少しだけ怖い話
華川とうふ
鍵のないアパートのはなし
あれは少し前の話になる。
大家さんがすぐ下に住むという初めの一人暮らしにピッタリにアパートから引っ越して、近くにドン・キホーテともう一つ地元密着型のスーパーがあるというアパートに引っ越したときのこと。
ちょっとした手続きの行き違いにより、私は引っ越しの荷物の搬入に立ち会うことができなかった。
母親に甘えて、昼間の引っ越し業者の対応をまかせ、いざアパートの部屋に帰ってくる。
前よりも広く、大家さんの目もない、やっと本当の一人暮らし。
そう喜んでいた。
ただ一つの違和感に気づかず。
母は昼間だけ対応して帰ったはずなのに、トイレのドアの鍵がかかっているのだ。
誰もいないはずのアパートの部屋。
鍵のかかったトイレのドア。
私は恐ろしさに気づき、その違和感に気づかなかったふりをして、友達に電話をしながら慌てて部屋を飛び出た。
まあ、今思えばあの部屋のトイレの鍵は少々特殊な形をしていた。
つまみを十字にまわすのではなく。上半分についた小さなつまみを左右にずらす形。
ああいう鍵は偶然服がひっかかってしまってしまうことがよくあるらしい。
結局、その日部屋に戻ることはなかった。
翌日戻ってからは鍵はちゃんと開いていたけれど。
なんだかんだ、その部屋に住み続けた。
だって、夜になるとたまに外国人の幽霊がでた前の部屋よりはましだから。
少しだけ怖い話 華川とうふ @hayakawa5
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