第5話 キース対アルス・ソーサラ

「それでは最後の組み合わせだ、キース・グリッド対アルス・ソーサラ、二人は壇上に上がってくれ」


 よりにもよってアルスかよ。

 別に問題は無いが負けず嫌いな性格だからちょいめんどいな。

 負けてあげる気も無いし余計なトラブルにならないと良いけど。


「キース兄さま、頑張ってください」

「あぁ、ほどほどに頑張るよ」


 ――そう言って俺は闘技場に上がった。


 アルスの顔を見たんだが……なんか凄いやる気満々だな……

 そんなガチな決闘とかじゃ無いんだからもっと気楽にやって欲しいのだが……

 

「キース・グリッドさん、よろしくお願いします」

「あぁ、よろしく」

「あなたの噂は良く耳にしています」

「そうか」

「悪い噂ばっかりでしたけど、ここ一年は良い噂が出ていました」


 別に軽蔑しているようでも無いし……一体何が言いたいんだ?

 

「言いたい事があるならはっきり言ってくれ、回りくどいのは苦手なんだ」

「そうですね、でははっきりと言います……あなたが王女様を救ったと言う事を信用出来ていません……あなたは自分でも聞いていると思いますが、皆に口だけの傲慢で怠惰な人って言われていますし」


 本人の前で随分とはっきり言うな……まぁ事実だからいいんだけどね……

 そう思えばアルスは噂とかは信用せずに自分で確かめるタイプの人間だったな。


「それで?」

「なので私はあなたが噂通りの口だけの人なのか自分で戦って判断します。だからあなたは本気で来てください」


 本気か……申し訳ないがそういう訳にも行かないんだよな……

 まぁ、でも少し本気出しても良いかな?アルスだしな。


「あぁ、分かった」

「それでは行きます」


「アイススフィア――」


 うん、流石に威力が高いな……でもこんなんじゃ当たらないぞ。


「それじゃあいつまで経っても当たらないぞ……」

「っ!!!」


 俺がそう言うとアルスはムッとした顔になった。


「アイススフィア――」

「アイススフィア――」

「アイススフィア――」

「アイススフィア――」

「アイススフィア――」


 魔法の展開速度もまぁまぁだな。

 でも全然本気じゃないだろこれ……


「アルス……はやく本気を出しなよ……」

「そうですね、では本気で行かせてもらいます」


 俺がそう言うとアルスの目の色が変わった。


「魔法強化――」

「アイスストーム」


 ほう……流石は『賢者』だな……

 これなら"空間転移"を使わないとかすり傷くらいは負いそうだな。


「空間転移――」

「空間転移――」


「っ!!!速すぎ……」


 やっぱりレベル差があり過ぎるか……

 "空間転移"を使ってるとは言え、動きを追えていないな。


「それが本気なら俺には勝てないぞ?」

「!!!舐めないでください!!!」 


「アイスブリザード!!!」


 なかなか悪くないけど……まぁ、でもこんなものか……

 まだゲームだと始まったばかりだしな。

 伸びしろは滅茶苦茶感じるけど……まぁ、もういいか……大体分かったしもう終わらせよう……


「空間転移――」


「ファイアランス――」


 そうして俺あアルスの後ろに移動して頭の横にわざと外す形で"ファイアランス"を撃った。

 俺の攻撃が命中した壁は派手爆発した。

 事故防止の魔法道具が無いと大変な事になっていただろう……

 ちょっと威力出し過ぎたか……


「わざと外した……今の君じゃ絶対に勝てないから降参してくれる?」

「くっっ!……はぁ、そうね……降参します」


 アルスが降参したが、ナナ先生は黙っている。

 どうしたのかと思いナナ先生の方を見ると、滅茶苦茶驚いている……

 ていうか良く見渡したらクラスメイトの全員が驚いているな……

 中級魔法にしては威力強すぎたか……

 しかも『賢者』に圧勝したしな。


 まぁいい、どうせ速かれ遅かれ分かる事だ。


「ナナ先生……速く結果を」

「え?あっ、あぁすまない……勝者キース・グリッド!」


 俺がそれを聞いてその場を離れようとした時


「キースさん……」

「なんだ?」

「直ぐに追いつきますから……」

「そうか……」


 アルスはそれだけ言ってから礼をして立ち去った。

 その姿を見て俺もサーラのいる所に戻った。


「――キース兄さまお疲れ様です」

「あぁ……ところでサーラはアルス・ソーサラと戦ったら勝てそうか?」


 俺がそう聞くとサーラは少し考えてから言った。


「正直分かりません、五分五分……と言った所でしょうか……」


 流石サーラは自己分析が出来ているな。

 いい刺激になるといいな。


「そうか……ならもっと頑張らないとな」

「はい!キース兄さまの隣に立ち続けられるように頑張ります!!!」



 俺は夜に家で寝転んで考えていた。


 ちなみにサーラは俺の上で大きな胸を押し付けて眠っている。

 俺も男だ、こんな生殺し状態は正直勘弁願いたい。

 まぁ、言った所で凄い勢いで否定して来て絶対に忍び込んでくるんだよな。


 まぁ、今考えるべき事はとあるアイテムの事だ。

 それは【満月のペンダント】という男女がペアで使用可能な隠しアイテムだ。

 お互いのペンダントに血を一滴たらす事で使用できるようになって、効果はシンプルで最強、全ステ1.5倍だ。

 これは隠れステータスと言って表示されていないステータス……つまりATKとかDEFとかの肉体的ステータスも強化できる。

 俺も強くなるしサーラが使えばかなりの強化が見込めて俺も安心できる。


 【満月のペンダント】というアイテムは満月の夜、因みにこの世界の満月の頻度は三か月に一回、その日だけ手に入れる事が出来る。

 その満月の日にとある塔の一番上、と言っても塔の中じゃ無くて塔の屋根上に出現する。

 だからこれは『浮遊』さえ持っていれば誰でも簡単にゲットできる隠しアイテムなのだ。


 しかもその満月の日がなんと明日だ。

 と言っても【成長の指輪】と違って別に気合を入れる必要も無い。

 だってその塔は学園の近くにある生徒が授業でモンスターと使う為にある塔なのだから。

 

 うん、マジでイージーにゲット出来るな。

 サーラだったら出所を聞いて来る事も無く信用して着けてくれるしな。

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