第26話「キジマさん」(フ完全版) 11

 怯える美津子はそれ以上昨日の事を語らなかった。


 次の日、大学で菊子は淳一と士郎を呼び出して美津子との電話の話をした。

「ミツコさぁ、見ちゃったらしいわよ」

「見たって?」

「キジマヨウコ」

「エッ、ホント?」


 淳一は本気にせず終始ニヤニヤしていたが、士郎は一瞬だけ眉間に皺を寄せた。

「なんでも、顔がピカソだったんだって」

 菊子はそう言って、「アハハ」と笑った。

「ピカソ」

 男子2人はハモッたが、淳一は菊子に釣られて笑い、士郎は怪訝な表情で笑う菊子を見ていた。

「それってどういう意味?」

「よくわかんないけど、ミツコがそう言ってたのよ、顔が変なんじゃない?」

 菊子がそう言うと、淳一は引き攣った笑みを浮かべ、士郎の方は目を瞑ってフ〜とため息を吐いた。


 「顔がピカソ」この言葉の意味を淳一は理解していなかったが、士郎の方はなんとなくが付いていた。

 淳一は意味が解らなくても何かその言葉に悍ましい匂いを感じ、士郎はその言葉の残酷な意味に気が付いていた。


 菊子もとぼけてはいたが、その言葉の意味を良く解った上で面白がっていた。


 

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