第12話 サーラ・グリッドの想い
★サーラ・グリッド(side)
私は1ヶ月前からキース兄さまを見張っています。
キース兄さまが変わったと思ってから暫く様子を見ていたのですが、メイドの人にお礼を言ったりと今屋敷でキース兄さまの事を悪く言う人は少ないです。
まぁ、過去の事は消えないので、まだ嫌ってる人も中にはいるのですが……
私はキース兄さまが外出する時に必ず見失ってしまいます……
何故でしょう、私の方がレベルが高いはずなのに簡単に撒かれてしまいます……
もしかしたら、キース兄さまは誰も見ていない所で努力していたのでしょうか?
それ以外だとキース兄さまの能力でそう言った物があるのでしょうか?
そう言えばキース兄さまもは『空間』属性がありましたね……それでしょうか……
今日こそは何をしているか掴もうと張り切っていたのですが、ケイト兄さまに絡まれてキース兄さまを見失ってしまいました。
私はセドリックならキース兄さまの行き先を知っているのではないかと思い聞いてみました。
そうしたらどうやらキース兄さまは今日、街に食べ歩きに行くと言っていたらしいです……
私は食べ歩き?と思いましたけど、それを聞いて直ぐに屋敷を出ました。
――屋敷を出て直ぐにキース兄さまを探そうとしました。
しかし探している途中誰かに頭を殴られて気絶してしまいました。
全く気配を感じませんでした……
――目を覚ましたら見知らぬ部屋にいました……
そこには30歳位の男性がいました。
私は一瞬で理解しました。
この人に攫われたのだと……
そして、私ではこの人には絶対に勝てないと……
私は何とかして情報が欲しいと思い話してみる事にしました。
「あなたは誰なんですか?何故私を?」
「ん?俺が誰かは別にどうでも良くね?君を誘拐した理由は魔王様に捧げる為さ」
私はそれを聞いて驚愕しました。
何故人間が魔王に?それに何で私?
私は焦っていたが深呼吸をして冷静になるようにしました。
「それで、何で私なんですか?それにその後はどうなるんですか?」
「んー魔王様曰く君は3人目の適応者らしいよ」
「適応者?」
「そう、魔王様の血を取り入れても死なないで魔族になれるんだって」
「魔族に!!!」
流石にそれを聞いて冷静を保つのは無理でした。
魔族になる位なら死んだ方がましだ……
「ふざけないでください!!何であなたは魔族の味方をしているんですか!!!」
「んーだって俺達は皆人間に恨みがあるからだよ、それに魔族に協力したら王都や帝都をくれるっていうからさ」
人間に恨み?それに王都や帝都を貰う?
そんな事が許される訳が無い……過去に何があったのかは知らないけど、そんな事になったら多くの死人が出てしまう……
「だからってそんな事が許される訳が……」
私が話していたら割り込んで男が話し出した。
「うるさいな……お前は適応者だから殺せないけど、言う事を聞かないなら痛めつける事位しても良いって言われてるんだぞ?」
「そんな事で怯む訳が無いです!!」
「はぁーめんどくせーな、少し遊んでやるか」
私のレベルは37なので勝てない事は分かっています……でもこのまま魔王の所に連れて行かれる位なら戦います。
男は私を弱いと思っているのでしょう、特に手足が縛ってある訳でもありませんでした。
私は最初から全力で攻撃をしました。
しかし全く攻撃が男には届いていません。
何かのスキルでしょうか?いや考えても無駄ですね……
スキルにしろ魔法にしろ聞いた事がありません
それから私は攻撃を何回もしたのですが、男はずっとニヤニヤして余裕そうでした。
そして男に手加減をされながら殴られ続けました。
私の攻撃は全く通じない……男からしたら遊んでいるだけなんだ。
私はそう思い諦めかけた時に思いました。
キース兄さまとちゃんと話しておけば良かったと……
ここ最近はキース兄さまに話しかけられた時。まだ話しづらくて逃げてしまいました。
最後の最後で思い出すのはキース兄さまなのですね……
私はその時自覚しました。
私は想像以上にキース兄さまの事が好きだったのだと……
男が私に向かって大きく手を振りかぶって殴ろうとした時の事でした。
「空間転移――」
そう聞こえて目の前にキース兄さまが現れました……
何で?どうしてここに?
