第18話 想定外
今、俺の目の前でミリアが3対1で戦っている……それもその内の一人はミリアよりレベルも高い。
どうやら俺はミリアを過小評価していたみたいだ……
3対1でも互角に戦っている……いや互角以上か……
俺は先程まではミリアに勝てると思っていたが……かなり良い勝負になりそうだ……
流石はこの世界でたった一人のフルセンスだ……
フルセンスとは『基本属性』の『火』『水』『風』『光』『闇』の攻撃属性を5種類すべて持っている人の事を言う。
ミリアは『基本属性』以外は持っていない……だがそれなのに滅茶苦茶強い。
所詮『基本属性』だろと思うかも知れないが、フルセンスともなれば使い方次第では、『希少属性』にも負けない位強いのだ。
例えば分かりやすく言うと、『水』魔法のウォーターカッターを『風』魔法で勢いを上げて威力を上げたり出来る。
そんな感じで全ての組み合わせを自由自在に出来るのがフルセンスだ。
『特殊属性』や『希少属性』でも同じ事が言えるが、フルセンスに比べたら全然組み合わせで化けるみたいな事は無い。
「くそ!ミリア……貴様もしかしていつもは手加減していたのか……」
「当たり前だろ?第一貴様と模擬戦をしても手加減をしないと一方的になり過ぎてつまらないだろ?」
「ッチ!おい!お前ら、もういい!全力で行くぞ!!!」
「なら私も本気で行かせてもらおう……」
ダレス達3人が弱い訳では決してない……
しかしミリアとは3対1で互角だ……
それ程までにミリアが強いのだ……
「くそ!こうなったら!!!こっちだ!!!」
ダレスはそう言ってセリアスにターゲットを向けた。
今のセリアスは【弱体化の手錠】のせいで何も出来ないから人質にでもしようとしているのだろう。
まぁ、させないけどね。
「それはさせませんよ」
俺はダレスの腕を掴んでそのまま吹き飛ばした。
「セリアス様、絶対に俺から離れないでくださいね」
俺がそう言うとセリアスはコクンと頷いた。
近くに居てくれれば"空間転移"でいつでも避難させられる。
「くそ!貴様……邪魔をするな!!!!!!」
「はぁ、もう諦めてくださいよ……どう考えたって3対1でミリア様に勝てないんじゃもう何をしても無駄ですよ……」
「そうだぞ!ダレス!諦めて付いて来るならもうこれ以上傷つかなくて済むぞ!」
「ふははははははは!!!!」
何だ?
おかしくなったのか?
「もういいや……おい貴様らプランCで行くぞ……」
「「はい」」
そう言って3人は集まった。
「何を言っているんだ!」
「ふふふ、これでお前らは終わりだよ……セリアスを失うのはかなり痛いけど、この際だから仕方ない……」
そう言ってダレスは2つの魔法道具を取り出した。
あれは【転移石】と……!!??
どうしてダレスがアレを持っているんだ!!!
「じゃあな……」
「何だと?何を……」
「end3発動……そして転移」
「は?一体……」
マズイ!!!間に合うか?
ミリアの所に……
「空間転移――」
よし!これならギリ……
いやマズイ!!!
立ち位置的にセリアスが少し巻き込まれそうだ!!
くそ!
「っぐぁぁ!!!空間……転移――」
俺はセリアスを庇いながらも間一髪で"空間転移"が間に合った。
焦っていて転移先を考える余裕が無かったので一番最初に思いついた俺の部屋に転移した。
「はぁ、はぁ」
「お、おい……だ、大丈夫か……」
「あっ……あ……」
「はい……一応……」
そう言ったはいいものの正直滅茶苦茶キツイ……
だって左腕を爆発に持っていかれて失っているから……
治せるか?いや俺じゃ無理だ……これを直すなら『聖女』に頼むか、【再生の宝玉】Sランクで最高レア度のアイテムでも無いと無理だな。
でも今は取り乱したら駄目だ、セリアスは既に精神が限界なはずだ……その上セリアスを庇った俺が苦しんだらセリアスは直ぐにでも壊れるだろう……
「とりあえず休め!今すぐに人を呼んでくるから!」
「はい……ありがとうございます」
ミリアがそう言って俺をベッドに寝せてくれた。
「すいません……ちょっと寝ますね……」
「あぁ、ゆっくり休んでくれ……」
「はい……セリアス様も元気出して下さいね、俺は大丈夫ですから」
俺はそう言って眠りに着いた。
◇
「ん……ん?」
目が覚めたら柔らかくて大きいものが目の前にあって俺はそれを揉んでいた。
起き上がって見てみたら、サーラが一緒のベッドで寝ていた。
何で俺のベッドに居るんだ?
てか寝顔が可愛いな……
ん?ていうか、何で左腕があるんだ?
聖女であるあの子が来た……訳は無いな……大体まだ聖女として覚醒していないだろうし……
て事は【再生の宝玉】で?でもあれは王城で保管してあるはずだ。
最高ランクのSランクアイテムだけあって使用はかなり慎重なはず……
しかも【再生の宝玉】は一度使うとその効力を失ってしまう……
そんなアイテムを俺のような公爵家の3男に使ったのか?
もしそうだとしたら俺は最低でも3日は寝ていた事になる……
王都まで片道1日と10時間位だ。
今度ちゃんとお礼を言わないとだな……
使った理由によっては色々考える必要がありそうだしな……
「ふぅー」
でも今一番考えないと行けないのはダレスの事だよな……
ダレスが持っていた【転移石】は別に良いのだが……問題はもう一つの方だ……
だってあれは血濡れの黒衣に所属している第11席の科学者、ドン・セサミが開発した戦争アイテムだ。
【end3】は三秒後に周囲50メートル範囲で大爆発を起こすアイテムだ。
幸いあの場所は人が来るような場所では無いから、被害はないだろう……
「まさかダレスが血濡れの黒衣と繋がっているとはな……」
これは絶対にゲームではあり得なかった事だ……
俺がサーラを助けて未来が大きく変わっているのだろう……
「んーー、あっ!!!キース兄さま!やっと起きたんですね!!!」
サーラが起きると同時に飛びついて来た。
「あぁ、心配かけてごめんな」
「はい、ホントですよ?何でいつも無茶するんですか?私の事は頼ってくれないんですか?」
「いや、その……」
「私ってそんなに頼りないですか?大体いつの間に王女様たちと仲良くなったんですか?」
「いや、仲良くは……」
「良いですよ?別に?王女様が好きならば私も協力しますよ?王女様だったら正妻は譲ってしまう事にはなっちゃいますけど、致し方ありません」
サーラが早口になって喋り始めたので止めようとしたが、全く意味が無かった。
ていうかとんでもない事言ってるんだが……
何でそこまで話が飛躍するんだ?
まぁ、確かにサーラとセリアスは正直そう思っている節はあるが、ミリアは違う。
だってあの人の恋愛対象は女性だからな……
だからあの人と結ばれる可能性は0パーセントなのだ。
それもあって友達にはなりたいが、恋人関係になりたいとは全然思っていないぞ……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます