山駈ける

@masaruhakase

プロローグ 声は山を越える

 ここは、古都スフミの東にある雑木林である。今では木々に覆い尽くされた山も、かつては城塞と宮殿が建てられていたという。

「どうだ、そっちは。なにか見つかったか?」

「いや、なにも。遺跡の欠片も見つからんとは、本当に宮殿などあったのかね」

「歴史書にはそう書いてあるんだとよ」

「へえ、そうかい。でもアッバースの宮殿が町中にあるじゃないか」

「それより前の時代だってよ」

「へえ、そうかい」

 遺跡発見を目論む2人は、さらに山の奥へと入っていく。

「今日も何も見つからんな。こんなことしても無駄なんじゃないか?」

「だから歴史書には、…!」

「あーあー歴史書ね」

「おい、これ見ろよ…これ」

「え?どれ」

「これだよこれ…遺跡…じゃないか?」

「おいおいこりゃ大発見だぞ…」

『亡国の王・クラルジェティ。その名声は山をも越えん。』


 幾ばくかもしない内に、遺跡の発見は多くの人の知るところとなった。やはり、彼の名声は山をも越えるのだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

山駈ける @masaruhakase

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