第27話「キジマさん」(フ完全版) 12

 美津子が大学を休んで4日目の早朝、菊子の自宅へ美津子から電話があった。

「こんな朝っぱらからどうしたの?」

「キ、キッコ、大変よぅ、あの娘が家に来たのよぅ」

「あの娘って?」

「キジマヨウコよぅ」

「そんな事ある訳ないじゃない、夢でも見たんでしょう」

「違う、違うわよっ、昨日夜遅く、アタシのベッドの脇にキジマヨウコが立ってたのよぅ、それでアタシ片目が見えなくなっちゃった、ねぇキッコどうしよう」

 パニック状態で話の要領を得ない美津子に菊子は、

「とにかく、悪い夢よっ、早く目医者に行きなさいっ」

 ガチャンと電話を切ってしまった。

 受話器を置いた手はフルフルと震えていた。


 大学へ行った菊子は、淳一に呼び止められた。

「ああ、キッコさん、今朝ミッちゃんから電話があって・・・」

「うちにもあったわ、ホントあの娘ったら」

「うん、キッコさんに話の途中で電話切られたって言ってた。まだ話の続きがあったんだって、」

 淳一は菊子の肘を取って、他の生徒のいない廊下の隅へ誘導した。

「昨日の夜、キジマヨウコが現れて、ミッちゃんに「私が誰か知っているか?」って聞いたんだって、でもミッちゃん怖くなっちゃって「知りません、あなたの事なんて知りません」って答えちゃったら、「ならあなたの目をいただくわ」って言ってキジマさんがミッちゃんの目に触れたら、目が見えなくなっちゃったんだってさ」

 ヒソヒソ声で淳一は語った。

「そ、そんな事ある訳ないじゃない、悪い夢よ、目は病気か何かでしょ」

 菊子は明らかに動揺していた。


「うん、僕もそう思うんだ。ミッちゃん今日眼科へ行くって言ってたよ。でもこの事を士郎にも伝えて欲しいって言ってたから、後であいつにも話そうと思う」


 

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