第4話 トール対マロト

★トール(side)


「ははは、どうした全然当たらないじゃないか」


 ッチ!出来るだけリルには頼りたくなかったんだけどな……

 正直リルを召喚すればこの程度の相手なら瞬殺だろうけど……


「戦ってる途中に良くしゃべるんだな」

「フハハハハハ、そんなの余裕だからに決まってるだろうが!」

 

 その歪んだ顔が凄く不愉快なんだよ……

 もういいや、こんな奴に手こずる何て事はあっちゃいけないんだ。

 早く終わらせよう。


「召喚――リル――」


(ふわぁー、なんだ……もう出番なのか)


 そう言って現れたのは俺の『使役』によって契約を結んでくれたフェンリルの子どもだ。

 子どもだからと言ってなめてると一瞬でやられるだろう……


「あぁ、悪いが手伝ってくれ……絶対に負けられ無いんだ」


(んー。りょうかーい……適当に動いて良いんだよね?)


「勿論自由に暴れてくれ」


(おっけー)


 俺がそう言うとリルは凄くやる気になった。

 

「フハハハハハ、そんなちっこい犬一匹で何が出来るんだよ」

「そう言ってるのも今の内だけだぞ?」

「そいつは面白い冗談だな」

「まぁ、そう思ってても良いけどな」


 てかもう手遅れかもな……リルは小さいって言われるのが何より嫌なんだよ……


 リルの方を見ると、凄い剣幕でマロト・ララースを睨みつけている。

 リルも我慢の限界っぽいし、そろそろ行くか。


「そろそろ行くぞ、リル!」

「ははは、来いよ!!!」


 そう言って醜く笑うマロト・ララースにリルが一瞬で距離を詰めて腹を蹴った。


「ぐっっ!!!」

「やっぱり追いつけないか、だったらもう勝負は決まったな」


 リルは『神速』のスキルを持っているから中途半端な実力では目で追う事すら出来ない。

 やっぱりこいつは全然強く無いな……


「クソが!!これでもくら……」


 マロト・ララースが何かを唱えようとした瞬間リルが攻撃をして更に追い打ちをかけた。


 マロト・ララースはその場に泡を吹いて倒れた。


「勝者トール」


「お疲れ、トール」

「あぁ、ありがとうメリル」


 マロト・ララースとのやり取りはメリルには聞かれてないよな。

 それだったら余計な事を伝える必要もないか。


 それにしてもやっぱり『使役』が無いと弱いな俺って……


(僕はもう戻るぞ)


「あぁ、ありがとな」


 俺はそう言ってリルの頭を撫でてお別れした。



「思ったより強いんだな……フェンリルの子供って」


 マロト・ララースじゃあ、相手にもなっていなかったしな。

 まぁ、比較対象がマロト・ララースじゃ参考にならないか……


 フェンリルが出て来てからは一方的だったしな。

 それにしても随分あっけなかったけど……まぁゲームでも入りの部分だからそんなもんか。


「えー、次の組み合わせは……」


 ――その後数試合行われて、サーラ、ミーヤ、ヒメカの試合が行われた。

 

 サーラの相手は名前すら見た事ない人で本当に一瞬で終わって、サーラの強さは誰も分からないだろう……

 

 ミーヤに関しても勝ったのは勝ったのだが、相手も割と強くて少し手こずっていた様子だった。


 ヒメカに関しては『巫女』だけあって相手は手も足も出ていなかった……

 ていうか周りのみんなもヒメカが意外と脳筋タイプで結構驚いていたな。

 見た目と戦闘スタイルのギャップが激しいもんな……


「次の、組み合わせは……ロウ・セブリス対○○○○」


 ロウ・セブリス……


 こいつはゲームでは悪役貴族だった。

 それも庶民を毛嫌いし、貴族絶対主義の典型的な貴族だ。


 一族全員が同じ思想で、しかも公爵家。

 王国でも割と大事な役割を果たしている家だし、その上セブリス家の人脈が凄い……

 

 こいつは賢く狡猾で、裏で何かを操るタイプだ。

 その為、ゲームでは中盤まで全く尻尾を見せない奴だ。


 今現在繋がりがあるのかは分からないが、コイツがマロト・ララースをそそのかしてた犯人でもある。

 もしかしたら今回の一件のこいつの仕業の可能性もある。

 まぁ、分からないけどな……


 そんな事もあり、コイツら貴族絶対主義は『聖女』が庶民である事を滅茶苦茶嫌がっているのだ。

 庶民の『聖女』が活躍する位なら、殺してしまおう……そんな思考を持っているから厄介だ。

 それに勢力が大きいから国王ですら、罰を与えずらいのがまた難しいポイントだ。

 

 それ位貴族絶対主義は王国に貢献しているって事だ。

 まぁ、その分不正も滅茶苦茶してるから、俺的には今すぐ消えて貰っても良いと思うのだが、国王目線からするとそうでもないんだよな。


 その辺はトールが上手く貴族絶対主義のアホどもを削ってくれるだろう……

 俺は俺のやり方で備えよう……


「勝者、ロウ・セブリス!」


 そんな事を考えている内にロウ・セブリスが勝利した。


 ロウ・セブリスが壇上から降りてそのまま俺の方に来た。


「キース君、見てくれたかな」


 いきなりなんだよ……と言いたい所だけど、まず間違いなく勧誘だろうな。

 第4王女の婚約者候補と知ったからかな。


「一応見てはいた」

「そうですか、キース君さえ良ければ放課後にでもお茶しないかい?」


 腹黒いくせに笑顔は良いんだよな。

 これで何人の人が騙されるのやら……


「いや、興味ないな」

「ふふふ、そうですか……では今回は止めておきますね、また今度お願いします。では失礼します、サーラさんも失礼しますね」


 厄介な奴だな本当に……


「キース兄さま、あいつは信じちゃいけないタイプの人間のようですね」

「なんで分かるんだ?会った事あったか?」

「いえ、初めて会いました……ただ直感でそう思いました……」

 

 流石だな……たったこれだけの会話から感じ取るとは……

 

「そうだな、俺もあいつとは仲良くなれそうに無いって思って居た所だ」

「なら良かったです」

 

 あんな奴絶対に仲良くなんかられないよ……ていうかなる気が無い。

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