ヒース1
最初の自動人形、その称号は重そうに見えて、中身は空っぽみたいに軽かった。
実力がその称号を上回っているから。
一般成人女性一人分の体躯に詰まった機構の密度は九割九分。
重さにして277941g。
よって体重を乗せたスラスター込みの回し蹴りは八割方、当ったモノが粉々になるか抉り取れる。
「ウスヨゴレのパチモンが…」
砕け散る羽虫の破片が見ず知らずの人の家にぶつかってぺしゃんこにつぶれた。
「なぁ…?ちょっと過剰戦力なんじゃねぇか?おい。」
「否定、現に初期算出した必要個体数は既に撃破済み。作戦立案機体を別に配_」パシャ
頭が破裂した、コミニケーションが取れる奴なんかいままで居なかったが、適当に聞いたら答えてくれたし、多分答えたせいで自爆させられてる。
「なんだこれ…」
十中八九しょーもない策略の一部だけど…と考えながら、集まる虫を、自分を中心に外へと広がる糸の網で切り裂く。
動作良好、駆動系にも異常無し、汚染も無し。
強化個体が居る様にも感じないし、接近も感じない、なんだこれ。
ここまで何もないと、いくら何でもわざと情報を漏らす理由がない、と考えてしまう。
「レーザー。」
指先から音声に反応して放たれた光は、妖精からコピーした物ではない、アレ等を創った大元、神と呼称してなんら問題ない生命体の器官を模倣(コピー)した物だ。
この兵装は単純化できず、私の中身にある大部分をこれに割いている。
私達はプログラムに基づいた人格を持ち、学習をする。
しかし、この兵装の厄介さは、実に単純で、学習能力や、人格に対して侵食効果を発揮する。
聞いただけでは分からないかもしれない。だが、思い出して欲しい。私は自分の称号が軽いと言った、現にこの空中戦で羽を持たない私が、飛行能力を持った相手を蹂躙している。
何の苦も無く。
まるで神にでもなったかのような力を得ているから。
起動しただけで光の線が思うがままの軌道を描き、相手を貫く。
四方八方、知覚できる敵に対して圧倒的な制圧力を発揮し、戦闘を終了する。
不自然だ。
何が目的なのかさっぱり、分からない、こう言っては何だが、He型にここまでの戦力を向ける必要は一切ない。
戦闘から、作戦立案、武器弾薬の作成、その全てに、今や一つも関わって居なかったのだから。
過去二万年に及んで、神が明確に敵を作り出し、私達を狩るような動きを見せた事は無かった。
ルールを破った存在を自ら排除しにかかるくらいの物で、人類同士の戦争、戦いの記録と比較して言えば、あまりにも温厚で、敵とすら思われていない節があった。
それが急に良い一手をうち始めた。
良い手というのは有効打にはならないが、終わりが見えず、こちらへの負荷がちゃんとある手、という意味だ。
謎だ。理解出来ない。
砂の国から何カ月もかけて帰って来た甲斐は多少ありそうだ
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