第14話 第4王女の誕生日パーティー(上)

 俺とサーラと父親は第4王女の誕生日パーティーに参加する為王都に来ていた。

 

 どうやら今回の誕生日パーティーは第4王女と同い年の子との交流がメインらしく、学園に入学する前に関わりを作る目的もあるらしいが……

 セリアスは実際には1学年下なのだが、今年『唯一属性』がセリアスの1つ上の代の人に現れる年だから、それに合わせて1年早く入学する事になる。


 なのでケイトやカールは来ていない。


 しかし王族の誕生日パーティーは5歳ごとにする決まりだ。

 その前提を覆してまで交流したいとは考えにくいが……

 それに、ある程度交流は既にあるはずだ……


「――じゃぁ、二人とも会場まで行くぞ」

「「はい!」」


 いよいよ転生してから初めてメインヒロインと会えるのか……

 会場に行ったら他の貴族の奴らにどんな目で見られるかは考えるまでも無いが、正直今はそんな事すらどうでも良いと思えている。

 

 そうして俺達は会場に入場した。


 ――会場に入ったら案の定視線を集める事になった。

 

 嫌悪の目を向ける者、俺が参加するとは思っていなかったのだろう驚愕している者、恐怖している者、様々な感情が読み取れる。

 前世の俺がこんな目で見られたら間違いなく怖かっただろう。

 しかし今の俺は全く気にもならない、それよりもっと頑張ろうとすら思えて来る。


 それよりサーラが心配だ。

 こんな視線を感じる事、サーラは今まで無かったはずだ……

 俺はそう思い隣に居るサーラの顔を見た。

 しかし全く気にしている感じでは無かった。


「キース兄さま、気にする必要ありませんからね」

「あぁ、俺は大丈夫」


 寧ろ俺が心配されていた……

 俺はこんな良い義妹が居て幸せだなと改めて感じた。


 父親が挨拶回りに行くと言い俺とサーラは付いて行く事になった。


「やぁ、ダルト!」


 そう言って父親に話しかけて来たのは、父親が学園に通って居る時からの親友のトレス・マーガレッドだ。


 『鑑定』を使ってステータスを確認したい所だけど、安全策の為に魔法道具か何かがあってスキルも魔法も使えない。


「おぉ、トレスか、久しいな」

「そうだな、1年振りくらいか?」

「前に王都に来た時だからその位だろう」

「おっと、子供たちも居るからを挨拶させよう、ミーヤ」


 そう言ってトレス様が娘に言った。


「はい、お父様、お久しぶりです、ダルト様、サーラ様、それから……キース様」


 ミーヤは俺の名前を呼ぶときにだけ、少し睨んでそう言った。

 それもそうだ……ミーヤは兄が家を継ぐので何処かに嫁に行く事になる。

 それで兄二人か俺に嫁がせようと父親どうしで話していたのだ。

 そして俺と年が同じだら俺にしようと言う事に去年までなっていたのだ。


 しかし俺はミーヤに会えばお尻を触ったり、適当に扱ったりしていたのだ。

 それに様々な悪評もあり、ミーヤの希望により婚約関係を解消したのだ。

 勿論俺はそれから会っていない。


 ゲームの世界でのミーヤは俺の元婚約者ってだけで周りから腫れ物扱いされて、新たな婚約者が全く出来ない上に、皆に嫌われていたせいで心が黒くなっていって、そこを【血濡れの黒衣】の第10席、ベル・フリートに揺さぶられて主人公に対立する存在になり命を落としてしまう……


 キース・グリッドのせいでそうなるのを知っていて、俺が放って置くのは気分が滅茶苦茶悪い。


「お久しぶりです、トレス様、そしてミーヤさん」


 俺はそう言いながら礼をした。

 するとトレス様とミーヤは驚いた顔になった。


「ははは、ダルトから手紙で聞いてはいたが、本当に随分変わったんだなキース君は」

「はい、以前は迷惑をおかけして、すいませんでした。トレス様、ミーヤさん」

「キース様、何を思っているのか分かりませんが、謝罪は要りません」


 ミーヤは無表情でそう言った。

 出来れば今後は仲良くしてい来たのだが……今は難しそうだな。

 ゆっくり変えていくしか無さそうだな。


「それじゃ、私も、お久しぶりです、トレス様、後。ミーヤ様」


 え?後って、サーラ?

