2章 原作開始

第1話 ソルデン学園

「とうとう入学の日か……」


 転生してから約一年……遂にこの日が来た……

 これからイレギュラーな事は沢山起こるだろう……

 でも俺は全てを絶対に対処してやる。


 俺の邪魔はさせない……大切な人は絶対に守る……


 主人公についてはまだどうするか分からないが、ヒロイン達には関わって行こうと思う……

 勿論無理矢理主人公から奪うとかは無いが、一緒にいて俺の事を好きになってくれればラッキーだ。

 主人公には申し訳ないが、その場合はヒロインだとしても俺が頂こう……

 

「キースお兄さま!一緒に学園まで行きましょう!!!」

「あぁ、行こうか」



「――良く見た光景だな……」


 前世ではゲームで何回も見たこのソルデン学園……

 正直かなり気分が昂る。

 

「キースお兄さま?どうしましたか?」


 少し耽り過ぎていたな……


「いや、何でもないぞ、それじゃあ行こうかサーラ」

「はい!」


 当然ながら周りの生徒たちは俺を見て嫌悪の目を向ける者ばかりだ……

 悪口を言っている奴も多いがまぁ、いちいち気にする事も無いだろう。


 ――俺とサーラが歩いていると誰かが言い争っている声が聞こえた。


「おい!平民の癖になにぶつかって来てんだよ!」

「はぁ?そっちがぶつかって来たんじゃないか!!!」


 そう言えばゲームの入りにこんなシーンがあったな……


 今言い争っているのは原作主人公のトールだ……

 トールは庶民だが曲がった事が大っ嫌いで貴族だろうがその意思を変えない奴だ。


 その隣でおどおどしているのがヒロインで庶民ながら『聖女』となったメリルだ。

 

 貴族の奴は……誰だっけ……原作でも名前出てなかったよな?

 たしかこのイベント以外では出てこない奴だったよな……ならあいつはどうでも良いか……


 でも一応皆鑑定しておくか……


 (鑑定)


『名 前』:トール(男)

『年 齢』:15歳

『種 族』:ヒューマン

『身 分』:庶民

『レベル』:50

『体 力』:1300

『魔 力』:1000


 まぁ、ゲーム通りだな……

 ちなみに主人公には『希少属性』である『使役』を持っている。

 『使役』とは名の通り魔物や魔族、ドラゴンなどを使役する事が出来る能力だ……

 トールはこれで性格の良い魔族を『使役』を使う事によって助けたりしたいた。

 まぁ、そのせいで魔族を嫌う者からとてつもないヘイトを買う事になるんだがな……

 それに既に将来的にSランクまで進化できるフェンリルの子どもを既に使役しているはずだ……

ちなみにこの『使役』は相手側が許可しないと使用出来ないが、『使役』出来たらその相手の持っているスキルを一つだけ使用する事が出来る。勿論スキル枠の10個の中には含まれるため無限に借りまくるみたいな事は出来ない。


 次は聖女だ。


『名 前』:メリル(女)

『年 齢』:15歳

『種 族』:ヒューマン

『身 分』:庶民

『レベル』:50

『体 力』:1000

『魔 力』:1600


 こっちも何もおかしい所はないな。

 因みに『聖女』は名前の通り最強のヒーラーだ……

 病気や失った腕や目とかの部位消し損をも治す事が可能だ。

 いわば王国の宝だ……


 もう一人の貴族は男爵家で大した事ないモブだったので気にする必要は無いな。


「うるさい!そもそも庶民の癖に俺の前を歩いているのが悪いんだろ!」

「後ろからぶつかって来て何を言ってるんだよ!」


 貴族の奴は隣にいるメリルの方をなめまわす様に見て言った。


「お前も庶民だよな」

「え?あっはい……」

「だったらお前が俺の女になるなら許してやるよ」

「え……い、いやです……」

「おい!庶民の癖に貴族に逆らうのか!!!」

「おい!嫌がってるだろうが!!」

「なんだお前はコイツの彼氏か何かか?」

「彼氏ではないが幼馴染だ!!」


 まぁ、メリルは庶民とは思えない位顔立ちは良いけどさ……  

 『聖女』って事分かってないんだよなあいつ……

 確かこの後決闘になってトールが勝つんだよな……

 そして聖女が絡んでいる事もあってそのせいで入学式が1時間遅れる。


 普通に怠いな……


「キースお兄さま……あの者達が気になるのですか?」


 俺が考えに耽っているとサーラが話しかけて来た。


「ん?あぁちょっとな……」

「キース兄さまはあの女性を一番見ていましたが……確かに可愛らしい子ですね……」

 

 (見た目は合格ですね……性格はこれから……)


 そんなあからさまだったか?

