第19話 セリアス・パラドレット(上)
★セリアス・パラドレット(side)
私はお父様に呼ばれて今後の事をお話する事になりました。
「セリアスよ、来年に『唯一属性』である者が学園に入学して来る事になっているというのは知っているか?」
「はい、聞いていますよ……私の一つ上の代の方から選ばれるとの事ですよね」
「あぁ、そうだ……そこでセリアスには一年早く入学してその者達と交流を深めて欲しいのだが……大丈夫か?」
「勿論大丈夫ですよ、お父様」
「そうか……良かったよ」
「いえ、その位何の問題もありませんよ」
それに正直私自身『唯一属性』の方々に会えるのは楽しみですしね。
「それともう一つセリアスの目で確認して欲しい事があるんだ」
「はい、何でしょうか?」
「キース・グリッドは知っているか?」
キース・グリッドといえばあった事はありませんが、誰に聞いても悪い噂ばかり聞く人ですよね?
その人がどうしたのでしょうか……
「はい、耳には入っていますけど……」
「最近話題になっている魔王崇拝集団に付いては知っているか?」
「はい、今王国が最も最優先で調査している団体の事ですよね」
「あぁ、実はその団体が見つかったのは、キース・グリッドのおかげなのだ?」
「それは一体?」
「キース・グリッドの義妹のサーラ・グリッドがその団体に捕まって、それを助け出したのがキース・グリッドなのだ……それもSランクスキル『結界』をもっているレベル100の敵を倒してな……」
はい?『結界』は余り分かりませんがSランクスキルで弱いはずがありません……
それにレベル100って?一体どうやって……
噂によるとキース・グリッドは口だけで実力の無い傲慢怠惰野郎と聞いていたのですが……
「なるほど……それで私に調査して欲しいって事でしょうか……」
「あぁ、厳密に言えば既にある程度の情報はあるのだ……グリッド家には元々暗部の者を監視の為に送ってあるからな」
「それで……その結果はどうだったのでしょうか……」
「その者によるとキース・グリッドは急に変わりだして、今では凄く義妹を可愛がってるって……」
え?義妹を可愛がってる?
それは別になんだって良いのでは?
「えっと……それだけなのですか?」
「そうなんだ……義妹を可愛がっていて、悪意のあるような者にはとてもじゃ無いけど思えないとの事だ」
「なるほど……」
「そこで、本来なら身内だけでやる予定のセリアスの誕生日パーティーを開いて、キース・グリッドと話す機会を作ろうと思うのだが……」
確かにそれだったら自然な形で話す事が出来そうですね。
「タイミングも良いし分かりました……私も少しキース・グリッドに興味がでましたし……」
「そうか……ならそこでキース・グリッドがどういう者か見極めて欲しい」
「了解しました」
キースさんですか……どちらの噂が本当なのか……
わざと猫を被っていた?それとも噂自体が大袈裟に広まっただけなのか……
どちにしろ凄く面白そうな方ですね……
本性が知りたいし、私は『擬態』を使って近づきましょうか……
当日は魔法道具によってスキルは使えませんが、私達はその影響をうけなくなるように出来ますしね。
◇
――パーティー当日になり私は皆に挨拶をした。
キースさんは初めて見たけど……見た目は凄く良い……それこそ、イケメンと言われているお兄様方よりカッコよく見える……
っと、それは良いとして、キースさんは誰とも話さず凄く暇そうだ。
キースさんが誰にも近づこうとしていないのもあるが、明らかに皆がキースさんを避けている。
まさかここまで嫌われているとは……
――暫くしてキースさんが会場から出た。
私はちょっと用事が出来たと言って、その場を離れて後を追った。
キースさんは庭に出てベンチに座った。
私は『擬態』を使って変装してキースさんの所に向かった。
キースさんは何かに耽っているようでしたが後ろから話しかけました。
「――あのー、隣良いですか」
私がそう言うとキースさんはびっくりした表情をした後に聞いてきました。
「いいですけど……君はだれ?」
それを聞いた私は何故か揶揄いたくなったので、揶揄った言い方で返事をしてキースさんの隣に座りました。
「私が誰か知りたいですか?」
キースさんは少し時間をおいて答えました。
「いや、別にいいや、それで君はパーティーに参加して無かったよね?見なかったけど?」
「ふふ、そうですね、私は訳があって今日来ましたが、パーティーには呼ばれてませんので」
「ふーん、そうなんだ」
嘘はついていないので別に大丈夫でしょう。
私は気になった事を聞きました。
「あなたは何故ここに?パーティーに呼ばれたんですよね?」
「君って俺の事知ってる?」
「はい、キース・グリッド様ですよね?」
「知ってるなら色々と聞いてるでしょ?だから居心地が良くなかったからね」
確かにあの空気はキースさんからしたら凄く居心地は悪いのでしょう……
それにしても話した感じだと、全く嫌な感じがしませんね……
寧ろ優しい人に思えますが……
「でも、噂とは随分と雰囲気が違いますね?どうしてでしょうか?」
「ただ生き方を変えただけだよ……」
「そうですか……キース様はお変わりになったのですね」
「まぁ、そんな簡単に過去の事は許して貰えないって分かってるから、ゆっくりと贖罪して行こうと思ってるよ」
「そうなんですね……私はここら辺で失礼しますね」
「あぁ――」
何となくですが、キースさんが嘘をついている様には思えなかった。
私はキースさんが噂のような愚者じゃ無いと判断出来たのでその場を後にする事にした。
早くお父様報告しましょうか……
今後も是非お話してみたいですね……
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