ヘナ3

 守れなかった。


 かつてお嬢様だったご主人様も、かつて恋敵だった旦那様も。


 今のお嬢様を守ったのは、私じゃない、あの御二方。


「ねぇヘナ。」


「はい、何でしょう。」


 いつものしゃべり方でなかったからか、少し怪訝な顔を見せた後、言った。


「元気だして、お母さまもお父様も、きっとヘナなら私を守れるって思ったから、庇ったんだよ。」


 この映像は永久に、回路が動く限り残すとコアに刻む。


「申し訳ありません…お嬢様…」


「ヘナ、少し切り替えてくれ、情報共有だ。」


 ヒースは腹が立つくらい完璧だけど、今の私にはきちんと希望でもあった。


「私にも聞かせてくれませんか?」


 お嬢様が、横に並び立つ。


 後にこの戦いを終わらせる彼女を、この時既に、ヒースは見抜いていたのかもしれない。

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