第17話 第3王子ダレス・パラドレット

 俺とミリアは先に進んで歩いていた。


「所で……ミリア様?」

「何だ?」

「ミリア様は今回のセリアス様の誘拐事件の犯人に心当たりはありますか?」

「犯人か……無い訳では無いが……」


 なるほど……ミリアは犯人が第3王子だって薄々分かっているのだろう……しかし身内が犯人なんて事は信じたく無いって感じだな。

 トリアが裏切った事は知っているのだろうか?


「あるんですね……しかし信じたくないって感じですね」

「な!?」

「それでもしその人がこの先で待っていたらミリア様はどうするんですか?そして俺にどうして欲しいですか?」

「君は……どこまで知っているんだ?」


 ミリアは少し警戒しながらそう聞いて来た。


「知っている?何も知りませんけど、状況から判断しただけですよ?」

「判断だと?どういう事だ?」

「いえ、わざわざ第2王女であるミリア様が助けに来るって事は、それ程の人が攫われてたって事で、それは第4王女である可能性が高い」


 俺がそう言うとミリアは驚いていた。


「その理由としては第2王女であるミリア様は第4王女のセリアス様を溺愛していると有名ですし、セリアス様の誕生日パーティーが昨日終わりましたので警戒が緩んで誘拐するタイミングとしては丁度良いのかと思いましたので」


 ミリア様は驚いて何も言わないが俺は続けた。


「そして、そんなミリア様がセリアス様のピンチに仲間も連れずに一人で来るって事はどうしても自分で対処したい理由があるのではないでしょうか?そしてそこから犯人が王族の誰なんじゃないか……とも推測しましたが、どうでしょうか?」


 ミリアは少し俯いて考えた後口を開いた。


「はぁ、まぁいいか……どうせこの後分かる事になるんだ……そうだ君の考えは合ってるよ……キース君……君は噂で聞いていた様な馬鹿じゃないんだな……寧ろこれだけの判断材料でそこまで推察出来るとは……」


 まぁ、知っていた事実を良い感じに伝えただけなんだけどね……

 都合良く評価を上げれたみたいだな。


「ミリア様はどうやってセリアス様がここに居ると分かったのですか?」

「あぁ、その事だったら、セリアスの10歳の誕生日にプレゼントしたペンダントに居場所の分かる魔道具を仕込んでおいたんだ……一応言っておくとセリアスにはちゃんと言ってあるからな……」

「なるほど……それで明らかにセリアス様が来なそうな場所に居たから駆け付けたって事ですね……」

「そういう事だ……実際に来るまでは誘拐だと確信はしてなかったんだけどな……犯人が以前から何か動いていると分かっていたのに……」


 ミリアは事前に防げなかった事に悔いているのだろう……


「それで、俺にはどうして欲しいんですか?ミリア様の指示に従いますよ」

「そうだな……なら君はセリアスの安全を確保して欲しい……犯人には手を出さないでくれ……せめて私の手で捕まえたいからな……」

「はい、そうしますね」


 ミリアが第3王子に負ける事はまず無いだろう。

 俺はセリアスの安全を確保するだけで良さそうだな。



 ――そして俺達は大きな部屋の前に来た。


「この部屋っぽいですね」

「あぁ、それじゃあ入るぞ」

「はい」


 部屋に入るとそこには少し大きめのベッドが一つ置いてあるだけだった。

 そしてそこにはセリアスが【弱体化の手錠】を付けて眠っていた。


 【弱体化の手錠】とは魔法やスキルが全て使えなくなり、ステータスも大幅にダウンするアイテムだ。


「セリアス!!!!!!!!!!!」


 そう叫んでミリアはセリアスの所に駆け寄った。


「ん……んん……え?ミリアお姉さま?どうしてここに?」

「大丈夫だったか、何もされて無いか?助けに来たよ……セリアス……遅れてごめんね」

「大丈夫だよミリアお姉さま……まだ何もされてませんよ……」

「そうか……良かったよ……」


 その時奥の扉から一人の男性が来た。

 あいつが第3王子だな……


 (鑑定)


『名 前』:ダレス・パラドレット(男)

『年 齢』:20歳

『種 族』:ヒューマン

『身 分』:サザニシア王国第3王子

『レベル』:125

『体 力』:3600

『魔 力』:2200


 意外と強いな……

 まぁ、この程度ならミリアには絶対に勝てないな。


「おや?想定外のお客さんが来ちゃったな……ミリア……それと君はキース・グリッドか?なんで君も?まぁいいか」

「やっぱり貴様だったのか……何でこんな事を……」

「はぁ、まあいっか……どうせ知られたならミリアだとしても返す気は無いし教えてあげますよ」


 それからダレスは語った。

 セリアスが産まれたからずっと愛していたと、腹違いではあるけど兄弟だから結ばれる事が出来ずこのような行動に移して、セリアスを監禁しようとしたと。

 その事を語っているダレスは狂気的としか言いようが無く……目が正気とは思えないほどだった。


 それを聞いたセリアスは恐怖で震えている。

 ミリアは怒りで震えていた。


「ダレス……貴様は正気なのか!!!!!」

「当たり前でしょ?何を言っているんだミリアは?」


 それにしてもなんでダレスはこんなに余裕そうなんだ?

 ミリアには勝てないって自分でも分かっているはずだ……


「はぁ、もういい、今ここで貴様を倒して相応の罰を受けて貰おう……本当は今ここで殺したいが家族としてのせめてもの慈悲だ……」

「ははははは、俺がミリアに勝てないなんて事は分かってるよ?2人共こっちに来なよ」


 そうダレスがそう言って一人の女性と一人の男性が入ってきた。

 女性のほうは……セリアス付きのメイドのトレアだった。

 男性の方は誰だ?


 (鑑定)


『名 前』:カジュ(男)

『年 齢』:21歳

『種 族』:ヒューマン

『身 分』:奴隷

『レベル』:150

『体 力』:4500

『魔 力』:3800


 なんだこいつは……全く知らない奴だ……

 元々いたのか?

 それとも俺のせいで変わったのか?

 流石のミリアでもこいつとダレスの相手は難しいか……


「何故だ!!!何故トリアがそっちにいるんだ!!!トリアはセリアスのメイドだろ!!!」

「はい、すいません、でも私にも私の事情がありますので」

「黙れ!!セリアスが小さい頃から一緒に居た癖に良くこんな事が出来るな!!!」

「もう一度言いますが私には私の状況がありますので」


 同じ事しか言わないトリアに対して、ミリアはマジ切れしている。


「そう……やっぱりあなただったのね……私が連れ去られた時に私の視界を塞いで拘束したのは……道理で名前を呼んでも助けてくれなかった訳だ……」


 セリアスは生気が全然感じ取れない声でそう言い、今にも倒れそうな顔をしていた。

 なんとなく分かった上で心のどこかでトリアが助けてくれなかったのは、トリアもやられていたからって思っていた……いやそう思いたかったのだろう。


 トリアはそれ以上口を開かなかった。


「それでどうしますか?ミリア様……流石に3体1はキツイですよね?」

「はぁ?君は私をなめているのか?」


 え?ちょっと怖いですって……

 決してなめてなんかないんだが……


「そんな事はありませんけど……勝てるんですね?」

「当たり前だ」


 まぁ、いいか……流石にミリア様の意見を無視は出来ないから危険なら助ければいいか……


「それじゃあ行くぞ!!ダレス!!!」

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