第3話 真実性のメンタリズム3

「おい、なあ、なあ、知ってるか?カズ。最近話題の妙な噂を。」


「. . .はあ?」


 3時間目が終わった後の休み時間、そろそろクラスメイトの皆のお腹がぐーぐー鳴って仕方がない頃、急に何かを思い出しかのように高見が話しかけて来やがった。

 かなり眼をキラつかせているから多分、思春期の男子らしいクッソ、ろくでもない話なんだろな。

 キラッキラだ。

 気持ち悪い。

 ただ、最近話題の噂ばなしって、いったいなんだろう な。

 たとえばあの清楚系なクライスメイトは実は結構裏で喰っていたりそんな系の話かな?

 それとも、都市伝説的な話なのかな。

 まあとにかく手短に済ませてほしいぜ。

 アイツはとにかく話が長い、手短に話せないタイプだからな。

 俺が短い休み時間の間に行くトイレに間に合わなくなる。


「ふっ、なんだそれ。また、都市伝説的な、或いは、オカルティックな噂話か?。それなら俺は別に興味はないね。あいにく、オカルト系な話は専門外なんでな。そんじゃあ。」


 しかし、高見は直ぐに首を横に振った。どうやら俺の浅い予想は呆気なく外れたらしい。

 俺はてっきり、高見の事だからそうだと思っていた。なんか、予想を大いに外したからかなり恥ずかしい。自信満々に言ってから外すのはかなり赤裸々となる。

 


「ストーップ。違う、違う。ん~まあ、確かにちょっと都市伝説臭いことはあるけど、噂話ってそんなものだろ。」


「そうか?」


「そうだよ。」


 まあ、でもこの気色の悪いテンションは本当にろくでもない話だな。平日だと言うのにこうもハイテンションなのは少しばかり尊敬するね。


「で?なんなんだ?」


「そんでなその噂はな、最近聞いたんだけども、学校の近くに結構前から潰れた廃病院あるだろ。」


「ああ、あるけど......それが一体全体どうしたっていうんだ?」


「そこにな、なななんとな、女の霊が出るらしい。ドロンとな。」


 ほう、女の霊ねぇー。


「なんじゃそりゃ。まあでもたしかに、あんなに古くて怖い見た目の建物だから、霊の1人や2人はいてもおかしくないだろうね。まあ、俺は全然怖くないけど。」


 本当は俺、結構そういうの怖いけどね!!


「いやぁ、幽霊って可愛いのかな?可愛いのなら是非俺に色々ぴーなことして貰いたいなぁ。」


「そのピーっての、やめろ。」


「実は幽霊は満更でもなく.....」


「妄想、乙」


「ん、まあ、そんでな、今日授業が終わった後さ、他何人かも一緒に肝試しに行こうかと思ってんだよ。どうやら隣のクラスのやつが視察に行った時、廃病院の中に入れる道があったらしい。未開の心霊スポットとか、多分めちゃくちゃ面白いぞー。なんだって、みんなで行くからな。どうだ?お前も行くか?皆んな来るぞー。どんな怖い場所でも100人くれば大丈夫‼︎」


 コイツはそう言い、親指をピンと立てる。

 ああ、そういえばこいつに俺が幽霊などのこの目に基本的に見えない、霊的な怖いものが物凄く苦手なことを、まったく伝えてなかった。

 俺は夜中に心霊番組なんて見たらそのまま夜が明けるまで寝れなくなるタイプだからな。

 股ガクガクでゆっくりトイレに行く羽目になって結局自分がたてた足の物音で失禁、もしくは失神する。

 しかも不幸な事にそれをお母さんに見られてさらに死んだ。

 お母さんには、


「あっ、コイツとうとうやりやがったな。」


と言わんばかりの視線を送られてかなり冷や汗をかいたことがある。

 本当に、自分からホラー映画を見に行くような奴の気がしれない。

 俺からしたら自分から谷底に向かって死ににいくようなものだぞ。

 でもな、怖いからって断るのは嫌だから適当な理由で断ることにした。その場凌ぎだ。

 まあ、多分コイツにゃまったくバレないだろう。


「いやぁーすまんすまん、今日俺ちょっと課題が溜まっていて明日中に出さないと本当にヤバいんだよ。だから今日は家帰って全力疾走でやらないといけないんだ。いやぁ、多分だったけど夏休み中ぐらいの量あるからなぁー。行きたい気持ちは超山々なんだけどなぁー、これ以上俺の点数を落とせんからかな...本当にすまんな。」


 勿論課題もキチンと全て終わらせているし、点数も言うて悪くも無いしどっちかと言うと全然ふつう、普通。

 寧ろ、自分でもこれ以上普通なことがあるかってくらいだ。

 勿論のこと、赤点なんかもってのほかだ。

 留年については、本当は全くもって心配事はない。

 まぁ、俺は高見によくある嘘をついた。

 というか俺が廃墟に行きたくないための言い訳だ。

 いやぁ、本当にすまんな高見よ。

 俺をそんな所に連れて行くと惨めに失禁するぞ。

 広範囲にわたって被害が拡大するぞ。

 俺はさすがにそんな醜態をクラスメイトに晒すわけにはいかないんだ。


「えっ、お前ってそんなにギリギリだっけ?別に普通なイメージがあるけど」


「いや、マジ。おおまじだ。」


「そうかー。お前が来れないのは、とても残念だなー。でも、確かに一年生で留年はまずいよなぁ。」


「そうそう、結構やばいんだ。もう、全教科赤点。ガチガチに進学不可。」


「うん、そんじゃあ明日肝試しに行った時の感想だけでもお前に伝えるわ。まあ、お前は家で勉強しながら楽しみに待っとけ。」


「おう、これから楽しみに待ってやる。チビった様なある意味での恐怖の話をな」


 そしてそのあと、ひとつ要件も済ました高見は多分、トイレしに行った。


「ふぅ、なんとか理由付けて断れてよかった。いかんせん面倒くさいからな。」


 と内心で一人喜ぶ俺。

 そして高見の友達としてはかなり最低な俺ではあるものの、無理なものは無理なんだ。

 すまんな高見。

 でも仕方ないんだ。

 俺は怖いものを断るのには何一つ手段は選ばない。ってか行くなら、俺巻き込まずに1人で行け。俺もそこまでは付き合い切れないぞ。

 頼むから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る