第41話 セリスとカフェ?デート


「なんというか……色々とすごいなここ……」

「はい、VIPルームですからね。他の部屋は完全個室なだけですが、ここは完全防音な上に、様々なオプションもあるみたいですよ」



 驚きの声をあげていると、セリスが解説してくれるがろくに頭にはいってこなかった。それも無理はないだろう。

 この部屋には何やら不思議なお香が焚かれており、真ん中にはやたら豪華なテーブルと二人掛けのソファーがあるのはいい。オシャレなカフェらしいからね。

 だけど、なぜか大きなベッドがあるんだけど!! おかしくない? なんでカフェにベッドがあるんだよ!! 飯食ったあとにお昼寝でもするのかよ?

 脳内でさんざんツッコミこそしていると、申し訳なさそうな顔をしているセリスがこちらを見つめているにに気づく。



「ファントムお兄様……もしかして、気に入りませんでしたか?」

「え、いや、そんなことないよ。珍しいカフェだなぁって驚いていただけだって。何か注文しようか?」



 あまり街を探索するのになれていない彼女が一生懸命探してくれたのだ。ならば精一杯楽しもうとメニューを開いたのだが……



「あ、このラブラブパンケーキって美味しそうですね。小さいハートのパンケーキに何クリームがたっぷりのっているみたいです」

「あ、ああ。そうだね……」



 嬉々としてメニューを見つめているセリスだったが俺は他のメニューも含めて唖然としていた。

 セリスのさしているパンケーキは『交互に二人で食べさせあうことによって仲が深まります』とか書いてあるし、ドリンクとかもなぜか大きいコップにハート型になっている二人用のストローがさされたものがあるだけだ。

 これって恋人や両片思いの人間が来るところじゃん。



 そういえば前世の広告には『次回作にはよりヒロインと親密にできるイベントが実装!!』 とかあった気がする。好感度がマックスだとサプライズもあるよとか……



「なあ、セリス……ここはさすがに……」

「あ、このジュースも美味しそうですよ!! 以前噂できいてずっといファントムお兄様と行ってみたかったんです。」



 楽しそうに満面の笑みを浮かべる彼女を見て、出ようなどとは言えるはずもない。


 彼女は俺を兄と慕ってくれて、心を開いて連れてきたのだ。ならば変な風に思うのは失礼だろう。

 そう、アンジェと一緒にいくような感じでいいのである。



「任せろ!! じゃあ、このラブラブパンケーキと、恋人たちの休日ってドリンクを頼むぞ」

「はい!! 楽しみです」



 そうして、やけくそ気味になった俺は店員を呼んで注文をするのだった。





「では、さっそくいただきましょうか、ファントムお兄様。はい、あーん」

「あ、ああ……」


 テーブルに並べられたパンケーキを目の前にしているのだが……距離が近い近い近い!! 二人掛けのわりに狭いソファーにすわっているから膝と膝がぶあつかりあっている。

 祈りを終えたセリスがフォークに刺したパンケーキをこちらに差し出してきているので口にすると可愛らしいほほ笑んだ。



「美味しそうに食べていただけてよかったです」



 無理だぁぁぁ。なんかむっちゃよい匂いがするし、おっぱい当たりそうになってるし、こんなの意識しちゃうじゃん。

 しかも、セリスの胸元のボタンはいつの間にか開けられており、色白く豊かな谷間がのぞいているのだ。

 俺は冷静になるために『恋人たちの休日』とやらに口をつける。なんだろう、よけいムラムラしてきた気がするんだけど。



「うう……セリスは妹……セリスは妹……」

「うふふ、効果はあったようですね。もっと意識させないと……」

「ん、何かいった?」

「いえ、何も。それよりも私にもやっていただけますか?」



 必死に自己暗示をかけているとセリスが『計画通り』とでも言いそうな笑みを浮かべていたような気がしたが気のせいだったのだろうか?


 いや、穏やかな聖女として有名な彼女がそんな顔をするはずがないだろう。


 とりあえず彼女のためにとフォークでパンケーキをさして、そのまま運ぶと本当に幸せそうな笑顔を浮かべ形の良い口で食べる。



「ふふ、ファントムお兄様に食べさせていただくと、より美味しいですね。いつもこうしていただきたいです」

「味は変わらないと思うけどな……口元にクリームがついているぞ」

「それは失礼しました。その……拭いていただけますか?」

「今日はやたらと甘えてくるなぁ……」



 可愛らしいおねだりにするセリスに微笑ましく思いながらハンカチを取り出そうとして気づく。

 上目づかいでこちらに唇を突き出してくるその姿はまるでキスをまっているかのようで……

 胸がドキドキとしてしまう。



「セリス、俺以外にはそういうお願いはしない方がいいぞ。変な誤解をされちゃうからね」

「どうしました、ファントムお兄様、顔が赤いですよ?」



 俺の質問には答えずにクスリと笑うセリスからは先ほどまでのおしとやかさは消え、どこか淫靡に見えてしまう。



「気分がすぐれないようでしたらお水でも……きゃっ」



 慌てていたのか、お通しとして渡された果実水を俺にのませようとしたがこぼしてしまったようだ。



「おい、大丈夫か……うおおおお?」



 ハンカチで彼女の服を拭こうとするも、ちょうど胸元らへんがぬれてしまい、いつもの法衣とは違い生地が薄いためか、黒い下着が透けてしまっている。


 でっか!! そして、えっろ!!


 聖女なのに黒い下着というのがギャップがエロいし、そもそも巨乳がエロい。じゃなかった!!



