第2話 真実性のメンタリズム2
この奇人高見とは実に、小学生以来の付き合いだ。たまたま同じクラスに居ただけで何となーく仲良くなっていたような不思議な奴だ。
まあ、総合的に見れば一応良いやつではあるんだが、ちょっとばかし野蛮な一面もある。
昔から田んぼに大事な私服のまんま飛び込むくらいだからな。
よくもそんな事ができるなぁ、って事をコイツは平然とやってのける、という尊敬できそうでギリ尊敬できない特技を持ち合わせている。
まあ、かなり悪く言えば人間としての尊厳を少し失いかけていると言った方が正しいのかもしれない。
まあ、つまりいえばアホだ。
そして、一時間目が始まる前のホームルーム、担任が何処かに行ったタイミングを計らったかのように高見が大声を上げる。
「おい、女子ども。パンツ見せろよ!」
この声が教室を響き渡ると、たちまち沈黙の嵐が舞い降りてきたのであった。まるで、大型台風が通り過ぎたかの様な静けさだ。
そう、奴は俺が言った通り、言葉通りのバカだ。バカというか、一歩間違えれば犯罪級な気もする。セクハラってやつなのかな。
まず、そもそも朝のホームルームに女子の新鮮なパンツがどうしても見たい!って事にはまずならないし、それをみせろよ!という事も恐らく無いはずだ。
多分彼は大切な自分を制御するネジが何本かぶっ飛んでいるんであろう。外れているどころか、頭ひとつ抜けている。
「はぁ?」
女子達は明らかに呆れきった顔で言う。最早、分かりきった反応だ。
こちら健全男子チーム、女子達の今のお気持ち、お察しします。
「パンツ占いだよー。パンツ占い。まさか、しらねぇのか?パンツ占いのこと!!」
しらねぇよ。
誰が知ってるんだそりゃ。
「は?なに?それ」
そうなるのも無理はないよ。俺だって分からないからな。
「はぁっー。しゃぁねぇな。そんじゃ俺様がパンツ占いの詳細について語ってやろう」
おいおい。放置してたら一人でなんか始めやがったぞ。
まさか、こいつ。このままパンツ占いの事について永遠語るつもりじゃ無いだろうな。
「まず、単色カラーの場合はその日の運勢は普通!!だが、リボンなどの装飾品が付いていたならば話は別!!俺の運勢は鰻登りに上昇する。さらに、大当たりはイチゴ柄だ。イチゴ柄のパンツを見た日にゃもう、その日どんな厄災が舞い降りた所で屈する気も起きないぜ。」
なるほど。コイツは一体朝から長々と何をいっているのであろうか。前々から気が狂ってるとは思っていたが、ここまでだとは。
「だが、パンツ占いのたまにある弊害。スパッツを履いているという行為そのものは残念ながら凶となっている。そうなればその日一日中寝込むって所じゃ無いぜ。」
スパッツはスパッツでもそれはそれで良いだろう。わがままを言うな。
「まあ、そういう訳で吟味させてもらうぜ。ウヒョー!!」
「あんたの自論なんて知るか、ボケェ」
女子は見て分かるとは思うが、早朝とは思えない程に激昂してる。
まあ、確かに、俺にとっては全くいってその通りである。そんな事になる気持ちもわかる。
そして、クソほど笑顔な高見に女子が恐らく全力級であろう、ボディブローをもろにくらわせた。
高見がそれを受けた瞬間は少し嬉しそうにはしていたものの、その3秒後にはすごい顔へと変わっていった。天国から地獄へと移り変わる瞬間をこの目で目撃してしまったのであった。
「ぐわぁー。」
あちゃー、こりゃ痛そうなボディブローが入ったもんだな。高見は予想通り痛そうにその場をうずくまっている。
「ひ、ひでぇな沖橋。ちょっとパンツ見せてくれたら良かったのに。なにも、朝っぱらからボディーブローかましてくる必要なんて無いだろ」
「うるさいバカ。お前が朝っぱらから変なこと言うからだろ。この変態魔神め。」
変態魔人とはよく言ったものだ。これほど、高見を現すのに、適切な表現はこの世に転がってなどはいないであろうからな。