 なんか怒ってないか?


「はは、サーラちゃんは更に美しくなったな」


 トレス様、も苦笑いしてるし……


「ありがとうございます。トレス様、でもミーヤ様もとても美しいと思いますよ」

「そうですか、ありがとうございます、サーラ様」


 何だろう……一見サーラがミーヤの事を褒めているのだけど……何故か棘をかんじるな……

 そしてミーヤは表情を全く崩さない。


「ははは、じゃあそろそろ違う所に挨拶に行こうか、キース、サーラ」


 お父様が気まずくなったのかそう言った。


「はい。お父様」

「それじゃ、失礼するよ、トレス」

「あ、あぁ」



 そう言って俺達はその場を去った。


「サーラ、一体どうしたんだ?」

「いえ、何でもありませんよ」

「とてもそうは見えなかったが……」

「強いて言うなら、キース兄さまに対する態度が気に障っただけです」


 そんな事を考えていたのか……


「サーラ、俺は大丈夫だ、それにミーヤはもっと俺に何かを言って良い位なんだし」

「そうですか、キース兄さまはミーヤ様と仲良くなりたいんですか?」

「どしてだ?」

「いえ、キース兄さまを見ていたらそんな感じがしたので……」


 え?うそ?

 そんな表に出して無かったと思うんだが……

 何でバレた?


「えっと、お父様がトレス様と仲が良いからそうした方が良いとは思ったな」

「まぁ、そう言う事にしておきますね」


 俺とサーラがそんな話をしていた時、お父様が居ないと思い辺りを見たら、誰かと話していた。


 ん!あれは!

 ヘルド・ララースだ!

 ゲームではあくどい事をしまくって、家族もろとも処刑された奴じゃないか。

 

 横領、誘拐、奴隷売買などをやったり、息子のマロト・ララースもそれに協力したり、自分より身分の低い女性に無理矢理迫ったりしていたな。


 俺キース・グリッドも色々な事をやっていたが、それ以上にヤバい奴らだ。

 息子のマロトが聖女のメリルに庶民だからと言って、手籠めにしようとして主人公トールにボコされてから家が没落しはじめたんだよな。


「どうも、サーラ嬢、ララース公爵家嫡男、マロト・ララースです」


 そんな声が横から聞こえて来た。

 そいつの顔を見ると明らかにサーラを狙っているような感じだった。


「そうですか、でも何故私だけなのしょうか?キース兄さまも居ますが?」


 それを聞いたマロトはこちらを見てニヤっと嘲笑った。

 同じ公爵家の人間でも、俺は三男で世間の評価は怠惰で傲慢で口だけの弱者だ。

 俺が転生する前は実際そうだったが今の俺はそうじゃ無い……

 正直こんな奴相手にするだけ無駄だ……だって何もしなくても近いうちに消える家なのだから。


「おっと、これは失礼今回は参加していたのですね、キースさん」

「んな!!!」


 あからさまな煽りにサーラが怒りそうなったが俺はサーラが話す前に口を開いた。


「はい、第4王女のセリアス様の誕生日パーティーと聞いてお祝いしたく参加しました」


 俺が笑顔でそう言うとマロトは舌打ちをして何処かに行った。

 恐らく俺が切れて問題を起こすのを待っていたのだろう……

 それを問題にしてサーラを手に入れる算段だったのだろうか……

 

 てかあいつ……手を出すのは自分より低い爵位の人だけじゃ無かったのか?

 まぁ、どうでも良いか……どうせサーラを渡す気なんて全く無いしな。

 しつこいなら俺が全力でララース家を潰せばいい……


 それにしてもサーラが怒って何か言う前に止められて良かったな……

 何かあればサーラだけじゃ無くグリッド家、丸ごと手に入れようとしてくるだろうからな……

 

「すみませんでした、キース兄さま……ついかっとなってしまって……」

「いや、大丈夫だ、俺の代わりに怒ってくれてありがとう」

「はい、これからは気を付けます……」

「あぁ、そうだな」


 俺はしょんぼりしていたサーラの頭を撫でた。

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