そしてキース兄さまがまた"空間転移"を使いました。
キース兄さまが『空間』属性持ちなのは割と有名でした。
普通は自分のステータスを人に教える事はしないのですが、キース兄さまは『希少属性』と言う事で自慢しまくっていたのです。
キース兄さまが再び"空間転移"を使いました。
私は助かったと思いました……でも転移しても同じ部屋でした。
キース兄さまも凄くびっくりしていました。
どうやら男のスキル『結界』と言う物らしいです。
聞いた事のないスキルでしたが、"空間転移"を無効化出来るなら相当ランクの高いスキルなのでしょう……
それを知って私は私のせいでキース兄さまが捕まってしまうと思い、逃げられる訳無いのに遂逃げてと言っていました。
キース兄さまはそれを聞いて凄く優しい声で大丈夫と言ってくれました。
私はその声を聞いて昔のキース兄さまを思い出しました。
ピンチなのは変わっていないけどそれを聞いて凄く安心しました。
キース兄さまは男と戦っていました。
ですがやはり手も足も出ていません……
キース兄さまは私より強い事が分かりましたが、男からしたら大差ないのでしょう……
凄く余裕そうにしていました。
キース兄さまは突然覚悟を決めたような顔になり、強化魔法ほ自身にかけました。
強化魔法の重ね掛けは難易度が高い上に体の負荷が大きい……二重でもそうなのに……三重掛けなんて出来る訳……
私はそう思っていたのですがキース兄さまは三重掛けで動けていました……
その後は一方的でした……キース兄さまの魔法が男の首を跳ねました。
キース兄さまはもう大丈夫と言ってこちらに歩いて来て私の前で倒れました。
私は凄く焦りました……キース兄さまは無理をして死んでしまったのではないかと……
強化魔法を三重掛けなんて体に反動が無い訳ありません……
私はキース兄さまの名前を何回も叫んで心臓が動いているか確認しました。
幸い心臓は動いていてほっとしましたが、早く連れて帰らないとと思いキース兄さま背負いました。
キース兄さまは私より全然大きいので少し大変でしたが、私は意地でも急いで帰りました。
家に着いたらセドリックを呼びました。
セドリックは凄く慌てていました。
その後お父様が来て私を抱きしめてくれました。
そしてお父様はキース兄さまを見て珍しく動揺していました。
マーラ様は余り興味が無かったようで全く顔を出しませんでした。
私はお父様とセドリックに何があったのか説明しました。
2人は驚いていました。
私が適応者で狙われた事、キース兄さまが『結界』というSランクスキルを持った敵に勝った事を。
お父様は死体を回収して鑑定にかけました。
そこで私達はさらに驚きました。
男の名前はライ・ドワンスでレベルが100だったからです……
キース兄さまのレベルは私達には分かりません……
この世界では、本当に信頼している人でなければ基本自分のステータスを教える事は無いからです。
私は4日間ずっとキース兄さまのそばに居ました……
早く目覚めて欲しい……話したい……謝りたい……お礼を言いたい……
そんな思いでした。
私が部屋で食事をしていた時、セドリックからキース兄さまが目覚めたと言われました、
私は居ても立っても居られなくなって走りだしました。
キース兄の部屋に入ると、キース兄さまがベッドの上で座っていました。
私は思いっきりキース兄さまに抱き着いて泣いてしまいました。
キース兄さまはそんな私の頭を優しく撫でてくれました。
凄く安心する……目覚めて良かった……助けてくれてありがとうございます……危険な目に合わせてごめんなさい……
これからはずっとキース兄さまの傍にいます……大好きです……
私はそんな事を思いながら眠りに着いていました……
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