リアトリス2
国から帰る道の途中、件のモノが降りて来た。
「対象を確認。回路、拡張展開。」
白く長い髪。長く白いまつ毛、口と目らしきものは開かず、背から光の筋が虫の翅脈を模して展開されていく。
「あーこれ、まずいですね。」
それも、一体ではなく、三体。
「リアトリス、一体だけ私が10分止める、二分くらい短くなるかもしれんがそれくらいは持たせる。」
前回のデータから言えば、超スピードだとか、超パワーではなく、詠唱無し高威力の光を連射してくるのがやつらの恐ろしい所だ。まぁそれ以外の部分の脆弱性も発見したので対策も勿論用意してきたのだが。
「これでもくらえ!」
魔素を結晶化させ、大きく成長させた魔石を投げつける。
「投擲物を確認、破壊。」
翅から照射された一閃の光に粉々にされる。
「あちゃー、やっぱ無理かも。」
「糸剣、さく…うわっ!あぶなっ!」
危なっ、などと避けられたかの様に言っているが、足を光に貫かれているのが見えた。
「大丈夫か。」
「糸剣、作成。強いですねぇ、右足のスペア、あります?」
「ある。」
「OK、じゃ、右足壊します。」
剣を後ろに構え、体勢を低くする。
「右足スラスター!全開!」
右足の下から火を噴き、突風を起こす。リアトリスの体は閃光をすり抜け、標的に飛んでいく。
「まず一体。」
バラバラに砕けた右足のパーツが宙を舞い。リアトリスは神造妖精の額に糸剣を突き立てる。左足で妖精の胸を蹴り、地に落としつつ、別の妖精に飛び掛かかった。
「案外脆いですね、ノイバラが苦戦した理由…、不意打ちでもしましたか?」
「回路、故障、飛…」
自分で粉々にした魔石の粒子が、空中の魔素を取り込む機構で詰まり、人間で言う呼吸が出来なくなったようだ、ようだというか狙ったのだが。
「光線口、拡張。」
無言で行動しないのがあいつの作品らしい、正々堂々とでも言いたいのかもしれないが、それが十、二十と別の事を言えばただの騒音、こちらの音声起動機能を妨害する事も出来そうだ。
「ティアムス様!左も壊します!左手スラスター!」
極太の光線を、左手を上に掲げて自分を下に落とし避ける。
「左足スラスター!全開!」
着地と同時にスラスターを起動し、下から妖精を真っ二つにする。
落下してくるリアトリスを受け止める事は出来ない、そんな事をしたら、押しつぶされて私が死ぬ。
「右手、借りるぞ。」
落ちて来たリアトリスの右腕を外し、停止している妖精にトドメを刺す。
「返す。」
くっつけてやると、満足そうに言う。
「あー疲れました。」
「待ってろ、今スペア持ってくる。」
無理な状態のスラスターでも壊れない設計にしてあったはずだが、あの損壊ぶりを見るとそのセーフティを解除する術を身に着けたらしい。
脚部の損壊に留めてはいるが、不要な負荷自体は確実にかかっている。中を開いて交換するのが面倒なので止めて欲しいが、今回は二人とも生き残れたから咎めないでおこう。
「しゃがみなさい!」
後ろの指示に従ってしゃがむ。
一秒前の私の心臓あたりの位置に光線は照射され、下へと射線が降りてくる。
(横に転がって間に合うか…!)
「私は!まだ!やれる!右手スラスター全開!」
横たわっていたリアトリスは右手のスラスターを地面に向けて起動。
空中高速回転を生み出す程の推進力を生みだした右手も崩壊。
「突進物、破壊。」
(まずい!狙いは最初からそっちか!)
「左手スラスター!」
(冷却の終わっていない左手を使えば破損する…そうなれば攻撃の手段が!)
「糸剣作成!おうじょうせいやぁぁあああ!」
妖精が光線を放つのと同時にスラスターの噴射で射出された糸剣が妖精の目を貫通する。
そのせいか、光線はリアトリスの頬をかすめただけだった。
ポトリと先程より幾分軽い落下音。
「もー流石に無理ですよ、五体目来たら諦めなさいな…」
この重さなら何とか馬車には乗せられるだろうと抱き上げる。
「おつかれさん。」
「感謝が薄いんじゃないですか?」
「助かりました。」
「もっとです、もっと褒めなさい。」
「流石、最強。」
「良いでしょう、満足です。」
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