第21話 セリアス・パラドレット(下)
★セリアス・パラドレット(side)
「つ……うぅ……」
私はミリアお姉さまに抱きしめられながら泣いていました。
「セリアス……泣きたい気持ちは分かるけどさ……今はやる事があるだろ……」
そうだ……早く人を呼びに行かないと……
「は……っはい……」
「よし!じゃあ行くぞ!」
そうしてミリアお姉さまと部屋の外に出たのだが、どうやらここはキース君のお家のグリッド家だったらしい。
私達が慌てていると執事の人、お父様に聞いていた暗部の方が居たので、ミリアお姉さまが説明しました。
すると執事の方はみるみるうちに顔が青白くなって行って、急いで医者を呼びに行った。
その後、キース君のお父様のダルト様や妹ちゃんのサーラちゃんにも説明した。
ダルト様は慌ててキース君の部屋に向かいました。
そしてサーラちゃんはその場に倒れてしまった……片腕を失ったと聞いてショックを受けたのだろう……
キース君がサーラちゃんを大事にしているのと同じく、サーラちゃんもキース君の事が大好きなんだと伝わって来ました。
――暫くして医者に診てもらったが、腕も残っていないし治療は不可能との事だった。
それを聞いたダルト様と執事さんはあからさまに残念そうな顔になり、サーラちゃんは号泣しました。
「ごめんなさい……ごめんなさい」
私はキース君の家族に泣きながら謝った。
そんな時だった、ミリアお姉さまが治す方法はあると言い出しました。
ダルト様と執事さんは分かっていた様な反応だったが、私とサーラちゃんは一気に泣き止んだ。
「ミリアお姉さま!それはどうしたら良いのでしょうか……」
私がそう聞くとミリアお姉さまは真剣な表情になり言い出した。
「その前に聞くけど……セリアスは何が何でもキース君の事を助けたいと思ってる?」
「はい!勿論です!!!」
私は即答しました。
「そう……ならとりあえず説明する……」
「はい……」
「まず今現状で治す方法は一つしかないの……それが、Sランクアイテムの【再生の宝玉】を使う事よ……セリアスならこの意味が分かるよな?」
【再生の宝玉】か……確かお城に保管してあったよね……でもそれは使い捨てのアイテムで余程な事じゃなくては、使わせてくれないだろう……
それにキース君を助けたいだけじゃ絶対に許可は下りないでしょう……
「はい……しかし命の恩人だけでは理由が足りないですよね……」
「あぁ、まず間違いなく足りないな……勿論、私やセリアスを助けてくれた事には凄く感謝はしてくれると思うが、もうちょっと違った形でのお礼になるな……Sランクアイテムは国宝だしな」
「それではどうすれば……」
ミリアお姉さまはため息を付いて話し出しました。
「ダルト様はどうすれば良いか分かっていますよね?」
「あぁ、そうですね……何となくは分かっています……」
一体何の話でしょうか……
「それでどう思いますか……」
「私は……本人たちの意思による……としか言えませんね……」
「そうですか……キース君はまだ目覚めないでしょうからとりあえずセリアスの意見を聞こうか……」
「なんでしょうか、ミリアお姉さま……」
「さっきどうすればと聞いたな?」
「はい!」
「簡単に言うと……セリアスがキース君と婚約すればいいよ」
「え?」
婚約?私が想像している婚約であっているのでしょうか?
