第6話 一過性のマインドソウル
「2021年7月15日午前7時」
俺は不意に目が覚めた。
目覚めて暫くはボーっとしていたが俺は、昨日のあれを思い出した。やはり、すべて夢だと思いたい。
ただの悪い夢だと。悪夢だと。そう無理な事を信じないとマジで精神が全く持たない。
いや、でもそうだ。
きっとそうだ。
夢なら学校にいつも通りな筈だ。きっと学校に行けば皆んなが居るはず.....。
そうやってすぐに自分自身を騙そうとするが、やはりいつも通りの朝とは違う。
いつもならサラサラ食べられるような朝ご飯が、いつもに増して重量が重く、全く味がしない。
てか、全然ご飯を食べる気になれない。
喉につっかえる様な感覚がしてまともに食べれない。
皮肉なことに、食事が喉に通らないとはまさにこの事である、と言うのを体験している。
俺はそうして、ちょっとした罪悪感に包まれながらも、母が作ってくれた、朝ご飯を少し残してしまった。
正直、もう学校に行く意欲すら湧かなかった。俺の唯一の親友を失った俺に、学校に、一体何がある?
でも俺は重い足をなんとか引きずって学校に向かった。
ほんと、荷が重い。
「はぁ、荷も何も無いのに、やたら重いな。俺のカバンに米でも詰まってんのか?はは。」
よくわからないことをぶつくさ言いながら俺は教室に入った。
俺は教室内を見渡した。
あるはずのない希望を胸に抱き。
するとなんと、驚くべきことが起きた。俺が見渡した先には、高見が平然といた。
俺は正直かなり驚いた。
夢かもしれないと疑ったが、目を擦っても、ほっぺをつねっても、自分を思いっきりビンタしても痛い。
いってぇ。
俺は大いに安心した。
やはり、俺は正しかった。
「はは、ははは、やっぱり悪い夢だったんだ。そうだ、そうだ、その筈だ。だって高見は今生きている。生きている。今が現実だから安心だ。はははは、何の心配だったんだ....」
「カズくん、急にどうしたの?」
俺に話しかけてきたのは、沖橋 早苗だ。昨日、高見の騒動の時に、主に言い合いした張本人であった。
いやはや、つい嬉し過ぎて声に出てしまってたのか後々冷静になって見ると少し恥ずかしいな。
「な、なんでもないよ。朝、少しだけ良い事があっただけさ。気にしなくて良い。」
「そう......なら良いんだけど。」
暫くは不思議そうにしていた沖橋も暫くすると何処かへ消えていた。
それにしてもなんか、昨日の夢はやけにリアルだったな。ニュースとかで知る感じとか、かなりそれっぽいシチュエーションでマジで焦ったぜ。
俺が、さっきまでコレを夢じゃないと勘違いした事が恥ずかしいぜ。
うむ、うむ。
奴らも此処に無事、全員居ることだし、俺は早速気持ちを切り替えて授業に臨んだ。
さっきまでズタボロに切り刻まれた、メンタルは見事なまでに、完全に、完璧に回復した。
いや、夢は本当に侮れないほど恐ろしいな。夢で良かったと思えて良かった。
でも、せめて夢を見るならこんな悪夢じゃなくて、もっと縁起が良い夢にしてよ。
そしてまるで昨日の様に、ぐうぐうお腹がすいた頃、3時間目が終わり、休み時間が訪れた。
俺が教室で静かにライトノベルを読んでいるところに、高見がこちらに話しかけて来た。
不本意ながらこの時少し、デジャブと言うものを感じてしまった。
「なあ、知ってるか?カズ。最近話題の妙な噂を。」
「はあ?」
「いや、だから噂話だよ。いやね、その噂話によるとこの近くの廃病院にちりょ女の霊が出るって噂。ほんでな、今日何人かで肝試しに行くつもりなんだけど、どうかな?ん?なあ、俺の話、聞いてるか?」
「ん?ああ、うん.....聞いてるよ。心霊スポットか、まあちょっと俺は遠慮しておくよ、なんか色々疲れているし。」
「おっ、そうか.....それは残念だな。まあ、またそっち系の気分になったらいつでも俺に話しかけろよな。いつでも待ってるから。」
さっきの会話、何処かで話した事がある気がする。
これは、デジャヴとでも言うのか。
なんだかわからないが、昨日の悪夢の展開と全く同じだ。
大丈夫か、いや、でも所詮は夢だ。
夢だったんだ。
きっと大丈夫な筈。
きっと偶然だ。
そうだ、その筈さ。
こうも、色々考えていると1日というのはあっという間に時間が過ぎる。
学校が終わり日が暮れた帰り道、俺はいつもの自販機でジュースを買った。
そしたら夢の時の様同じ数字で当たった。
いや、おかしい、おかしい、おかしい、さっきから明らかに夢と同じ事が立て続けに起こっているじゃないか。
やっぱりおかしかったんだ、高見の噂話に、自販機のジュース、昨日と同じ時間割り、というか今日、何曜日だ.....。
そんな2日連続で99分の1なんてほぼ当たらないし。
嘘だろ、ってことはまさか!!
まさか、と思い俺は急いで帰宅してニュースを見た。
俺はただひたすらに、いつも通り、何も無いことを期待したが、現実はかなり残酷なものだった。
テレビに映し出されていた情報、それは高見の死を伝えるニュースだった。
俺は混乱した。
今度は高見の死を悲しむよりも先に混乱した。
何故だ?ほんとに、訳がわからないよ。
.....昨日見た夢と全く同じだ。
いや、きっとこれも悪い悪夢だ。
寝たら明日も元通りになっているはずだ。
その後俺は何かに流されるかの様に、ベッドに行きそのまま眠った。
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