第20話「キジマさん」(フ完全版) 5
耀子は自分の葬儀会場で、自分の遺体を目の前にしていた。
顔には包帯が巻かれ見る事は出来ない。
ただ呆然と自分の遺体の横で立ち尽くしていた。
親戚や父の会社の人達、大学の友人らが大勢弔問に来ていた。
皆、泣いていた。
恐らく同じ大学であろうが、会った事の無い者まで涙を流していた。
受け入れ難かったが、耀子は、最早自分がこの世の者では無い事を理解しつつあった。
何日かして、今度は父と弟の合同葬儀会場に来た。抜け殻となった父と弟の遺体は見たが、二人の魂に出会う事は叶わなかった。
廃墟となった家の前で立ち尽くす耀子の足元に何日か前の古新聞が風で飛ばされてきた。
そこにこの事故が小さな記事で載っていた。
かなりの大事故であったが、報道は新聞に小さな記事が載っただけだったのは即死の死亡者が運転手と耀子のたった2人だけだったからである。
(*現在であれば相当の報道が為されるが、当時の事故件数、死亡者数からするとそれほど大きな事故扱いはされなかった。また死者数は事故後24時間以内のものしかカウントされなかった。)
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