第3話 模擬戦

 暫くしてミーヤが教室に入って来た。


 ミーヤは俺の事を一瞬だけ見てすぐ目を反らして席に着いた。


 ゲームでもそうだったが、ミーヤはいつも一人だ……まぁ、ほぼキース・グリッドのせいなんだけどな……

 前に仲良くなりたいって思ったが、その方法を全く思いつかないんだよな……参ったな……


 ――それから少し時間が経つと次はセリアスが教室に入って来た。


 セリアスはきょろきょろして俺と目が合うと笑顔になってこちらに歩いて来た。


「キース君!お久しぶりです!サーラちゃんもおはようございます」


 クラスメイト達はセリアスが俺に話しかけるのを見て凄く驚いている。


「セリアス様、お久しぶりです」

「おはようございます、セリアス様」

「キース君、様はやめませんか?」

「いえ、王女ですので……」

「でも私達は婚約者候補なんですよ?」


 えぇ、それ公表していないのにこんな所で言っちゃって良いのか?

 案の定周りが一気にざわつき始めた。

  

「それ……言って良いんですか?」

「大丈夫ですよ、元々学園に入学したら公表するつもりでしたし」

「大丈夫ですかそれって……俺の悪評があるせいでセリアス様に不都合が生まれそうですけど……」

「それは大丈夫です、既にサーラちゃんとも話し合ってますし、寧ろ悪評を無くす為に発表したまでありますからね……」


 そう言ってセリアスとサーラはお互いの方を見て微笑み合った。


「そ、そうですか……」

 

 というかいつの間にサーラと話し合っていたんだ……

 それになんか凄い仲良さそうだし……

 


 ――セリアスが俺の隣に座って三人で話していると今度は担任の先生が来た。


「よーし!全員席に着いてるなー。私がSクラスの担任になったナナ・レイヘルトだ、よろしくな」


 この先生はゲームで名前が出て来る程度の担任だったよな。


「早速だが、今日はお互いの実力を知る為にも、一対一での模擬戦をしてもらう」

「先生……私は聖女ですが、戦闘力はほとんどありません……」


 担任の言葉にメリルが弱々しくそう言った。

 まぁ、そうなるよな、聖女はヒーラーとかバフとかのサポート特化だしな。


「そうだな……それではメリルは模擬戦には参加しなくて良いぞ、聖女だし戦闘向きでは無いからな」

「それで、組み合わせはどうやって決めるんですか?」


 誰かが担任にそう問いかけた。


「んーそうだな、まぁくじ引きでいいだろう」


 適当だな……

 ゲームだと俺は入学式をさぼっていたから居なかったんだよな……

 勿論サーラも本来だったら居なかった訳だし……どうなるんだろうか……



 ――担任に連れられて俺達は模擬戦の会場に来た。


「えー、それじゃ一組目は……トール対マロト・ララースだ」


 そう宣言されて二人が闘技場に上がった。

 

 ここはゲーム通りだな……

 

 この試合はトールが勝つんだが、マロトは既にメリルを狙い始めてるはずだ……

 庶民に負けた憎しみとメリルの独占欲に支配されてこれからトールに突っかかり始めるんだったな。

 まぁ、それが原因で一家まるごと潰れるんだけどな。


 もう戦闘開始しても良さそうだが、何やら二人は話しているな……

 トールは凄く怒っているし、まぁ、内容は大体分かっているけどな……


 負けないとは思うが、頑張れよトール……

 マロトは共通の敵だしな。



★トール(side)


 模擬戦の相手はマロト・ララースか……

 こいつは高位貴族である事を利用して悪い噂が絶えない奴だよな……

 絶対に負ける訳には行かない!


 そう思い俺は闘技場に上がった。


「ふっ庶民が相手か……つまらないな……せいぜいケガをしない様に頑張るんだな」


 マロトはあからさまに見下してそう言って来た。


「そうか……」


 庶民だのどうだのはもう言われ慣れた……今更そんな事で気を散らす事は無い……

 

「それにしても、あの聖女は凄くいい女だな……もう手は付けたのか」


 マロトは凄くゲスイ顔をしてそう言って来た。


 何を言っているんだこいつは……メリルは幼馴染であり妹みたいな物だ。

 好きだが、それは恋愛感情じゃなくて家族愛だ。

 手を出すなんてそんな事ある訳が無いだろ……

 

「は?そんな訳無いだろ?メリルは家族だ!」

「ははっ、それじゃあまだ聖女は男を知らない体なのか!」


 マロトはそう言いながら舌なめずりをした。

 こいつ!メリルに手を出そうとしているのか!!

 メリルが望むなら俺は止める気は無いが、こいつの事をメリルが求めるなんて絶対にあり得ないだろう。

 

 こいつには絶対に負けならない!!!


「だまれ!絶対にお前には負けない!」

「ははははは、そんなに聖女はが大切か?」


 当たり前だ!俺達は孤児院でずっと一緒に居たんだぞ!!!


「当たり前だ!!!」

「ふはは……俺はな……人の絶望する顔が大好きなんだよ、俺があの聖女に手を出したらお前はどんな表情をするのか、今から楽しみで仕方無いよ……」

「ふざけるな!!仮にも聖女だぞ!!!そんな事が許される訳が無いだろ!!」

「そうだな、聖女だ、しかしただの庶民だぞ?こっちは公爵家だ。脅し方は沢山あるんだよ……例えば聖女の育った孤児院とかな」


 

 ふざけるな!俺とメリルは孤児院の皆が大好きだ!

 育ててくれたシスターや、共にそだった子供たち……

 それをだしにメリルを脅すだと……そんな事は絶対にさせない!

 

 俺はそう思った瞬間にブチ切れてマロトに襲い掛かっていた。

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