第3話

烈と美咲がアメリカでの新たな任務に向かおうとしていた矢先、突然、烈の身体に異変が起きた。激しい腹痛に襲われた彼は、その場で崩れ落ちてしまった。


「烈、大丈夫!?」美咲が駆け寄り、烈を支えた。


烈は苦痛に顔を歪めながら答えた。「くそ…急に痛みが…」


向井が近づき、烈の状態を確認する。「この痛み方は…胃潰瘍かもしれない。すぐに病院に行かなければ危険だ。」


烈はなんとか立ち上がろうとしたが、またも激痛が走り、動けなくなった。


「烈、無理しないで!病院に連れて行くから。」美咲は烈を支えながら、近くに停めてあったトラックに彼を乗せようとした。


向井が手伝いながら言った。「久喜に信頼できる医者がいる。彼に診てもらおう。」


美咲はトラックを運転し、烈を病院へと急いだ。道中、烈は苦痛に耐えながらも、過去の戦いで負った傷跡が疼き出し、不安が胸に広がっていった。


ようやく久喜の病院に到着すると、向井が連絡を取っていた医師がすぐに烈を診察した。医師は深刻な表情で診断を下した。


「烈さんは、重度の胃潰瘍を患っている。そして、くも膜下出血の疑いもある。手術が必要だ。」医師の言葉は、二人にとって重いものであった。


「そんな…それじゃ、アメリカには行けない…」美咲は呆然とした。


「今は無理だ。烈の命を優先しなければ。」向井は冷静に言った。


手術が終わり、烈は病室で静かに横たわっていた。美咲はその傍らで彼を見守りながら、彼が命をかけて挑もうとした任務のことを考えていた。向井もまた、病室の片隅で考え込んでいた。


その時、病院の外で騒動が起きた。右翼の団体が、烈たちの任務を嗅ぎつけたのか、病院の前で抗議活動を行っていた。彼らはスライムを守るための行動を「国益を損なうもの」として非難し、トラックで病院の入り口を封鎖しようとした。


「くそ…奴らがここまで来るとは…」向井が窓の外を見ながら呟いた。


美咲は烈の寝顔を見つめ、「私が行くわ。烈の代わりに、任務を果たす。」と決意を固めた。


だが、その時、烈が目を覚まし、微かな声で言った。「美咲…俺はまだ…ここで終わるわけにはいかない…」


「烈!まだ動いちゃだめよ!」美咲が止めようとしたが、烈は痛風の痛みも忘れるほどの強い意志で体を起こした。


「向井…準備をしてくれ。俺たちは…まだやれる。」烈の声は弱々しかったが、その目には決意が宿っていた。


向井は一瞬ためらったが、烈の強い意志を感じ取り、頷いた。「わかった。しかし、無理はするな。計画は変更する。俺が指揮を取る。」


烈、美咲、そして向井は再び立ち上がり、命を懸けた戦いに向かっていった。彼らの前には、右翼の団体、トラックでの封鎖、そして彼ら自身の健康という多くの困難が立ちはだかっていたが、それでも彼らは岐路に立ちながらも進み続けた。

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