第15話 第4王女の誕生日パーティー(下)

 ――うるさかった会場が一気に静かになった。


 それもそのはずだ。

 階段から国王と第一王妃、それに第4王女のセリアスが降りて来た。


 国王は45歳とは思えない程イケメンだ。

 第一王妃は20代って言っても信じれる位若く見える。

 セリアスは美しい、この言葉が一番似合っている……人気投票でも常にトップ5に入っていたしな……


「諸君、此度は我が娘第4王女セリアスの誕生日パーティーに来てくれてありがとう、是非楽しんでくれ」


 国王がそう言うと次はセリアスが前に出た。


「皆様今日は私の誕生日パーティーに参加してくださりありがとうございます。本来ならパーティーをする予定は無かったのですが諸事情があり開く事にしましたので。最後まで楽しんで行って下さい」


 諸事情ってなんだ?

 お父様が言ってた同世代の人と仲良くなるって話か?

 


 ――時間が進み、俺は話す人が居ないので、一人で過ごしていた。

 父親は大人同士で話している。

 サーラはずっと俺といるって言っていたが、サーラは友達の多いはずだから流石にそうも行かないので、説得して友達に挨拶をしに行って貰った。


 まぁ、俺も今日のパーティーに参加している人で仲良くなりたい人はそんなに居なかったから何も問題は無い。

 ミーヤは話せそうにも無いし、セシリアの近くには常に人がいる。

 

「ふぅー……ちょっと風にあたって来るか……」


 ――俺は風にあたりたくなったので会場から出て外にあるベンチに座った。


 それにしても今日はあまり収穫が無かったな……

 結局セリアスが俺の事を嫌っているのかどうかすら確認できそうに無い。

 ゲームではエンカウントしたシーンが無かったからな……

 

「――あのー、隣良いですか」


 後ろからそんな声が聞こえた。

 俺はその姿を見て内心凄くびっくりした。

 しかし平穏を装って返した。


「いいですけど……君はだれ?」


 勿論知っている。

 だって『擬態』スキルで変装しているセリアスだったからだ。

 『擬態』スキルは存在する人や、自分で考えた見た目になれて、見破るのがかなり難しい。

 今のセリアスは後者なのだが、この姿はゲームで良く見ていた。

 なんでここに?


「私が誰か知りたいですか?」


 セリアスはそう微笑みながらそう言って、隣に座った。


「いや、別にいいや、それで君はパーティーに参加して無かったよね?見なかったけど?」

「ふふ、そうですね、私は訳があって今日来ましたが、パーティーには呼ばれてませんので」

「ふーん、そうなんだ」


 まぁ、呼ばれる側じゃなくて呼ぶ側だからな……


「あなたは何故ここに?パーティーに呼ばれたんですよね?」

「君って俺の事知ってる?」

「はい、キース・グリッド様ですよね?」

「知ってるなら色々と聞いてるでしょ?だから居心地が良くなかったからね」


 てか、遂思った事を言っちゃたけど、セリアスの誕生日パーティーを居心地良くないって言って……大丈夫か?

 それに滅茶苦茶ため口だけど『擬態』してるし、大丈夫だよな?


「でも、噂とは随分と雰囲気が違いますね?どうしてでしょうか?」

「ただ生き方を変えただけだよ……」

「そうですか……キース様はお変わりになったのですね」

「まぁ、そんな簡単に過去の事は許して貰えないって分かってるから、ゆっくりと改めて貰おうと思ってるよ」

「そうなんですね……私はここら辺で失礼しますね」

「あぁ――」


 そう微笑みながら言って、セリアスは歩いて行った。

 マジ何だったんだ?


 てか、性格もゲームと全然違うし……

 会場でも思ったのだがゲームのセリアスはあんなに笑顔が多くなかったが……


 ゲームでは主人公トールにですら最初は冷たかったはずだ。

 少しづつ好きになり、支えるようになって行ったんだよな。


 そう言えばセリアスの回想シーンがあったっけな……


「――あぁ、そうか、何で忘れてたんだろう……」


 セリアス付きのメイドがお金に目が眩んでセリアスを裏切るんだったな……

 5歳の頃から9年間ずっと一緒に居てセリアスはメイドの事を、血の繋がっていない姉妹位に思っていたんだよな。

 メイドも凄く迷っていたけど、提示された金額が、普通の男爵家の総資産位の大金を積まれて、裏切る事を選んだったな……


 そしてそれを提案したのが、まさかの第3王子なんだよな……

 第3王子はセリアスに惚れて犯行に及ぶ。

 セリアスは純潔を腹違いの兄に奪われそうになった所をセリアスの事を溺愛している第2王女に助けられたんだっけか?


 そしてその後、メイドは処刑されて、第3王子は、王位継承権を剥奪れた後、激怒した国王により、王族から追放された。

 セリアスは大好きで信用していた人達に裏切られたショックで第2王女以外の人間を家族ですら信用しなくなったってストーリーだったな。


 んーでも詳しい詳細は語られて無かったから、大雑把でしか分からないんだよな……

 

 メイドの顔も分からないしな……何とかして助ける事が出来れば俺の評価も変わるんじゃないか?

 そうじゃ無くても助けたいし……

 確か誕生日の次の日……つまり明日だよな……


 ゲームでは誕生日パーティーは身内だけの小さな物だったが……

 同じ未来が待っているのか?


 『マーク』のスキルを使えれば楽なのだが、今は使用出来ないし……

 恐らく明日になれば魔法道具も魔力切れになって、俺の魔法やスキルが使えるだろうから、明日『隠密』魔法と『空間』魔法を使って上手く潜入するか……


 結局セリアスが『擬態』のスキルを使用した姿でここに来た理由も分からんし……考える事が多そうだな――


「ふぅー、そろそろ戻った方が良いか」

 

 結構な時間会場から離れていたからサーラが慌ててそうだしな――。



「――キース兄さま!!!」


 俺が会場に戻るとサーラが急いでこちらに寄って来た。


「すまん、ちょっと風に当たりたくなって外に出てたよ」

「そうなんですね……急にいなくなったので心配しましたよ」


 そう言って俺を見上げる形でじーっと俺の顔を見て来た。


「そうだな、すまん……」

「今度からこういう時は私に言ってからにして下さいね……いいですね……」

「は、はい……」


 そう言う、天使みたいに可愛いサーラなのだが、何故か逆らったらいけないような気がした……



 馬車を王都に預けて俺達は"空間転移"でグリッド家に帰って来た。


 明日は朝早くから王都に"空間転移"をして、『隠密』を利用してセリアスを探す。

 王都に居る理由としては……お父様に王都に遊びに行って来るとでも言っておこう……

 まぁ、怪訝に思われるだろうがな……


 セリアスには『マーク』を付けて置けばいいだろう……

 流石にずっと後を付けると気付かれてしまう可能性がある……

 なんせ、セリアス付きのメイドは護衛の役割もある為、かなり強かったはずだ。


 視界に入ってさえいれば『マーク』の対象に出来るから一瞬で大丈夫だ。

 ついでにメイドも『マーク』しておくか……いや、ステータスを見てから考えよう……

 『マーク』は自分よりレベルの高い人に付けると弾かれて気付かれてしまう。


「慎重に行かないとな……」

 

 よし、今日はもう寝ようか。

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