第18話「キジマさん」(フ完全版) 3

 その交差点の一角は緊急車輌の赤い光で包まれていた。

「運転手と女性の方はだ、そちらはどうだ?」

「10代後半男性、まだ息があります」

「父親と思われる中年男性もまだかろうじて生きています」

「よし、男性2人を緊急搬送だ」


 救急隊員達の声が響いていた。

 この当時、事故現場で心肺停止が確認された負傷者は緊急搬送されない。警察の収容車が来るまでその場に置き去りにされる。

 救急車に死体は載せないのだ。


 耀子の他、ダンプカーを運転していた男も即死であった。


 2台の救急車の音が現場から遠ざかっていった。


 それからどのくらい時間が経ったのだろうか、耀子はその現場で目を覚ました。

 ダンプカーは撤去され、家は前半分が倒壊して、2階の弟の部屋が半分になって断面が見えていた。

 耀子は自分の身に何が起こったのか全く理解していなかった。


 父からよく聞いていた爆撃後の様子か、またで見た震災後の様でもあった。


 父と弟を探したが、耀子の傍らには誰も居なかった。


 

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