサーラちゃんも敬語じゃなくても良いんだからね?」
「私は時期を見て考えたいと思います」
そんな事を話しながら俺とサーラはセリアスの隣に座った。
「それにしても騒がしいな」
「そうですね……」
「ずっと思ってましたが、あのマロト・ララースは『聖女』の事をずっといやらしい目で見てますよね」
「そうだな……」
「本来なら私が止めたいんですが……今はちょっと派手に動けないんですよね」
「何か事情でもあるのか?」
「えっと……ちょっと言いづらいんですが……実はキース君と婚約者候補の関係を結ぶ為にお父様が結構苦労したらしくて……」
あー、なるほどな……
セリアスを救ったとは言え、元々の悪評が酷過ぎる……
もしセリアスが第四王女じゃなくて第一王女とかだったらまず間違いなく無理だっただろな……
「そうか……すまんな」
「謝らないでくださいよキース君……」
俺がやった訳では無いけど、キース・グリッドのせいだから少し申し訳ないなと思う。
そんな事を考えながら再びトールの方に耳を向けると、庶民の癖にとか言われてトールが怒りメリルが止める、なんか前にも見たなこの景色……
そんなやり取りを聞いていると教室にナナ先生が来て教室が静まった。
「お前ら席に着け!明日からは実践訓練として四人組を作って貰って、直接魔物と戦って貰うぞ」
ゲームだとここで俺とトールが同じ班になって、滅茶苦茶トールに突っかかって決闘になってたよな。
「班はこちらで決めてるから早速発表するぞ」
「第一班、セリアス・パラドレット、アルス・ソーサラ、ミーヤ・マガレッド、サーラ・グリッドだ」
凄い組み合わせだな……サーラとミーヤの関係性が少し心配だけどまぁ、セリアスが居ればどうにかなるだろう。
アルスも努力家で良い奴だしな……
「第二班、ロウ・セブリス、マロト・ララース……だ」
ここで二人が一緒の班……ゲームとは違うな。
でも間違いなくここで協力関係にはなるだろう……
残りの二人は全く知らない奴らだな……
……
……
……
それから次々発表されて最後の班になった。
「それじゃあ最後の班だ。トール、メリル、ヒメカ・タナト、キース・グリッドだ」
ヒメカ以外はゲームと一緒か……
まぁ、丁度良いか……ここでトールが俺の邪魔をする存在かどうか確かめよう……
「それじゃあ、自分のグループで集まって、自己紹介や作戦とかを話し合え」
――そうして俺は、トールとメリルとヒメカで集まった。
トールは明らかな敵意は見せないが、俺と同じグループで嫌そうだ。
まぁ、その位だったら別に何も問題無い。
元々トールに好かれようとか仲良くなりたいとか無いしな。
てかこれ俺が話さないと誰も口開かない奴だな。
メリルは自分から話すのが苦手だし、ヒメカは結構無口な方でおっとりした性格だし、トールは良く分からんけど話す気配は無さそうだ。
「えっと、とりあえず自己紹介からするか?」
俺がそう言うとヒメカが最初に話し出した。
「ん、私はヒメカ・タナト、よろしく」
「えっと、私はメリルです……よろしくお願いします……」
ヒメカはゲームでもそうだったが、かなりマイペースな性格でそう言って来た。
メリルは……まぁ、いつも通りおどおどしてるな。
「俺はトールだ……」
トールだけは少し不服そうにそう言った。
「俺はキース・グリッドだよろしくな……」
その後に無言の時間が少し続いた。
この空間くそ気まずいんだが……
「えっと、とりあえず俺が進行して良いか?」
「ん、いいよ」
「わ、私も大丈夫です……」
「俺は信用しないが、別にいいぞ……」
少し気に障る言い方だが……まぁ、良いけど。
「じゃあとりあえず皆の戦闘スタイルを聞いて良いか?」
「私は、近距離が得意」
「俺は『使役』で召喚して戦うスタイルだから臨機応変に戦ってる」
「私は……自分では戦えません……すみません……」
スゲーびくびくしてるな……別にそんなに怖がらなくてもいいのに……
まぁ、性格的にも難しいのかな……
「何で謝るのか分からないけど、『聖女』だしサポートが得意なんだろ?」
「はい……」
「なら問題無いだろ……サポートが居るか居ないかだといた方が良いに決まってる」
「あ、ありがとうございます……」
俺がそう言うとメリルは少し安心した様にそう言って、ヒメカはうんうんと頷いている。
「それで、お前はどうなんだよ……」
しかしただ一人だけ相変わらず不機嫌そうにトールがそう聞いて来た。
そしてそれを聞いたメリルが先程までとは打って変わって慌てて言った。
「トール!お前は何て言ったらだめだよ!!」
「何でだよ?」
「相手は貴族だよ……」
「学園では関係ないだろ」
「それは……そうだけど……でも……」
トールは少し子供っぽいな……まぁ、自分が信じた正義に融通が利かない性格だしな……
悪い噂の多い俺が気に食わないんだろうな。
俺だから良いものの、もし他の悪い貴族だったら問題になるぞマジで……
「別に良い……俺は割と近距離も遠距離も行けるが、どっちかというと遠距離が得意かな……」
俺がそう言うとメリルは驚いた表情になって初めて目が合った。
おおよそ俺がトールに突っかからずに話を進めたのが意外だったのだろう……
そして、その後すぐに目を反らされたが、それからはさっきみたいな怯えた様子は余り無かった。
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