「な、何をー。別にパンツのひとつぐらい見せてくれても良いよなぁ。減るもんじゃ無いんだから。なあ、そう思うよな、カズ。」
思わず条件反射で耳がピーンとなった。
なんだって。まさか、俺を巻き添いにしやがったか?俺も悪役にしやがったか。
冗談じゃないぜ。高見にはちょっとばかし、頭を冷やしてもらわないと困る。
「はい?何言ってんだ高見」
コイツ、俺を責任転嫁の対象にした。こんな振りされたら俺も同類or仲間だと思われるだろうがァァァァ。
「な?お前も、男だ......そう思うだろ。」
「......いや、悪いな高見。俺からはちょっと、ノーコメントで。」
俺的には中々ナイスな回避方法をしたつもりだったが、俺もまとめて高見と同じ様に変な目で女子に見られた。
......高見戦犯だな。こりゃ。
勿論釈明しておくが、俺自身は全くそんな事思ってもいないし、考えてもいない。言わば、巻き込まれ事故。そう、巻き込まれ事故なのである。
あっそうだ、後で高見を新品の缶コーヒーでぶん殴ろう。
つーか、あいつに奢らせよ。
そして、授業の開始を伝えるチャイムが鳴った。
無事、授業も始まりまあまあ地獄な雰囲気の中、今日という1日が始まる。
ただ、一時間目に数学を配置したやつは恐らくバカであろう。
なんで一番頭が回らないタイミングに一番頭を使うであろう数学を持ってくるのか?
バカなの?死ぬの?
ただ、数学とは別に短縮授業を考えた人は全然死ななくてヨシ。
そして、数学教師の牧田は黒板に文字を書き、今にも誰かを当てようとしている。
この予兆が現れた頃、周囲に緊張が走る。何故ならこの式の答えが全然わからないからだ。
一応僕も頑張って解いてみたんだが.....これがまた全然で。とにかく、どう頑張っても答えが小数点になる事だけは理解したつもりではある。
「それじゃあ今教えたこの式を.....うーむ、じゃあ、高見。お前、解いてみろ。」
数学教師に名指しで当てられたのは他の誰でも無い。アホ代表で名高い高見だ。
高見は残念な事に元から頭が悪いが数学は特にずば抜けてやばいので当然解けやしない筈だが。
「フッフッフッ、それ俺に聞いちゃいます?ズバリ、、、よくわからないけど、、、恐らく答えは3だ!!」
何故三桁毎の計算なのに3が出てきなのかは不明だが、恐らく間違っているであろう。皆は心の中で『んな訳ない』って思っているだろうね。
周囲に沈黙が起きる。
そして、教師が口を開く。
「高見......お前、スゲェな正解だ。」
うん、うん、やっぱり不正解だよね。高見が合ってるはず......え?なんだって。
「え、ほんとすか?やったー。」
高見は分かりやすく子どもの様に喜んでいた。まあ、凄いことではあるけど、、、マグレだろ。
「いやぁー、まさかノートすら板書してないお前がこんな問題解けるなんてなー。」
つか、こんなことジョークじゃなくて、本当に現実にあるんだな。
多分、高見の事だから3と言ったのは適当だと思うが、それにしてとすごく無駄な運を使ったな。
おいおい、アイツ死ぬわ。
それにしてもなんで答えが3なんだろう。俺はいくら解いても小数点が付き纏うけども。
しかし、その後色々見てみたがその答えが分かることは無かった。
勿論、そのままの状態でテストを受け、点が減ったのは言うまでもない。
そして、憂鬱な一時間目もあっという間に過ぎ、今度の授業はまたまた朝方には向いていない教科、【国語】だ。
この授業、なんと驚くべき事に俺と高見以外全員寝ていた。もはやそれは死んでるんじゃ無いのかと思うレベルで皆が皆うつ伏せになって分かりやすく寝ていた。
しかも途中から高見もそれに気が付いたらその大衆に紛れてこっそりふっ、と寝ていた。
まあ、そういう事でこの授業は睡眠学習だったわけなので特に触れるような事も無いので省略だ。
だが、教師よ。
悪いな俺もその後、寝たんだ。
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