「大丈夫か、火魔法は……使えないな。とりあえずこのハンカチで拭いた方がいいよ。俺は店員を……セリス?」

「大丈夫ですよ、ファントムお兄様……ここはVIPルームですからそういう場合の備えもあるんです」

「え?」



 セリスがにっこりとほほ笑んで机の上にある水晶に触れるとゴゴゴと壁が動いて隠されたスペースがあらわになった。

 そこにあるのは……



「風呂じゃん!! もう、ここラブホじゃん。絶対そういうことする場所じゃん!! そんな気はしてたけどさぁぁぁ!! ここから出るよ。このままじゃ、俺は俺でいられなくなってしまう」

「ファントムお兄様……いえ、ファントム様。あなたが追放された時にヨーゼフから聞かされた私の言葉を覚えていらっしゃいますか?」

「え、それは……」



 もちろん、覚えている。俺を兄だと思ったことはないと…そう言っていた。待てよ、エレナの言葉も誤解だった。

 ならば彼女の本心は……



「そうです。私は本当はあなたを兄と思ってなどいません。そもそも、私は誰にでもこんなことをしたりはしません。あなただからこそ頑張ってこんなはしたないこともしているんですよ? その意味をわかっていただけますか?」



 セリスの俺を掴んでいる手が震えているのがわかる。その姿に彼女の体を抱きしめその先にいきたい感覚に襲われる。

 そして、俺が彼女の体を……



「やっとみつけましたぁぁぁ。セリスさん!! 神に誓った翌日に何をやっているんですか!!」

「おお、この部屋魔力がこもってやがるなぁ。このお香サキュバスの体臭をつかってやがる。人間は色々と考えるなぁ」

「ちっ」



 乱暴に扉を開けられたかと思うと、怒った顔のティアと遊園地に来たみたいに楽しんでいるアモンが入ってきた。

 ていうか、セリス、今舌打ちしなかった?



「ちょっと失礼します。聖なる目つぶし(セイクリッド目つぶし)」

「にぎゃぁぁぁぁ!!」



 胸元を抑えたセリスが神の力が宿った右手でアモンの目をつぶしたのだ。いきなりの攻撃に目を抑えて地面に転がるアモン。



「アモーン!! え、なにやってんの?」

「魔族とはいえ男性に下着をみられるのは抵抗がったのでつい……私は肌を晒す相手は生涯に一人の決めておりますので」



 悶えているアモンには興味なさそうに、すました顔で答えるセリスに今度はティアがくってかかる。



「昨日の誘惑しない。薬をもらないって誓ったのはどういうことですか。たしかこのドリンクって媚薬効果がありましたよね?」

「おや、誓いは破っておりませんよ。これはたまたま水をこぼしてしまっただけですし、その薬やお香も私ではなく、お店の方がやっただけですから」



 何やら言い合っている二人を見て思う。あれ、セリスって結構裏表があるんじゃ……と。

 そして、うぬぼれでなければ彼女も俺のことを好きなのではないだろうかと……だったら余計ちゃんと答えを出さなきゃなと思うのだった。

 それはさておきだ……



「アモン大丈夫か?」

「ああ、問題ないぜぇ。すぐに治るからなぁ。だけど、残念だなぁ……俺に目つぶししてくれたのがティアだったら最高なのに……」

「……きっしょ」



 満面の笑みを浮かべるアモンに思わず本音が出た。このメンバーでオセを倒せるか一気に不安になってきたんだけど。




★★


 アンリエッタは王城からの連絡用の魔道具を前に険しい顔で座っていた。


『多少は気分がよくなったようだな。カイン様が果物を送ったようだが届いたかな?』

「今回の戦いで頑張った部下たちぶ分け合いました。ありがとうございますとお伝えください」



 耳にもしたくないヨーゼフの言葉になんとか平静を保って答える。ちなみにカインからのお見舞いの品には手紙もついていたがきもいことがかいてあったので破り捨てた。



『まあいい。魔王殺しの英雄アンリエッタよ。お前にはもうひと働きしてもらう。一度王城にきてもらおう。そこで対魔族用の会議をする」

「……それは……」


 ヨーゼフの言葉にどうすべきか言葉が出てこない。なぜならば……



『あの魔族は人間に害をなしにきたんじゃないんだよ。王国にいる裏切り者を捕らえに来たんだ。話だけでも聞いて……』


 彼が……ファントム言っていたことが頭をよぎったからだ。だが、続く言葉で頷くことしかできなくなる。



『アンジェ=ペイルの屋敷に奇妙な客が訪れていたと聞く。その件について調べてもいいんだぞ。もしも……魔族をかくまっていたら廃嫡だがな』

「……何の話かはわかりません。ですが、王国の人間として対魔族会議参加させていただきます」

『うむ。いい返事だ。それでは待っているぞ。なるべく急ぐことだな』



 通信が切れたのを確認して大きくため息をつくと、アンリエッタはアンジェからもらった手紙をもう一度読む。



「ファントムが生きていたのは良かった……だけど、私はどうすればいいの? また戦わなきゃいけないのかしら?」



 証拠隠滅のためにも手紙を切り刻み神の光で燃やす。そして、陰鬱な気持ちのまま王城へ向かう準備をするのだった。





★★★


 部屋にはサキュバスのお香。

 ジュースには媚薬。

 パンケーキには精力増大の薬草が使われています。


 ゲームでは仲間(同性キャラもオッケー)と共に過ごすことにより好感度が上がります。

 好感度マックスになると、特別イベントが発生して水着でイチャイチャしたりする感じです。

 

 

 



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