 確かにクソ可愛いなって思ったが……

 それより何かぶつぶつ言ってるが聞き取れないな……


「どうしたんだ?」

「キース兄さまはあの女の子を助けたいんですか?」

「ん?まぁそうかな?聖女だしな……」

「聖女!!!」


 しまった……聖女の顔はまだ知られて無いんだった……


「キース兄さま……是非彼女を助けましょう……」


 と思ったけどそんな事は気にして無さそうだな……


「え?何で急に」

「聖女さんですよ?恩を売っておいて損はありません……ただでさえ評判悪いんですからね」


 いや、まぁ、断る理由はどこにもないが……


 なんて言ってる間にどうやら決闘になりそうな雰囲気だ。

 メリルは滅茶苦茶焦ってるし不安そうだな……


「どうだ?まさか逃げないよな?庶民!俺が勝ったらその子を貰おう」

「はぁ!逃げる訳無いだろうが!!!」

「おっ、落ち着いてトール……」

「うるさいぞお前ら……」


 俺がそう言うと三人がこちらを見た。


「キ、キース・グリッド様……」

「キース・グリッドだと……」


 貴族の奴とトールは驚いたようで、メリルは相変わらずおどおどしている。


「何故止めるのですか……こいつらは庶民で……」

「そんな事はどうでも良い……大体学園では庶民も貴族も関係ないってルールだろ」

「それは表向きで……」


 貴族の男が何かを言おうとしていたが口をはさんだ。


「お前はどうせわざとぶつかって初めからこの子を自分の物にしたかっただけだろ……」

「な、何故それを!!!」


 こいつは馬鹿か……鎌をかけただけなのに……

 少しは言い訳してみろよ……


 それを聞いてメリルは凄く青白い顔になって、逆にトールは真っ赤になった。


「何だと!!ふざけるな!」


 ちょっとうるさいぞトール……

 話がややこしくなるから黙ってて欲しいよ……


「落ち着け……一回黙ってろ……」


 俺が怒気を込めた声でそう言うとトールは不満げな顔で大人しくなった。


「まず貴族のお前……俺は貴族とか庶民とかどうでも良いんだよ……ただ今回は俺が不快に思ったから止めただけだ……この子には手を絶対に出さないって約束すれば見逃してやるよ」

「はっ、はい……分かりました!約束します!」


 貴族はあっさりと約束して速い逃げ足で去って行った。


「じゃあ次は君……まず前提としてあんなに分かりやすい挑発にのるなよ……それに決闘を受けるのはいいがこの子を賭けの対象にするな……」

「そ、それは……だってあいつは……」

「言い訳はいいからさ……負けたらどうするつもりだよ……決闘での賭けは絶対なんだぞ……」

「……」

「まぁ、いいや……」


 俺は次にメリルの方を見たが、俺に怯えてる?

 いやそんな感じじゃ無いな……これは俺じゃ無くて貴族に怯えているって感じだな……

 まぁ、無理も無いよな……こんな事があった後だとな……

 

「君も貴族はあんなのが多いから気を付けろよ……」

「え、あ、はい……」


 俺はそれだけ言ってその場を去って、少し離れている所に居たサーラと合流した


 サーラが何を考えているのかは良く分からないが、俺の事を思って言っている事は分かるから別に聞かなくて良いか……


 それにしてもこれからトールは俺にどう関わって来るか……

 悪評はトールも知っているはず……今回は助けた事と賭けの事があったから大人しくなっていたが、本来なら俺を嫌っているはずだ。

 俺的には別に敵対したい訳じゃ無いんだよな……メリルの事もあるしな……


 まぁ、あいつ次第では敵になるしかなくなるけどな……

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