第4話

烈、美咲、そして向井は右翼の抗議をかわし、なんとか病院から脱出した。彼らはアメリカへ向かうための準備を進めていたが、烈の体調は依然として万全ではなく、胃潰瘍の痛みに苦しんでいた。美咲は彼のことを心配しながら、薬局で胃薬を購入し、烈に手渡した。


「これを飲んで、少しでも楽になって。」美咲は優しく言った。


「ありがとう、美咲。でも、胃薬だけじゃこの痛みは消えないな…」烈は苦笑しながら胃薬を飲んだ。


その頃、港署では署長の理恵が不穏な報告を受けていた。彼女は烈たちの動向を把握しており、彼らが直面している危機に対して対策を練っていた。


「烈たちは港から出発するつもりのようね。でも、敵はすでに動き出している。彼らが直線ルートで行けば、間違いなく待ち伏せに遭うわ。」理恵は部下たちに指示を出した。「迂回ルートを提案して、彼らを守るわ。」


一方、烈たちは港へ向かうための道中で、どこか物陰から視線を感じていた。向井が周囲を警戒し、背後を確認すると、一人の男が姿を現した。その男は鋭い目つきをしたウルフのような風貌で、まるで獲物を狙うかのように彼らを見据えていた。


「お前は…誰だ?」烈が問いかけると、男はニヤリと笑い、不気味な声で答えた。


「俺はウルフ。お前らをここで止めるために来た。不死身の男と言われた俺を、そう簡単に倒せると思うなよ。」


ウルフは素早く動き出し、烈たちに襲いかかろうとしたが、烈は一瞬の隙をついてウルフをかわし、反撃に出た。だが、ウルフはその攻撃をものともせずに立ち上がり、まるで何事もなかったかのように再び襲いかかってきた。


「こいつ、本当に不死身なのか…?」烈は驚きながらも、再び反撃を試みた。


その時、理恵からの連絡が入った。「烈、聞こえる?港署の理恵よ。ウルフは倒すことができない、だから正面から戦わないで。すぐに迂回ルートを取って港へ向かって!」


「理恵さんか…わかった、指示に従う。」烈は指示を受け入れ、美咲と向井に伝えた。「ここは撤退だ。迂回して港へ向かおう。」


「でも、ウルフはどうするの?」美咲が心配そうに尋ねた。


「彼を倒すのは無理だ。今は任務を最優先するしかない。」烈は冷静に答えた。


三人はウルフの追撃を振り切るため、理恵が示した迂回ルートを取ることにした。ウルフは彼らを追いかけようとしたが、港署からの応援が到着し、ウルフの進路を遮った。


「クソ…こんなところで邪魔されるとは!」ウルフは苛立ちながらも、追撃を断念し、姿を消した。


烈たちは無事に港へ到着し、次なる目的地であるアメリカへの出発準備を整えた。だが、彼らの前にはまだ多くの困難が待ち受けていることは明らかだった。


「これで一段落かと思ったけど、まだまだ道は険しいみたいね。」美咲はため息をついた。


「そうだな。でも、俺たちはここまで来たんだ。どんな困難が待っていようと、必ず乗り越えてみせる。」烈は力強く言った。


理恵もまた、彼らを支えるために動いていた。ウルフとの戦いは終わったわけではなく、アメリカでの戦いが新たな幕を開けようとしていた。

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