第13話悲劇のヒロイン

 僕は現在いまでも「キジマさん」が怖い、夜中に目が覚めるとフト部屋の中を見廻してしまう。

 でも、「キジマさん」は恐れる存在ではない。

 その身に起こった事は悲劇であって、決して怖れたり気持ち悪がったりするものではないのだ。

 日本の怪談の主人公にはが多い。

 誰でも思い付くのが「四谷怪談」の「お岩さん」であろう。

 彼女の人生と死後幽霊になって現れるまでのストーリーは悲劇であり、同情こそすれ怖れたり気持ち悪がるものではない。

 でも、怖い。

 顔が腫れ醜くなってしまった「お岩さん」は恐ろしい。

 失礼なのは重々承知の上だが、夜道で突然あったら、やっぱり声を上げてしまうかもしれない。

 本当はとても気の毒な存在なのに。


 「キジマさん」に戻ろう。

 「キジマさん」は死後、恐らく自分の意志に反して浮かばれぬ幽霊となってしまい、行くあてもなくその場に留まり続けていた。

 時折、霊感があるのか、たまたまが合ってしまったのか、自分の姿を目撃されてしまう。

 目撃した者達は「キジマさん」の容貌を怖れ、衝撃的な事件としてその話を広めた。

 だが「キジマさん」は自身の事を興味本位で語られるのを由としなかった。

 

 

 

 

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