というかそれ以外にもないですよね……
確かに婚約者となればお父様も【再生の宝玉】の使用を許可してくれるでしょう。
でも婚約って……いや確かにキース君は見た目はかっこいいし、話していて悪い気はしなかったし……何より身を挺して私を助けてくれましたし。
いや、でもそんな……まだ出会って間もないですし……
私はふとサーラちゃんの方を見たら、凄く驚いていました。
やっぱりサーラちゃんはキース君の事を男として大好きなんですね……
なら私がとる行動は一つしかないですね……
「えっと……その……ミリアお姉さま、キース君の意向もありますし、とりあえずは婚約者候補と言う事では駄目でしょうか?」
「んーまぁ、多分大丈夫かな?絶対とは言えないけどね、まぁ私も手伝うし大丈夫だとは思うかな」
「ではそれで行きましょう」
もう一度サーラちゃんをみたら少し顔色が戻っていたので、私はそれを見てこれで良かったと思いました。
仮にキース君の事を好きになったら先にサーラちゃんと仲良くならないとだなと感じました。
◇
――私とミリアお姉さまは王城に帰って来て、お父様に説明をしました。
ダレスお兄様が私を誘拐した犯人だと、そして誘拐した理由を、それからトリアもダレスお兄様の味方だったと言う事。
そこをミリアお姉さまとキース君さんが助けてくれた事、そしてend3というアイテムの事、それによって私を庇ったキース君の腕がなくなった事を。
それを聞いたお父様は頭を抱えていました。
どうやらダレスお兄様とトリアは帰って来ていないらしいです。
そして噂によると、私達がグリッド家から帰ってくる2日の間にどうやらダレスお兄様が魔王崇拝集団と共にいたのを見たものがいるとかいないとかで、頭を悩ませていたらしいです。
ですが今はそんな事どうでもいいんです。
「お父様……」
「どうしたセリアスよ」
「実はお願いがございます……」
「なんだ……言ってみなさい」
私は大きく深呼吸をして話した。
「実は今回、私とミリアお姉さまはキース君が居なければ100パーセント死んでいました」
「そ、そうか……」
「はい、そして私は今キース君に凄く惹かれています、だからキース君を婚約者候補として頂きたいんです」
「婚約者候補か……キース君は公爵家だし、今回二人の命を助けた事でその資格は十分あると言えるだろう……でもそれだけじゃないよな?」
流石お父様……きっと私が言いたいことも、目的も分かっていらっしゃるのですね……
しかし、私は自分の意見を曲げる気はこれっぽっちもありません!
「はい、私の婚約者候補が私の為に腕をなくしました……なので【再生の宝玉】の使用の許可を頂きたいと思っております……」
「ほう……それがどういう事か分かっているよな?」
「はい、勿論です……しかし、キース君は将来この王国を背負っていく人材になると私は確信しています……」
「父上、それに関しては私からも同意できる意見です」
「ほーう、まさかミリアも同じ意見とはな……なるほどな……分かった、なら【再生の宝玉】の使用を許可しよう」
「本当ですかお父様!!!ありがとうございます!!!」
私はそれを聞いて凄く嬉しくなった。
「その代わり、絶対に婚約しろ……とは言わない、しかしそんな簡単にその関係を終わらせることは許されないぞ?例え候補だとしてもしっかりとするんだぞ」
「はい!勿論そのつもりです」
当たり前だ……私はキース君との関係をいい加減にする気なんてさらさら無い。
初めて好きになれそうな人に出会えたんだ……この出会いを大切にしたい……
「それと、例え婚約しなくとも、絶対にキース君を味方にする事……間違っても帝国など他国に行かないように努めてくれ」
「はい!分かりました」
「うむ、なら良い」
「「ありがとうございました」」
――私とミリアお姉さまは【再生の宝玉】をグリッド家に送ってから私の部屋にやって来た。
「やったよ!ミリアお姉さま!!!」
「そうだな……良かったよ」
「うん!!!」
「セリアス……私はキース君だったらセリアスを任せても良いと思っているから、ちゃんと自分で考えるんだぞ……」
「はい……私もキース君は今までで出会った男性の中では唯一好きになれるかもって思いました……」
「そうか……でも急ぐ必要は無いからな……学園も始まって出会いも沢山ある訳だからな……」
「はい!分かりましたお姉さま!!!それで私はキース君に会いに行っても大丈夫なのでしょうか?」
私がそう言うとミリアお姉さまはやれやれと首を振った。
「あのなぁ、セリアス?今回の事があって、父上が許可する訳無いだろ?」
そういえばそうだ……キース君に会いたくて遂忘れていた……
「そう……ですよね……」
「まぁ、後2ヶ月で学園が始まるんだ……そこでならいくらでも話せるから、そこまで我慢しろよ」
「はい!分かりましたミリアお姉さま!」
私は今から学園に行くのが楽しみで仕方ありませんでした。
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