少し違うだけで招く最悪の異世界召喚物

357

ケース:異世界召喚①

 それは我々が知りうるとある世界。

 俗にいう剣と魔法のファンタジーを想像してもらえれば簡単かな?

 神様や精霊や魔物が居る舞台は中世ヨーロッパのような封建制社会。

 そうライトノベルや文学何でもいいが一度は思い浮かぶ空想する場所。


 そこで行われた異世界召喚の一例をお見せしましょう。


 とある人間の種族が治める絶対王政の国家があった。

 しかしもう人間の生存圏内はその王国以外はない

 残りの領域は全て魔物を率いる魔王の手に落ちた。

 人間だけではない亜人類の者達も住まう地を奪われて集った文字通りの

 最後の防衛線であり砦だ。


 そんな追い詰められた人類と亜人種達はお互いの秘術・技術の枠を集めに集め

 起死回生の一手として異世界から勇者を呼び寄せようという実験が行われた。


「やった!!」

「成功したぞ!!」

「まっ、待ってくれ様子がおかしいぞ!!」


 魔法陣から現れた年若い青年は突然苦しみ悶え倒れると

 その場にいた者たちは駆け寄るが既に息は無く亡くなっていた。

 希望を断たれたと嘆く者は倒れそして続くように駆け寄った者達も

 絶望に打ちひしがれるように皆、力が抜け動かなくなってしまった。


 数週間後。

 魔物サイド


「おい聞いたか?」

「何を?」

「人間と亜人共が立てこもりしてたあの場所だよ」

「ああ、あそこか。制圧した時も死体も何もないもぬけの殻だった」

「また統治してた奴と住んでた連中全員死んだぞ」

「マジかよ!?これで何度目だ?」

「4度目だとよ…ゲホゲホ」

「なんだよ病気か?珍しいなお前が」

「あの土地制圧してからずっと体調が悪くて仕方ないんだ」

「オレにうつすなよ」


 一か月後


「あの土地は封鎖する」

「それが正解でしょうな魔王様」

「ドラゴン族はおろかアンデッド族を住まわせたが全て駄目だった…」

「ではあの土地は永久に魔法で封印します。もう誰も魔物は近づけさせません」

「そうしろ参謀よ」

「ハッ、では早速…」


 魔王の部屋から退室しようとした魔王軍の参謀は突然血を吐き倒れた。


「参謀!?どうした!?」


 倒れた参謀に魔王は駆け寄り息を確認するが白目を剥いて絶命していた。

 先ほどまで何の前兆も無かったのにかかわらず唖然としながらも

 魔王は人を呼ぶが誰も来ない。


「何をしておる!!参謀の一大事だぞ!!」


 怒り魔王城中響き渡る声で包まれるが誰も来ない。

 そんな状況をさすがに不自然さを抱き自室から飛び出すが

 全員が倒れ絶命していた。


「どうなっておる…これは住まわせた魔族たちと同じ…」


 そう気づいた、嘗て人類と亜人種達が逃げ込んだ砦に送り込んだ

 魔物の中の貴族たちと全く同じような光景である事に。

 そして自身も全身からの虚脱感が激しく、もう動けなくなり


「な…」


 ぜ…という言葉が続かず何も理解も把握も出来ず無念の内に息絶える魔王。

 今この瞬間を持って魔族いや知的生命体は死滅した。

 この次は動物も植物も文字通り全て一度死に絶え、消える。

 悪と善もリセットされ0となった。


 こうなった原因は結論から言えば

 ・転移者がこの世界の環境に呼吸の時点で適応出来なかったこと。

 ・死亡した転移者から発生した細菌が原因のパンデミックである。


 我々の住んで居る地球にある酸素を吸って生きている以上少しでも異なれば

 当然生きる事は出来ないしましてや住んで居る環境自体が違う。

 ともなればファンタジー世界側にとっても生態系が異なり転移者は

 未知の生き物なのでこのような事が起きても何も不思議ではない。

 持っている細菌や病気がそもそもどんな作用を齎すのかは分からない以上

 召喚される側、召喚する側も共にこういったリスクを背負い何も対策しない

 限り常に付き纏う。

 今回敢えてこのケースで触れたのは現地に生きていた生物には災難だが

 しかしそれは決して悪いことではないからだ。


 我々地球に生まれた生物は微生物から生まれ、進化と退化を繰り返し今に至る。

 このファンタジー世界では確かに生きとし生ける者は消えたが

 この細菌という微生物は時を得て毒性が薄まっていきやがて完全に毒が

 無くなるかもしれない。

 そうなればただの微生物の素と化し地球と同じこの大地のただ一つの生物の祖ワンネス

 となり新たに細胞達が進化し再び生物が生まれ、またそれぞれ別たれる。


 その先はどうなるのか誰にも分からない

 同じ様な種族が現れ再び繰り返すのかそれとも

 異なる新種族が現れ見たこともない物語を綴るのか。

 言えるのは新たなる世界が始まると言う事だ。




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