まがい物アンサンブル
茶散る
第1話
俺が青春ラブコメの主人公なんじゃないかなんていう幻想をいつまで信じていたか問われれば、
今もなお、それなりには期待していると答えるのだろう。
「青山」
「はい」
まあ別段、俺にモデルをやってる妹がいる訳でも、顔を忘れた幼馴染がいる訳でもないし、はたまたゴールデンウィークに怪異と遭遇した訳でもなく、結局のところ、現実は現実で実に淡泊でしっかりできているのだなと感心するばかりである。
「東」
「はい」
そうはいったって俺は、俺の事を慕う、義妹の出現や俺の知られざる許嫁が転校してくることを、期待するぐらいなら、期待するぐらいが一番、高校生生活、暇すぎず、忙しすぎず、ちょうどいいんじゃないかと思うのさ。
「阿立」
「はい」
気付けば前の連中の点呼が終わり、俺の番が来ているではないか!
「小笠原」
新たに担任になった国語科の教師が職務怠慢なんじゃないっかってくらいやる気のない声で俺の名前を読み上げた。
「はい」
俺は浮かない程度には元気よく返事をした。
担任のやる気がないというのにクラスの奴らは、ここは病院かってぐらい静かだ。きっと中二病患者が入院しているに違いない。
が、残念ながら今は高校二年、初のホームルーム
つまるところ、今日から俺は高二なのである。
きっと今日、俺がラノベ主人公ならヒロインと出会うに違いない
そういう展開に期待しながら今日の通学道はわざと、不注意に歩いたし、今だって、書き出し的、思考をしているのである。
まあ、、、始業式が終わり本日のホームルームがおわりかけている目下の状況下で出会うことなんぞは、叶わないのであろう
気づけば国語科教師殿の声がやんでいた、というか俺の名前が呼ばれてから、声が聞こえない気がする。
教師殿の方を見れば、名簿を睨みつけていて、どうやら名前の読みと格闘しているようだ。
小笠原の後なのだから、お行かさ行であろう、そんなに難しい名前なんてあるか?
なんて思っていたら教師は首傾げながら、
「シノミヤ」
と読み上げた
四宮、篠宮、詩乃宮、特に難しい漢字でもあるまい、
俺は国語科の教師が困惑するほどに難しい漢字のシノミヤ殿がどんな奴なのか気になってうしろを振り返ると
そこには、真相の令嬢って感じのなんだか人当たりのよさそうなえらい美人がいた。
まがい物アンサンブル 茶散る @tyatiru123
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